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日蓮大聖人・池田大作

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組織形態のあり方  

「社会と宗教」ブライアン・ウィルソン(池田大作全集第6巻)

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10  池田 教授の言われる意味は、よく分かります。仏教にかぎらず、宗教は全般に、開祖によって示された教えを求めて、自己の内に肉化していくという“求道”の面と、その教えを広く社会の中に弘めていく“弘教”の面との両方を、実践の必須条件としてもっています。各個人において、この両方が共に不可欠であるように、組織そのものにおいても、この両方のいずれをも無視することはできません。
 したがって、この両方を効果的に推進していける組織であるためには、さまざまな可能性と対応性が、要請されるわけです。その意味で「会衆的な静寂主義と官僚制的な効率という、二つの両極端の間のどこかで自らの志向と関心を配置して、バランスをとっていかなければならない」という教授のご指摘は、まさしく的を射ていると思われます。
 このことは、別の表現をすれば、全成員が主体者として参画し、運動を推進していける組織であるとともに、狂いが生じてはならない教義の理解に関しては、それを会員が素直に受け入れていけるような、権威の核がなければならないということになりましょう。もちろん、そうした権威は、力や形式によって築かれるものではなく、それが人々の不明を晴らし、疑問を解消できる説得力を発揮することによって、高まり、確固たるものとなっていくのです。
 結論として、宗教の組織は、ピラミッド型の上下関係と、平等な個人の連帯によるサークル型の関係とが、その目的に応じて組み合わさっており、ちょうど織り物がタテ糸とヨコ糸の組み合わせによって成っているように、そのいずれが欠けてもならないと思います。そして、さまざまな活動の必要性に対して、その組織が有効に機能するのでなければならない、ということができると思います。
11  (注1)大きな分裂キリスト教会では何度も分離・分裂が繰り返され、そのたびに教義、権威、典礼等の異なる教会が生まれた。例としては、五世紀から六世紀にわたって、キリストの本性に関してローマ・カトリック教会に異議を唱えたキリスト単性論者(モノフィサイト)やネストリウス派の離反、一〇五四年に最終的にローマ教会と訣別した東方ギリシャ正教会、十六世紀に離反したルター派や改革派(カルヴァン派)などが挙げられる。
 (注2)バプティスト派十六世紀初期に起こったプロテスタントの主要な教派(デノミネーション)。洗礼の儀式の有効性を(信仰の自覚のない幼児には認めず)成人にのみ認めるべきことを主張する。各地の会衆は自治権と独自の権威をもっている。(無数の教団に分かれている)バプティスト派総体の信徒数は英語圏などに数百万人。
 (注3)コングレゲーショナリスト(会衆派)十六世紀末、イギリスで国家権力の圧迫に抵抗し、英国国教会から独立して形成された。国家権力の教会支配のみならず、各個教会を統制する教会全体の権力をも否定した。独立主義者(インディペンデント)とも称される。
 (注4)メソジスト教会十八世紀イギリスで英国国教会の聖職者ジョン・ウェズリーによって設立されたプロテスタントの教派。個人の信仰的献身と福音主義の信仰の再活性化を目指した。同派は、英国国教会を追放されて後、主として労働者階層に信徒を得て、大きく勢力を伸ばした。「方法主義者」(メソジスト)の名称は「(創立者ウェズリーの出身校オックスフォード大学の)規則に定められた学問の方法(メソッド)を守る」という趣旨の運動に由来しており、元来は宗教とは無関係な名称である。英語圏に数百万人の信徒をもつ。

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