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日蓮大聖人・池田大作

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2 家族や社会のあり方をめぐって  

「人間と文化の虹の架け橋」趙文富(池田大作全集第112巻)

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7  人間主義で精神文化を守れ
  もう一人、日本人の辻村明氏が、「韓・日文化の同質性と異質性」という論文(東国大学日本学研究所発行『日本学』に収録)を書かれています。この中で、日本人や日本文化の特徴は、「切り捨て」と「繊細さ」に表れていると述べています。
 たとえば色彩を落とした(切り捨てた)日本の神社や仏閣。世界で最も短い詩文の一つである俳句や短歌。水墨画や書など、筆による黒一色の芸術作品。格闘技でありながら、微妙な技と簡単であっさりした勝負を特徴とする相撲や柔道など。
 どれもが「切り捨て」と「繊細さ」によって成り立つ日本の固有文化です。
 池田 確かに、貴国の歴史的建造物は、どれも色彩豊かです。日本でも中世あたりまでは極彩色が好まれたようですが、徐々に色彩は減っていき、安土桃山時代には「わび」「さび」といった文化が大成していきました。
 西洋のカラフルな絵画などと比べても、「切り捨て」「繊細さ」が日本文化の特徴というのは、うなずけます。
  「柔道」「剣道」「弓道」「華道」「茶道」「書道」など、すべてに「道」がついていますね。このことも、単なる稽古事などではなく、究極の境地を求める修行の「道」であることを強く示唆しています。
 神道や禅の影響もあるでしょうが、自我を放棄し、無我の境地を得るという意味で、ここにも「切り捨て」の過程を感じ取ることができます。また、自我を切り捨てた後には、じつに注意深く「繊細に」道程を進まなくてはいけない。そうでなければ、自我切り捨ての甲斐もなく、永遠に再起不能に陥ってしまうのではないかと想像します。
 池田 そのような日本の精神文化の特徴が、極限まで悪いほうに表れてしまったのが、第二次世界大戦における軍国主義下の社会でした。
 人は皆、自由で豊かな心を奪われ、最後には「自我」というより「自分自身」を切り捨ててしまった。
 痛恨の極みは、その最前線に、希望あふれる未来をもった若者たちが押しやられたことです。
 精神文化の精髄であるべき宗教も、戦争に利用されました。否、多くの宗教が積極的に戦争に加担していった。
 文化はどこまでも、人間を幸福にし、社会を平和にするためにあります。
 修行の「道」も、人間を根本にした「人間主義」「平和主義」を貫いて初めて、欄漫と咲き誇るはずです。
 時代は変わっても、「生命の尊厳」こそが、人類の求める精神の根本になくてはならない。そして、精神文化を含む文化は、人間を国家や権力に隷属させる手段であってはなりません。そのような愚行は、あらゆる「善の力」を結集して、との地上からなくしていかなければならないのです。

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