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日蓮大聖人・池田大作

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大乗非仏説論への考え方  

「社会と宗教」ブライアン・ウィルソン(池田大作全集第6巻)

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4  仏教の場合は、人格に関するきわめて異なった概念があるため、また、真理に関する地域別の、個別的な概念が少ないため、筆者についての論争は、教説自体の受け入れやすさや、その一貫性、またその教説が人類救済のために提供するものに比べれば、重要性が少ないわけです。
 結局、宗教的真理についての重要な判定は、たぶん文献の分析という問題よりも、その真理が人々に何をもたらすのかという評価のほうに置かれることになるでしょう。このことは、そうした文献の分析が、それを書いた人物が誰かということや、その文献の歴史上の信憑性に関するものであっても、またはその思想が文脈の中でもっている蓋然性に関するものであっても、変わりないでしょう。
 宗教とは、結局は、一つの社会現象です。このことは、どの宗教の思想内容への先入観も抜きにして、またその究極の真理への評価を抜きにして(誰にも評価できるものではありませんが)、確言できることです。
 そして、宗教が社会現象であるかぎり、人類にとって大事なのは、その教説の意図するところであり、その信奉者たちの生活に与える影響でなければなりません。私は、一人の社会学者として、その影響性を研究する中で、どこまでも私心のない客観性を保ち続けようと努力しております。ただし、その客観性の中で、私心のなさと人間的な共感とのバランスは、常に保っていきたいと思っております。
5  (注1)コプト教会
 現在、エジプトとエチオピアに約三百五十万人の信者をもち、キリスト単性論(キリストには人性と神性の両性はなく神性のみがあるとする)の神学を立てている。教会の典礼で用いられる言語はコプト語で、これは紀元三世紀ごろから十五世紀末ごろまで用いられた古代エジプト語直系の言語。また、独自の法王を立て、断食の慣行などには特に注意が払われる。
 (注2)モダン・スクール(近代学派)
 スイスのインド学者C・レガミー(Regamey)が、西洋の仏教学者たちをアングロ・ゲルマン学派と近代学派に区別した。近代学派はパーリ語仏典、サンスクリット仏典の他、チベットや中国、日本の仏教にも研究の源泉を求めている。

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