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日蓮大聖人・池田大作

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人間文明の希望の朝を ブラジル文学アカデミー記念講演

1993.2.12 「平和提言」「記念講演」(池田大作全集第2巻)

前後
21  リオバルドの言葉が「大いなる普遍」と呼ぶにふさわしい内実、リアリティーをもつゆえんであります。
 しかも、そのリアリティーは、個別へのあくなき執念によって保証されている。野盗という原始的世界に素材をとっている点といい、博物学や地理学にも精通した著者ならではの微細を極めた奥地の自然描写といい、ふんだんにちりばめられた民間伝承といい、私はそれらが『モナ・リザ』の″ジョコンダの微笑″をひきたたせているそのバック――すなわち、空気遠近法を駆使して描かれた峨々たる岩山と、同様の効果を演じているように思えてなりません。留意すべきは、その宗教観であります。
 「私が固く信じ、断言し、説明しようとしているのは、全世界が狂っているということである。そう、お客人、あなたも、私も、私たちが、万人が、狂っている。そこで、狂気から脱して正気を取り戻すためには宗教が必要となる。いつも、狂気を治すのは祈りなのだ。祈りは魂を救済する」(同前)
22  時代の病を癒すために、宗教的祈りを必須としつつ、しかも、その宗教観からは、宗教的ドグマが慎重に斥けられ、普遍的なるものが強く志向されている点に注目したい。ドグマは癒しどころか、むしろ狂気・狂信を増進させるものでしかないからであります。そうではなく宗教は、人間の精神性を陶冶し、善きものヘと高めながら、新たなるコスモス形成の基盤となっていかなくてはならない。
 ローザの超望していたそうした宗教的世界こそ、「大いなる普遍」の理念型であり、二十一世紀の地球文明のバックポーンとなっていくであろうことを、私は信じてやみません。
 私も微力ながら、そのような普遍的な精神性の土壌の開拓にいやまして挺身してまいる決意であります。
23  最後にブラジルの限りない未来に思いをはせながら、偉大なる自由の詩人アルベスの詩を皆さまと分かち合い、私の講演とさせていただきます。
 「然リ!/指の隙間から/時の砂がこぼれ/やがてひとつの世紀が/尽きんとするとき/ある国に/偉大なる人物の名が/数多見出される/掌には収まらぬほどに/おお! 英雄たちよ!/荘厳なる杉の大樹が/幾世紀を超えてなお/崩れざる堅固さをもって/そびえ立つが如く/貴方たちこそが歴史の大樹である/そして/その栄光のもたらす木陰に/ブラジルが憩いゆく」(Ode ao Devs de Julho; Castro Alves)
 ムイト オブリガード(どうも ありがとうございました)。
 (平成5年2月12日 ブラジル文学アカデミー)

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