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日蓮大聖人・池田大作

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社会的・文化的諸活動  

「社会と宗教」ブライアン・ウィルソン(池田大作全集第6巻)

前後
4  宗教組織は、文化的な仕事をする中で、娯楽産業の営利主義に直面します。娯楽産業には、人間の卑しい本能を利用して、情欲や攻撃欲、金銭欲といった基本的な欲望を満足させるうえでの、制約というものがありません。さらに、それほど不健全でない分野でも、宗教組織は、資金や専門的なアドバイスに欠けているため、張り合うことは容易ではありません。快楽主義の風潮が瀰漫している中では、目新しさや煽情主義、官能性が大いに誇示され、宗教組織が提供するものは、しばしば精彩を欠いた、つまらないものに見えるかもしれません。しかも、「宗教組織が推進する文化的・レクリエーション的活動は、じつは新会員獲得の手段なのではないのか」という疑惑を受けるかもしれないのです。
 大きくて、よく組織の整った宗教運動は、大規模な慈善活動を繰り広げるために、専門化された機関を通じての、どちらかといえば非個人的な努力に、力を集中する傾向があります。彼らの宣伝活動は、個人の責任とか仲間意識とかの要素を強調していますが、その合理的で、非個人的で、ときには官僚的な運営には、真の共同体的な活動はほとんど見られません。
5  少なくとも西洋では、主要な宗教教団は、会員のために文化的・レクリエーション的な機会を提供する責任を持ち続けなければならないとは、さほど感じておりません。また、教育の分野でさえ、そうした教団の学校は、着実に、国家が支給する教育に座を譲っています。これらの教団は、文化的・レクリエーション的な性格の、特別な行事や施設をあまり提供しないだけでなく、その信徒が世俗文化にどの程度まで参画してよいかについても、明確に指導する必要性を、あまり認めていません。
 ほとんどの宗教運動では、ポルノグラフィーを非としていますし、卑しい欲望を満たすための娯楽を認めていません。ところが、狩猟などの血なまぐさいスポーツや格闘技となると、あるいは、ギャンブルについてさえ、指導層の間ですらめったに意見が一致しないのです。せいぜい“万事ほどほどに”といった抽象的な指導ぐらいが、たぶん多くの宗教がその信徒に対して、いかに世俗文化に対応するかに関して与えることのできる、最大限の助言なのでしょう。
6  セクト的な運動は、往々にして――決して常にということではありませんが――ずっと厳しい道徳的態度をとり、さまざまな形で現れる世俗文化やレクリエーション、そしてときには教育のあり方についてさえ、認めないことがあります。宗教的献身と競合するかもしれないものは、いかなる活動も認めないというケースもあれば、また別に、本質的には無害とみなされていても、部外者との好ましくない交際に信者を巻き込むような活動は禁止する、というケースもあります。この最後に述べたグループにあっては、自分だけで行う娯楽は許されても、非会員と一緒に同じことをするのは許されないのです。このようなグループでは、自助の精神と外部世界から完全に隔離していたいという信念から、ときには、国家からの福祉の支給も拒絶することがあります。
 文化的・レクリエーション的な性格の非宗教活動に対する反応は、宗教教団の間でも、非常にさまざまです。主要な教会では、そうしたことについては、非常に抽象的な指導をするだけです。そして、多くのセクトが非常に制約された姿勢をとるのに対し、そういった世俗的な仕事を、社会的宣伝の精神に立ってうまく利用するセクトもあります。モルモン教が(注2)、ソルトレーク・シティの会堂聖歌隊が組織した巡回旅行や、記録保管(注3)や、社交ダンスを含む各種スポーツの推進によって広く名を売ったのは、その例です。クリスチャン・サイエンスは、宗教色のない日刊新聞(注4)の発行をアメリカ全土で行っていることで、かなりの信望を勝ち得ています。
 もちろん、そうした文化的事業があるというだけで、その信徒になるという人はおりません。しかし、そういった活動によって、世間から喝采を受け、すでに信徒になっている人々を“元気づける何か”が与えられることで、その組織内の忠誠心が強化されるのです。
7  (注1)救世軍
 十九世紀末にイギリスで起こった福音伝道主義の教団。福音伝道活動のために制服を取り入れ、軍隊に類似した組織形態をとった。広範な社会的福祉事業に従事している。
 (注2)モルモン教
 活発な改宗者獲得を行っているアメリカのセクト(末日聖徒イエス・キリスト教会)。聖書とともに、創唱者ジョーゼフ・スミス・ジュニア(一八四四年没)が受けたという天啓に基づく信仰をしている。モルモン教徒は、主としてアメリカ中西部から彼らの「約束の地」ユタ州に移住した。現在ではアメリカ全土と世界各地に約五百万人の信徒がいる。
 (注3)記録保管
 モルモン教では信者が先祖への儀礼を行うため、先祖探しができるように系図の調査・作成を奨励し、そのためユタ州の記録文書局に厖大な数の系図のマイクロフィルムを集めて保管している。
 (注4)日刊新聞「クリスチャン・サイエンス・モニター」。

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