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日蓮大聖人・池田大作

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スコラ哲学と現代文明 創価大学第2回滝山祭記念講演

1973.7.13 「平和提言」「記念講演」「論文」(池田大作全集第1巻)

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17  今日、このスコラ哲学の時代に始まった一連の文化発展の長い歴史は、肥大化し奇形化した醜い姿の中に、悲劇的な終末を迎えようとしております。人間性の喪失、公害に象徴される文明のゆがみは、もはや誰人の目にも明らかであり、文化的創造の源であった大学もまた、深刻な崩壊の危機に直面している。学問の場としても、人間育成の場としても、伝統的な大学は、その指導的地位を失おうとしているといっても過言ではない。
 この終わろうとしている一つの時代から、次の新しい時代の開幕のためには、新しい大学が必要でありましょう。否、大学という″形″は副次的なものかもしれない。大事なのは、新しい哲学であり、現代の、いい意味でのスコラ哲学の興隆であります。真実の宗教を基盤とし、真実の信仰を核として、そこにあらゆる学問も、理性、感情、欲望、衝動等も統合し、正しく位置づけた、新しい人間復興の哲学が要請される。宇宙生命の中に人間の位置を明確にし、生の混沌の密林の中に生きるべき道を切り拓く、真実の″教養″が打ち立てられねばならない。
 この哲学を探究し教養を実践する人間と人間の集いが、真の意味の大学を形成するのであります。大学をつくるものは、建物や施設ではなく、人間であり、理念なのであります。混沌の人生に対処する、力ある真実の哲学を持った人々の集うところ――それこそ、時代を動かし、文明を創造する源泉地としての、真の意味の大学であると思いますが、諸君どうでしょうか。(大拍手)
18  今日、スコラ哲学の全くの風化は、その基盤とする宗教の全くの無力化によるものといえましょう。してみれば、現代ほど宗教を喪失してしまった時代もなく、それゆえに救済のない時代もない。――この現実のうえに私達は生き続けているのであります。このように認識するとき、最大の緊急事というべきものは、現代に耐え、現代を導くに足るだけの哲学の樹立であり、その基盤をなす真の宗教の確立であります。
 未来を担う大学の誇りにかけても、その使命とする道は何であるか――その答えは、皆さんの胸の中に既にあることを私は固く信じて、今日の話を終わりたいと思います。(大拍手)
 (昭和48年7月13日 創価大学体育館)

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