Nichiren・Ikeda
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創価学園1
中学校・高等学校[昭和54年度]
教育指針 創価学園(1)(池田大作全集第56巻)
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6 創価高等学校 第十回卒業式〈昭和55年3月16日〉
あせらず自分らしい道を
第十回の晴れやかな卒業式を迎えまして、牧野校長先生はじめ、諸先生方、ならびにご両親の皆さま、そして、卒業する若き栄冠の諸君に対し、心からお祝い申し上げます。おめでとうございました。こういう緊張した場では長い話はいけない。皆さんは、三年間もむずかしいことを勉強してきたのだから。そこで、簡潔にわかりやすく、はなむけの言葉を述べさせていただきます。
7 現実を離れて人生はない
その一つは、歴史上のある著名な人物の話であります。それは、昭和初期の宰相として、日本の重大な責任ある立場にあった人の人生観であります。
その人はこう述べております。
「人生は込み合ふ汽車の切符を買ふため、大勢の人々と一緒に、窓口に列を作つて立つてゐるやうなものである。
中々自分の番が来ない。時間が迫まつて来て気は急せり出す、隣りの方が空いてゐそうに見えるので飛び出して見たくなる。しかし一度自分の列を離れたが最後、あつちこつちと徘徊つてみても、そこにもまた順番がある。しまつたと気が付いて元の列に立ち戻つて来れば、自分の前に居た所は、已に他人に占領されてゐて、遙か後ろに廻らなければならない。結局急いだ為に却つて後れることになる」(北田悌子『父浜口雄幸』日比谷書房)というのであります。
この話は、大きく時代は違いますが、人生というものの真実の一つの姿を語っていると思う。諸君のこれからの人生も、私は決して焦ってはならないと申し上げたいのであります。
現実社会は、矛盾が多いかもしれない。矛盾だらけといってもよいかもしれない。しかし、現実というものを離れて、人生はありえない。自分のこれからの尊い一生を全うするために、どうか、不満と焦りとわがままを通そうとして、大切な自分の人生を破壊しないでいただきたい、と念願するものであります。
8 先生方と長く人生の交流を
第二に、担任の先生とのつながりを生涯もとうとしていただきたいということであります。
何年に一度でもよい、かならず先生を慕い、先生を囲んで、その懐かしき恩師とともに、すばらしい人生の交流の歴史を歩んでいってほしいのであります。
かくいう私も、今もって、小学校の恩師を忘れることができない。また、高校時代の恩師とも、いまだに書簡を交わしております。
そこに、あたたかい人間性が芽生え、また、長い人生のうえで、張りあいをもつものであります。どうか先生方も、迷い多き青春時代を生きぬく卒業生、さらには、在校生に対しましても、何かと支えになっていただきたい、ということをお願い申し上げます。
過ぎ去ってしまえば、たいしたことでもないと思われる出来事が、渦中にあっては、どうすればよいのかわからず、一人苦悩に沈むのが、青春というものの姿です。そのときの手をとり足をとり親身になっての指導というものは、生涯忘れられない思い出として、その人の心に、いつまでもいつまでも深く、広く残るものであります。
その点、どうか今後ともよろしくお願い申し上げます。
9 何があっても負けない姿勢を貫こう
第三に、卒業生諸君は、どこまでも自己を磨くということを忘れてはならない。
大学に、そして社会に、一歩進み、環境が大きく変わると、どうしても心が緩んでしまうものです。そのとき、自分を堕落させて、虚構の美学をつくる人生であってはならない。これでは敗北であります。悩みと苦しみとに挑戦して、人々からも、あの青年はよく成長した、あの学園卒業生はたしかに立派である、成長している、といわれる一人一人になっていただきたいのであります。
そして、いかなることがあっても、どっしりと構えて、自分は負けないという姿勢を貫いていただきたいのであります。また、ご両親に心配をかけないで、自分らしく、自分の道を自身を磨きながら、進んでいただきたいのであります。このように申し上げて、簡単ではありますが、私のはなむけのあいさつとさせていただきます。お元気で。
10 創価中学校 第十回卒業式(メッセージ)〈昭和55年3月22日〉
富士の如き不動の人たれ
晴れやかに卒業の佳き日を迎えられた皆さん、本当におめでとうございます。卒業のときにあたって振り返ると、この二年間の苦しみも悩みも、そして喜びも、すべてがかけがえのない思い出とともに青春の財産として光り輝いていることでしょう。
私は、本日は残念ながら出席できませんが、皆さん方が凛々しく生い育った姿を心に描きつつ、はなむけの辞をお贈りしたいと思います。
人生において、最後に勝利をおさめるものは、粘りの人であり、忍耐力をもって、自分自身の坂を上りゆく人であります。青春に悩みや迷いはつきものです。それらに直面したとしても、諸君は決してたじろぐことなく、今こそみずからを鍛えるときと、勇気をもって立ち向かっていっていただきたい。
吉川英治の小説『宮本武蔵』のなかに、武蔵が遥か富士山を望みながら、少年にこう語る一節があります。「あれになろう、これに成ろうと焦心るより、富士のように、黙って、自分を動かないものに作りあげろ」(講談社)と――。
富士の如き不動の人たれ――と、一人一人の成長を心より祈りつつ、メッセージとさせていただきます。