Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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第11巻 「暁光」 暁光

小説「新・人間革命」

前後
48  暁光(48)
 山本伸一の声に、一段と力がこもった。
 「広宣流布に進みゆく皆さん方を、日蓮大聖人は必ずや御称賛され、御加護くださることは、絶対に間違いありません。
 私もまた、生命の続く限り、皆さん方を守りに守り抜いていくことを断言いたします!」
 大地を揺るがさんばかりの歓声と拍手が起こり、やがて、あの意気盛んな、歓喜と誓いのかけ声がこだました。
 「エ・ピケ、エ・ピケ、エ・ピケ、ピケ、ピケ。エ・オラ、エ・オラ、エ・オラ、オラ、オラ……」
 皆、目を赤く腫らしながら、声を限りに叫んだ。
 そして、泣きじゃくりながら、跳び上がって手を振り、肩をたたき合い、また号泣するのだ。
 その光景を見て、グロリア・サイキの目から、滝のように涙があふれた。幾筋も、幾筋も、涙は流れて止まらなかった。
 十八年間、こらえにこらえ、溜まりに溜まった胸の思いが、堰を切ったようにあふれ出たのだ。
 彼女は、立っているのが精いっぱいだった。
 それでも、叫ばずにはいられなかった。
 「先生! ブラジルは勝ちました。先生との、あの約束を果たしました!」
 しかし、その声は、怒濤にも似た、激しい歓声にかき消された。
 翌二十六日午後六時から、「二十一世紀の大地に平和の賛歌」をテーマに掲げ、ブラジル大文化祭は、山本伸一が見守るなかで、開催された。
 あのリオデジャネイロからも、首都ブラジリアからも、四千キロを隔てた″緑の秘境″アマゾンの地からも、メンバーは喜々として集って来た。
 フィゲイレド大統領は、この大文化祭に祝福のメッセージを寄せた。
 そのなかで、大統領は、ブラジル創価学会は、「文化、教育、体育、さらには世界の平和への活動を、我が国において繰り広げ、核兵器廃絶など、広範な平和運動に貢献を示しております」と評価していた。
 そして、その「高貴なる理想が、実現されることを切望いたします」と述べている。
 大文化祭は、喜びを爆発させ、サンバのリズムで幕を開けた。
 未来からの使者・少年少女のリズムダンス。青春の歓喜を謳う女子部のモダンダンス。鼓笛隊、音楽隊が″希望の調べ″を明日に響かせ、フォークダンス、日本民謡が観客を沸かせた。
49  暁光(49)
 暗転した場内に、赤・黄・青……と、幻想的な光の世界が広がり、「SGI」の文字やブラジル国旗が、次々と浮かび上がる。懐中電灯を使った「電照人文字」である。
 続いて、大文化祭の圧巻・男子部の組み体操となった。人間の橋がつくられ、波がうねり、五段円塔が積み上げられていった。
 二段、三段、四段……。
 スタンドの同志は、手に汗を握り、祈るような気持ちで舞台を見守った。
 揺れる四段の人間円塔の上で、両手に旗を持った青年が立ち上がり、腕を大きく広げた。
 立った! 勝利の金字塔が打ち立てられたのだ!
 場内は、感動と興奮の坩堝となり、生命と生命が、魂と魂が、キラキラと輝きわたる、神々しいほどのフィナーレを迎えた。
 色とりどりの衣装が、舞台を人華の花園に変え、喜びの笑顔が揺れ、どの目にも、真珠の涙が光った。
 山本伸一の胸にも、熱い感動が、溶岩のように噴き上げていた。
 彼は、身を乗り出し、大きく手を振り続けた。
 そして、最大の敬意と称賛を込めて叫んだ。
 「オブリガード(ありがとう)! オブリガード!」
 大歓声(だいかんせい)と、猛然たる豪雨を思わせる大拍手が、ドームを揺り動かした。
 会場には、サンバの調べが響き、メンバーの愛唱歌「サウダソン・ア・センセイ」(ようこそ、先生)の合唱が広がった。
 出演者も、観客も一体になって、誇り高く、晴れやかに、歌い踊った。
  ラ・ラ・ラヤー……
  先生!
  あなたをブラジルに迎えることができ
  私たちの夢は叶いました
  ………… …………
  ありがとう 先生!
  真心の花を捧げます(日本語訳)
 それは、風雪に耐え抜き、自身の極限に挑んできた創価の勇者たちの、強き連帯の熱唱であった。
 そこには、人間正義と究極の平和の、真髄の実像があった。
 勝った! 遂に、遂に、わが同志は勝ったのだ!
 この時、ブラジルのメンバーは、信仰という人間の至上の情熱と、仏法という宇宙の究極の力をもって、暗黒の闇を破り、暁光を迎えたのである。
 そして、太陽が黄金の光を放って、刻々と空高く昇りゆくように、以来、ブラジル創価学会は、二十一世紀の世界広宣流布の先駆として、目を見張るほどの前進を遂げ、燦然と輝きわたっていくのである。

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