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日蓮大聖人・池田大作

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第28巻 「大道」 大道

小説「新・人間革命」

前後
65  大道(65)
 峨々としてそびえる信濃の山々に、大勝利の歓喜の歌声が響いた。
 八月二十三日午後五時、松本平和会館で、長野広布二十周年を記念する県幹部会が晴れやかに行われた。
 席上、長野県歌「信濃の歌」を、「信濃混声合唱団」が高らかに歌い上げたのである。
 一、ああ荘厳に この城で
   幾日幾夜 語りたる
   地涌の旅人 いざや征け
   われらが信州 この法戦
   おお民衆に 力あり
 二、そよ風吹雪の 故郷は
   われらの魂魄 信濃路に
   これぞ思い出 忘れまじ
   ここに功徳が 満開と
   ああ情熱と 英知あり
 三、広布の行進 堂々と
   老いも若きも 美しく
   アルプス仰ぐ 君が顔
   われらの雄叫び 合唱は
   信濃の天地に 舞い舞えり
 万雷の大拍手が鳴り響くなか、山本伸一は、「信濃の歌」を作詞した心情を語っていった。
 「この県幹部会の大成功と、皆さんの大奮闘、大勝利に、心から、『おめでとう! ありがとう!』と申し上げたい。
 日夜のご苦労に対し、せめてもの励ましになればと、県の歌を一生懸命に作らせていただきました。
 勝利は痛快です。あふれる喜びがある。信心への確信も増す。それが広宣流布の醍醐味です。
 ゆえに、常に新しき挑戦を重ね、必ず勝ち続けていくことが大事なんです」
 伸一の言葉に、皆、胸を熱くした。
 長野には、そよ風光る美しき春がある。吹雪猛る冬がある。
 吹雪との格闘の季節を勝ち越えた人こそが、春のそよ風の温もりに、喜びを感じる。広宣流布の苦闘ありてこそ、大歓喜の幸福境涯を築くことができるのだ。
66  大道(66)
 長野県の記念幹部会の最後に、山本伸一は、力を込めて訴えた。
 「御仏意のままに進む信心の世界には、いっさい、無駄というものはない。
 いかなることも、不屈なる闘魂と歓喜の信心がある限り、すべて、新しい価値創造の源泉となり、大福運となることを確信していただきたい。
 私は、『”新生・長野”万歳!』と、声を大にして叫びたいのであります」
 幹部会が終わると、彼は県の幹部に言った。
 「今日の幹部会に参加できなかった方のために、明日二十四日に記念勤行会を開きましょう。
 希望者が多ければ、何度でも行います。皆さんを励ましたいんです」
 八月二十四日は、伸一の入会三十一周年の記念日である。
 記念勤行会は、午後二時から行われた。会場の松本平和会館は、次々と集って来る参加者であふれた。
 この席で彼は、入会の日を回想しながら、自身の心境を語った。
 「あの日以来、広宣流布に一人立たれた戸田先生に仕え、自らも未曾有の大願に生きることを定めた激闘の人生でした。
 元来、病弱であった私は、八月二十四日がめぐり来るたびに、”今年も、よくぞ生き抜いてこれたな”との実感をいだいていました。
 その私が、こうして元気に広宣流布の指揮を執ることができる。広布に生きるならば、己心の仏の大生命を開くことができるんです。
 これが、仏法の、御本尊の力なんです!」
 午後四時には、二回目の勤行会が開催され、ここにも、多くの同志が詰めかけた。
 伸一は、その後、近隣の学会員の激励などに回り、午後八時過ぎに松本平和会館に戻ると、また、たくさんの同志が待っていた。
 三回目の勤行会で、彼は呼びかけた。
 「どうか、自分を大切に、家族を大切に――そして、和楽の家庭を築いてください。私は、皆さんを守るために走り続けます!」
 この日、彼は万感の思いを句に詠んだ。
 「忘れ得ぬ この日は信濃で 指揮とれり」

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