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日蓮大聖人・池田大作

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第10回「SGIの日」記念提言 世界へ世紀へ平和の波を

1985.1.26 「平和提言」「記念講演」「論文」(池田大作全集第1巻)

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22  また昨年の夏、民音(民主音楽協会)が企画した新シリーズ「マリンロード音楽の旅」の公演は、極めて興味深いものがありました。これは東西文明の懸け橋として、陸上のシルクロードとともに重要な役割を果たしてきた、アジアの南方海域を結ぶ″マリンロード″に焦点を当て、東南アジアの音楽、舞踊を紹介しつつ、諸文明の交流と日本文化への影響を探ろうとするものであります。
 特に企画の第一回は「タイと沖縄―その華麗な舞踊」と題するもので、そこにはタイと沖縄とが舞踊、演奏をとおして見事に交流する姿を浮き彫りにしておりました。
 更に本年は「シルクロード音楽の旅」の第四回公演として、中国、ソ連、トルコ、日本の四カ国による合同舞台が実現することになりました。それぞれの国から演奏家、舞踊手が来日し、歌と演奏、舞踊が行われることになったのは極めて意義のあることと思います。これまで「シルクロード音楽の旅」の企画に贅同し、調査団の受け入れや芸術家の派遣に積極的に協力してくれた国は、中国、モンゴル、インド、パキスタン、ネパール、イラク、アフガニスタン、ルーマニア、ソ連、トルコの十力国に達するとのことであります。
 私は今から十年前、一九七五年にモスクワ大学で「東西文化交流の新しい道」と題する記念講演を行いました。それは民族、体制、イデオロギーの壁を乗り越えて、文化の全領域にわたる民衆という底流からの交わり、すなわち人間と人間との心をつなぐ「精神のシルクロード」が今日ほど要請されている時代はないという基本認識に基づくものでありました。そして東西のみならず、南北をも包み込んだ精神のシルクロードが世界を縦横にとり結んでほしいとの願いを込めたものであります。私の講演意図が、ささやかではありますが、こうした民音の文化交流に具体的姿として実現されていることを心より喜ぶものであります。
23  相互理解と信頼の絆を
 今日、地球を南と北に分けているのは経済の発展度であります。しかし当然のことながら、その経済発展の度合いが、それぞれの国の文化領域全般の優劣を決定するものではありません。経済的に発展途上の国であっても、世界に誇りうる文化的財産を保有している例は少なくありません。それは人類共有の財産といってもよい。ちなみに、この地球に経済という視点ではなく、芸術、文学などというような別の次元からの光を当ててみれば、その多様性は目を見張るばかりでありましょう。そこには単純な南北の視点だけでは割り切れない豊かな世界像が現出するはずです。
 ともあれ、文化交流とは異民族、異文化を互いに認識し尊敬し合い、人と人との心を″平和の絆″で相互に結びゆく作業であります。
 民音創立者として、私は今後もこうした民衆の文化、芸術の交流を盛んにし、世界不戦への具体的一里塚としていく決意であります。
 もとよリアジアの平和と繁栄の構想は、その地域その国の民衆が主体的に作り上げていくべきものであります。否、それなくしてはアジアの恒久的平和はとうてい実現しえないといえましょう。またアジアの問題は、アジアだけで解決できるものではなく、ヨーロッパをはじめ世界の他の地域の問題と連動させて考えていく必要があることも当然であります。
 その意味からも、民衆の側からする平和へのダイナミックな取り組みが絶対の要請になっております。それこそが民衆の自発的な意志の開花した平和と文化の″緑の道″をアジアに貫通させ、また世界に広げていくものであると確信いたします。
 西暦二〇〇〇年まであと十五年。今世紀前半、三度までも不幸な世界大戦を経験した世界の国々は、今なお不信と対立の図式から完全に抜け出すことができないでおります。今こそ世界の民衆の力を総結集し、人類は不信と恐怖と対立から相互理解と信頼による平和と安定の時代へと流れを変えねばなりません。
 戦後四十年という時代の転換期にあたり、私自身、民衆が真に主役となる時代を築くために、本年も全魂で庶民の中に入り、恒久平和へ一歩前進の歩みを刻んでいきたい、と念じてやまないものであります。
 (昭和60年1月26日「聖教新聞」掲載)

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