Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

中国的人間主義の伝統 香港中文大学記念講演

1992.1.30 「平和提言」「記念講演」(池田大作全集第2巻)

前後
7  十年ほど前、貴大学の銭穆せんぼく記念講堂に招かれたアメリカ・コロンビア大学のドバリー教授は、講義の中で、中国の伝統思想の美質を「人間が世界の変革において中心的かつ創造的役割を果たしていると考える点で、儒教は人間中心の思想であった」(『朱子学と自由の伝統』山口久和訳、平几社選書)と述べておりました。
 私も感銘した言葉でありますが、これは、外在的要因を介在させず、なおかつ変革のエネルギーを内在させている中国思想の人間主義的特質を、よく言い当てていると感嘆するのであります。
 ″中国的人間主義″の原形は、春秋末期の乱世にあって、人間が必死に自己を取り戻そうと苦闘するなかに形成されました。同じように、人間が歴史創出の主役たらんと模索している乱世の今日、中国の良き精神性の再生は、新たな人間世紀の構築に多大な貢献をなしゆくであろうことを、私は信じてやみません。その意味において、貴大学が、校章に刻まれた鳳凰のごとく、二十一世紀のアジア、そして世界に、希望の光風を送りゆかれる雄姿を、私は胸に思い描くのであります。
8  最後に、私が若き日から敬愛してやまぬ諸葛亮(孔明)の美しい言葉を皆さまに捧げ、スピーチを終わらせていただきます。
 「士の相知るは、温かにして華を増さず、寒くして葉を配がず。能く四時にして衰えず、夷険を経て益々固し」――もののふの友情は、温かいからといって花を増やすこともなければ、寒いからといって葉を落とすこともない。どんなときでも衰えずに、順調と逆境を経験して、いよいよ堅固になっていく――と。
 ありがとうございました。
 (平成4年1月30日 香港中文大学)

1
7