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日蓮大聖人・池田大作

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核廃絶と食糧危機の回避  

「人間革命と人間の条件」アンドレ・マルロー(池田大作全集第4巻)

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3  マルロー まず、池田さんご自身が、現地へいらっしゃるべきでしょうね。それというのも、バングラデシュは、非常に変化が激しい国だからです。私がバングラデシュにいたときにも、信じられないほど多くの死者をみました。暴行され、避難した、三十万人あまりの女性もみました。もう三年まえの話です。
 情況はその後大きく変わりました。この国でなにかをしようとするならば、まじめな意志をもつ人々だけで仕事をしなければなりません。まず、政府首脳と目される人物に会うことが望ましい。そして、すべてを一からやりなおすため、効果的共同作業について話し合うべきです。なぜなら、これまでになされてきた国際的援助の三分の二は、まったく台なしになっているからです。なにかを送ってやるなどということでは、もちろん解決するはずもないし、救済になるどころではありません。
 池田 参考にいたしましょう。ただもっと本質的なことになりますが、食糧問題について、見落としてならないことは、世界的に農業政策にたいする再検討がなされるべきである、ということです。これまで、先進諸国に支配的な考えは、工業化のためには、農業が犠牲になるのもやむをえないというものでした。こうした一方的な考えかたをあらため、工業化の推進とともに、いな、それ以上に、農業の保護育成を、十分に考えていく必要があるでしょう。
 このことに関して、中国を訪問しての見聞は非常に示唆に富んだものでした。中国ではバランスのとれた経済発展を考えているようです。それはあくまで農業を基礎にして、そのうえで工業の発展を目指すという行きかたで、農業をまず磐石にして十分な食糧の確保を図り、このベースのうえで工業もみるべき発展をとげています。おそらく経済発展のパターンが奇形にならないよう、十分留意したうえでの農業重視の方向でしょうが、世界的な食糧危機のなかで、この中国の試みは注目されるべきだと思いました。
4  訳者註
 (4)「マルクス主義においてその芸術観だけは、すくなくとも修正しなければならない」と、かつてマルローは訳者に語ったことがある。芸術は、けっして、歴史的《条件づけ》以下のものではないというのである。『芸術が国に奉仕するにあらずして国が芸術に奉仕すべきである』とはマルローの一論文の題名であり、彼の生涯と、文学・美術の全作品が、いかにして人間が《人間の条件》より自由になりうるかを問いつづけてきた立場であることを考えるとき、マルクス主義に対するこの態度はきわめて当然のものとして納得されよう。

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