Nichiren・Ikeda
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54 開花(54)
山本伸一は、この日も陣頭指揮をとり続け、午後三時前、再びバス乗り場にやって来た。最終バスに乗るボーイスカウトを見送るためである。
音楽隊、鼓笛隊の奏でる「蛍の光」の調べが響き、見送りのメンバーの歌声がこだましていた。
「サヨウナラ!」
「アリガトウ!」
ボーイスカウトたちはバスの窓をいっぱいに開け、口々に感謝の言葉を語りながら、大きく手を振っていた。
ここでの一夜は、国境や民族、宗教を超えて、相互理解を深め合った、もう一つの「ジャンボリー」となったのである。
アインシュタインは、「信頼は個人の結びつきを培うことによってのみ、つくり出されうる」と分析している。
ボーイスカウト日本連盟の世話役の一人が、伸一に駆け寄って来て、感慨深げに語った。
「私どもは、外国の人と理解を深めることはもちろんですが、その前にもっともっと、日本のなかで、理解すべきものがあったことを知りました。それは、創価学会についてです。
このたび、私たちは、暴風雨という大変な事態のなかで、皆様方の真心と人間性に触れることができました。
この温かい友情に包まれた一夜に、山本会長のご好意を身に染みて感じた次第です。私たちは、この友情の灯を、消してはならないと思います」
伸一は言った。
「全く同感です。友情は人間性の証です。友情を広げ、人間と人間を結び合い、人類の幸福と平和の連帯をつくるのが、私どもの目的です」
世話役の壮年は、大きく頷いた。二人は、固い固い、握手を交わした。
この救援活動に、学会員は、慈悲の光を万人に注ぐ、社会貢献の時代の到来を強く感じた。
後日、ボーイスカウト日本連盟の理事長は、学会本部を訪問して、山本伸一に感謝状と楯を贈っている。
また、伸一は、後年、世界を旅するなかで、「あの時、お世話になりました」という青年たちと、思いがけぬ嬉しい再会を重ねることとなる。
社会を離れて仏法はない。ゆえに、わが地域、わが職場に、君の手で、人間主義の花を断じて咲かせゆくのだ。