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日蓮大聖人・池田大作

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全面軍縮へ世界的潮流を 第3回国連軍縮特別総会へ記念提言

1988.6.1 「平和提言」「記念講演」(池田大作全集第2巻)

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15  各国に「平和省」の設置も
 さて、私は最近、かねてから私の提言に注目してくださっているアメリカの一識者から、ある提案を受けました。それは、従来の陸軍省や海軍省、国防省といったものではなく、平和に専念できる省庁として「平和省」といったものを作る運動を、世界的に広げていってはどうか、というものであります。
 全く同感であります。それは、平和について私が常に抱いてきた考え方の基調とも、見事に符合するものであります。
 従来、平和という概念は、ともすれば″ネガ″の形でしか考えられない傾向があったことは、否めません。つまり、平和に積極的な概念の枠組みを与えるよりも、単なる″戦争のない状態″″戦争と戦争との幕間劇″といったネガティブな概念にとどまりがちであった。しかし、それは真実の平和というには遠く、もしそうした状態に手をこまねいているとすれば、平和とは、次の戦争への準備期間にすぎなくなってしまう。
 先にも触れたように、核という「運命的、黙示録的」兵器の出現は、戦争そのものを不可能にしてしまいました。こうした戦争観の転換は、平和という概念の捉え方の面でも″ネガ″から″ポジ″への転換を要請しているように思われます。
16  平和学での領域では、さすがにそのへんを、先んじて問題提起しているようであります。伝え聞くところによれば、普通、平和の反対は戦争と考えられがちだが、平和研究者の間では、そうした見方はとられていない。平和の反対概念は暴力だという。戦争を含む貧困、飢餓、環境破壊、人権抑圧等の暴カ――平和というものは、そうした様々な層の暴力と戦い、根絶していくなかに実現されるというのであります。
 確かに、そのような観点に立てば、平和という概念の″ネガ″から″ポジ″への転換も、よリスムーズになされるものと思います。そして、そうした大きな流れを補完し、補強する意味からも「平和省」とは、卓抜したアイデアであるといってよい。
 考古学の知見によれば、人類の進歩は、必ず技術の革新に現れる。そして技術革新は、より殺傷力、破壊力の大きい兵器の出現という形をとって表れる。これは、いつの世にも変わらぬ法則のようなものであり、第二次世界大戦のときの原子爆弾も、まぎれもないその証明であった。その法則に照らして、近い将来、人類は必ず滅亡する、というようなショッキングな話が、なかば本気で交わされているそうであります。
 そうした宿命を打ち破っていくためにも、政府省庁レベルでも、思い切って「平和省」を設置し、民間の様々な機関、運動と手を携えていくぐらいのイニシアチブが要請されていると思います。
 特に、この提案を平和憲法をもつ日本、軍隊を全廃したコスタリカ、南太平洋非核地帯条約を成立させた南太平洋の国々、スウェーデンなど軍縮に熱心な北欧諸国、かねてから結束して核廃絶と核実験全面禁止を訴えているインド、アルゼンチン、メキシコ等で真剣に検討していただければ幸いであります。
 各国の「平和省」が「国際軍縮機構」と連携を密にしながら世界的な軍縮の機運を盛り上げ、当面の大きな目標としてすべての核兵器の廃棄を定める国際条約の調印へ前進してほしい、というのが私の期待であります。
 今回の軍縮特別総会へ向けた以上の提案が、何らかの参考としてご検討いただければ望外の喜びであります。国連の活動を長く支援してきた一民間人として、同総会の実りある成果を心より期待するものであります。
 (昭和63年6月1日「聖教新聞」掲載)

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