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日蓮大聖人・池田大作

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日中国交正常化提言 日中友好の未来を託す〈第11回学生部総会〉

1968.9.8 提言・講演・論文 (池田大作全集第150巻)

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4  歴史的・文化的にも深いつながり
 日本は古代の国家統一のころ以来、否、厳密にいえば、それよりはるか以前から、一貫して中国文明の影響をうけつつ、生々発展を続けてきた。我が国の仏教も中国から伝えられたものであり、私どもが勤行のときに読む経文も漢文で書かれている。政治哲学や道徳などは、中国の儒教をそのまま取り入れている。今ではすっかり日本化してしまったさまざまな風俗習慣も、もとをただせば、中国に起源をもっているものが多い。
 民族性の点からいっても、奈良朝時代、かなりの中国人が帰化してきたといわれている。有名な伝教大師もそうした帰化人の子孫だと伝えられている。たとえば、当時の日本の中心地であった京都の太秦うずまさは、当時の中国帰化人氏族の居住地であった。そうした面影を偲ばせる地名は、各地にたくさん残っている。このような歴史的な関係、民族性や風俗の相似からいっても、日中友好は自然の流れである。
 したがって、今のように、日本が中国に背を向け、東洋民衆の苦悩に対して、手をこまぬいていることこそ、何にもまして不自然であり、不合理であるといわざるをえない。
 あるフランスの評論家は「アメリカの極東政策を修正させる鍵をもっているのは日本である。その日本が国際情勢を緩和するという役割を果たすためには、中国との関係をすみやかに正常化し、独自の政策をもつべきである」という意味のことを述べていた。この意見には私も全面的に賛成である。
 日中国交の正常化は、単に日本のためのみならず、世界の客観情勢が要請する日本の使命である、と私はいいたい。
5  中国の国連参加へ強い努力を
 次に中国の国連参加問題について意見を述べたい。これは、一般には代表権問題といわれるように、国連における中国の名札のある席に、北京の政府と台湾の政府とどちらの代表がすわるかという問題である。常識的には、大陸の中華人民共和国と中華民国と、新たに席を設けて、両方が並んですわれば、それでよしとする意見もあるが、それではどちらも承知しない。いずれも「自分が全中国の代表である」というのである。
 ともあれ、大勢としては、世界の世論は、北京政府支持の方向へ次第にかたむいていくであろう。現に先進諸国による国家承認も少しずつ増えており、国際通の人々は「おそらく、四、五年で国連における中国代表権は、北京に帰するだろう」と予想している。
 日本も独立国である以上、独自の信念をもち、自主的な外交政策を進めていくのは当然の権利である。まして、過去二千年の中国との深い関係に思いをいたし、現在の国際社会における日本の位置を自覚し、さらに未来のアジアと世界平和の理想を考えるならば、いつまでも、このままの姿であってよいわけがない。
 時代は刻々と動いている。未来に焦点を合わせて活躍していくのは、青年の特権である。また、青年たちをそうさせていくのが、為政者、そして、指導者の責任ではないだろうか。
 一九六八年(昭和四十三年)秋、また第二十三回の国連総会が開かれるが、日本はこれまでのように、アメリカの重要事項指定方式に加担するのでなく、北京の国連での代表権を積極的に推進すべきである。
 およそ、地球全人口の四分の一を占める中国が、実質的に国連から排斥されているこの現状は、誰人が考えても国連の重要な欠陥といわねばならない。これを解決することこそ真実の国連中心主義であり、世界平和への偉大な寄与であると思う。
6  日中貿易拡大への構想
 次に日中貿易の問題について構想を述べてみたい。
 貿易全体として、中国が社会主義国全体と取り引きした額と、資本主義国と取り引きした額との比率を出してみると、かつて一九五〇年代は、ソ連一辺倒で、約七割が、いわゆる共産圏内で占められていたのが、十年後の六〇年代に入ってからは、逆に資本主義国との取り引きが約七割になっている現状である。
 フランスのロベール・ギラン記者は、やはり、対中国貿易で最も有利な立場にあるのは日本であろう、と述べている。日本自体としても、その地理的条件からいって、遠い将来の発展のため、豊か在資源をもつとともに巨大なマーケットでもある中国と、密接な関係を結ぶことが相互にとって最も有利であり、必要であるといいたい。しかも、それは単なる経済的利益のみならず、アジアの繁栄、ひいては世界平和への偉大な貢献に直結するものであることを、私は強調しておきたいのである。
7  アジアの繁栄と世界平和のために
 また、すでに述べたように、世界の平和にとって最も不安定で、深刻な危機をはらんでいるのが、悲しくもアジア地域である。そのアジアの不安定の根本的な原因は、アジアの貧困であり、自由圏のアジアと共産圏のアジアとの隔絶と、不信と、対立にあるということも明瞭な事実である。このアジアの貧困を根底から癒すためには、日本が、アジアの半分に背を向けてきたこれまでの姿勢を改め、積極的にアジアの繁栄のために尽くしていくことが、どうしても必要である。また、日本が率先して中国との友好関係を樹立することは、アジアのなかにある東西の対立を緩和し、やがては、見事に解消するに至ることも、必ずやできる、と私は訴えたいのである。
 たしかに、現状はさまざまの不安定な要素をはらんでいる。目前の利益、日本一国の高度成長のみを考えるならば、現在の外交路線が安全であるように見えるかもしれない。だが、このままでは、ますます戦争の危機を深め、やがて日本の繁栄も夢となってしまうことも十分考えられる。それを、私は心より心配するのである。
 現在、日本は、自由圏で第二位の国民総生産に達し、かつてない繁栄を誇っている。しかしこれは、低所得の国民大衆と、アジア民衆の貧困のうえに立った砂上の楼閣にすぎない。あるフランスの経済学者は、日本の繁栄を「魂のない繁栄」と呼び、ある社会学者にいたっては「豊かだが、去勢された国民である」とさえ評しているのである。国家、民族は、国際社会のなかで、かつてのように利益のみを追求する集団であってはならない。広く国際的視野に立って、平和のため、繁栄のため、文化の発展・進歩のために、進んで貢献していってこそ、新しい世紀の価値ある民族といえるのである。
 私は、今こそ日本は、この世界的な視野に立って、アジアの繁栄と世界の平和のため、その最も重要な要として、中国との国交正常化、国連参加、貿易促進に、全力を傾注していくべきであることを、重ねて訴えるものである。
 なお、私のとの中国観に対しては、もちろん種々の議論があるだろう。あとは一切、賢明な諸君の判断に任せる。ただ、私の信念として、今後の世界を考えるにあたって、どうしても日本が、そして諸君ら青年たちが経なければならない問題として、あえて申し述べたわけであり、これを一つの参考としていただければ、望外な喜びなのである。
 また、このように日中の友好を提唱すると、往々にして”左寄り”であるかのように曲解される。しかし、これこそ、全く浅薄な見方であるといわざるをえない。なぜならば、我々が仏法という立場にあって、人間性を根幹に、世界民族主義の次元に立って、世界平和と日本の安泰を願っていくことは当然である。そして、その本質を捉えていくならば、右でもなければ、左でもないことは、明瞭に理解できると思う。現象面だけを見て、右とか左とか、性急な論断をすることは大きい誤りである。所詮、右、左といっても、その思考の基点は何かということが大事である。それを無視して論議しても無意味である。この基点こそ色心不二の大哲理であり、それをしっかりと踏まえた行き方が、中道主義ではないだろうか。
 (東京・両国の日大講堂、要旨)

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