Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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第26巻 「勇将」 勇将

小説「新・人間革命」

前後
65  勇将(65)
 山本伸一は、広宣流布の勇将である、支部長、支部婦人部長、そして、青年部の各部部長には、常に自分と同じ心で、″折伏精神″をたぎらせ、あらゆる活動の先陣を切ってほしかったのである。
 彼は、期待と慈愛を込めて、話を続けた。
 「さきほど、支部婦人部長さんが、山間の地域で、長年、『聖教新聞』を配達してくださっているとのお話を伺い、感謝の思いでいっぱいです。豪雪地帯などで新聞を配ってくださっている方をはじめ、すべての配達員の皆さんに、心から御礼申し上げます」
 三日前の二十二日、日本列島は発達した低気圧に襲われた。北海道の帯広では、降り始めからの新雪が八十八センチという、測候所設置以来の大雪の記録を更新。北日本を中心に大荒れの天気となった。
 この日、伸一は、香川の四国研修道場にあって、″配達員の皆さんが、どれほど大変な思いをしているか″と、心を痛めながら、真剣に、御本尊に無事故を祈ったのである。
 奈良の幹部会で彼は、「聖教新聞」の使命についても言及していった。
 「『聖教新聞』には、仏法哲理がわかりやすく説かれ、広宣流布の指標、信心の指導、教学の解説等が、掲載されております。それは、人生観、生命観、宇宙観を究め、仏法の法理を人生・生活に具現していくための、まことに重要な手引となる機関紙です。
 また、日蓮大聖人の法門を実践しゆく規範であり、大切な人生行路の指針といえます。
 その機関紙を、朝早く、寒風の日も、雪の日も、黙々と配達してくださる″無冠の友″に、私は最大の敬意と感謝の念をもって讃嘆したいのであります」
 大きな拍手が湧き起こった。
 彼は、確信に満ちた、強い声で語った。
 「広宣流布のために人一倍苦労されている方々が、幸せになれないわけがありません。必ず、大福運の人、大長者となります。長い目で見てください。仏法の因果の理法には、断じて?などありません!」
66  勇将(66)
 真の仏法者とは、自らが本来、仏であると確信している人である。一切衆生が仏であると信じる人である。仏法で説く、生命の因果の法則を、わが信念としている人である。
 それゆえに何ものをも恐れず、それゆえに人を敬い、それゆえに喜々として労苦を担い、信心は即人格となって輝きを放つ。
 山本伸一は、さらに「聖教新聞」の配達員への、深い感謝の思いを語った。
 「新聞を届けてくださる配達員の皆さんのご苦労は、大変なものがあります。何人ものお子さんをもつ主婦もいれば、勤めに行く前に配ってくださるサラリーマンもいる。
 また、なかには、一流会社の重役であったり、博士の夫人という方もいらっしゃる。まさに、多士済々です。
 心から広宣流布のために尽くし、法友のために奉仕してくださる、こうした数多の老若男女の方々を、私どもは、どこまでも尊敬してまいりたい」
 伸一は、彼の周りにいた、副会長や県長らに厳しい視線を向けて言った。
 「幹部は、そういう方たちの無事故と健康を、懸命に祈り抜いていくんです。深く感謝し、偉大なる同志として、仏を敬うように大切にしていくんです。そうでないと幹部は慢心の徒になってしまう。皆がやってくれて当然であるなどと思ってはいけません。
 奈良から仏教が起こったが、結局、僧侶が権威化していき、仏教本来の精神が失われていってしまった。絶対に、同じ轍を踏んではならない。私は、学会が民衆仏法の団体として永遠に発展していくために、あえて言っておきます」
 創価学会は、民衆のなかに生まれ、民衆を組織し、民衆勝利の絵巻を織り成してきた。
 国家に庇護され、国家の僕となった宗教ではない。民衆のための宗教であり、人類のための宗教である。権威、権力に屈服、隷属せず、人間自身に至高の価値を見いだす人間主義の宗教であるからこそ、世界宗教として広がりをもつのである。
67  勇将(67)
 山本伸一は、参加者に笑顔を向けると、快活に呼びかけた。
 「勝ちましょう! 勇気を奮い起こして自分自身に挑み勝つんです。それが、人生の、ご家庭の、広宣流布の勝利になります。
 前進しましょう! 私と一緒に、誇らかな勝利のドラマをつくりましょう!
 幸せになるために、広宣流布のために生まれてきた私たちではないですか! この世の使命を勇んで果たしゆくなかに、幸福の直道があるんです。歓喜があるんです。生命の躍動があるんです。境涯革命があるんです。
 奈良県創価学会のますますの発展と同志のご多幸を心よりお祈り申し上げ、私の話とさせていただきます。
 では、皆で万歳をしましょう!
 皆さんご自身の健康と長寿と勝利、ご家族の繁栄、そして、創価学会の大発展を祝しての万歳です」
 県長の沖本徳光がマイクに向かい、力のこもった声で音頭をとった。
 「万歳! 万歳! 万歳!」
 唱和する皆の声が、明日香文化会館にこだました。それは、人生と広布の勝利を誓う、勇将の雄叫びであった。
 伸一は、ピアノを弾いて参加者を励ましたあと、さらに、二階の広間に向かった。一階の大広間に入りきれなかった人が、スピーカーから流れる音声を聴いていたのだ。
 「ご苦労様! お会いしに来ましたよ。
 明日香文化会館は見事に完成しました。立派な会館です。しかし、建物はモノにすぎない。魂はありません。皆さんが、わが生命に″信心の王城″を、″広布の師弟城″を築き上げることによって、会館に魂を打ち込むことができるんです。つまり、″私は、こう戦い、勝ちました! 広宣流布の栄光の道を開きました!″と、堂々と語ることができる、自身の勝利の歴史を打ち立てることです。
 立ちましょう! 師子じゃないですか!」
 伸一の師子吼は、厳冬の明日香に、勇将たちの闘魂を芽吹かせた。

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