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日蓮大聖人・池田大作

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4 文化交流に「人間性」の輝きを  

「人間と文化の虹の架け橋」趙文富(池田大作全集第112巻)

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4  百十五万人の児童・生徒が鑑賞
 池田 こうした世界の豊かな文化に、若い世代にも触れてほしいとの思いで、民音では一九七三年以来、「学校コンサート」を続けています。
 民音が招聘したアーティストに、全国の小・中学校、高校などを直接訪問していただいたり、公共の施設に児童・生徒を招待したりして、未来に羽ばたく若い世代に、一流の音楽文化に触れられる機会を提供してきました。
 「学校コンサート」は、二〇〇三年で三十年。この年の十月までに、参加した児童・生徒数は、全国でのべ百十五万人を超えました。
 開始当初に参加した小学生も、今では、三十代の後半から四十代です。貴重な思い出として振り返る人、また人生に大き、な影響を受けた人など、さまざまいらっしゃることと思います。
 最近では、ソウル芸術団が、子どもたちに、美しい扇の舞、杖鼓チャンゴの舞や、リズミカルな農楽などを披露してくださいました
  大変にすばらしい企画ですね
 少年少女のとろの純粋な感性に刻まれた至高の芸術は、大人になってもずっと消えないものです。彼らのその後の人生に、文化という滋養を与えるととができたのではないかと確信します。
5  日本文化が全面開放へ
 池田 ありがとうございます。
 一九九〇年代の中ごろから、貴国における「日本文化の開放」政策も大きく前進しているとうかがっています。近い将来、「全面開放」になるとも聞いています。この点はどうでしょうか。
  戦前の日本文化は、やはり軍国主義的な色が強かったと思います。しかし戦後は、平和的な文化へと変わり、韓国人にも受け入れやすくなっています。日本文化の奥底に「平和」があるのなら、全面開放は賛成です。
 池田 開放によってやってくる「中身」が問題だ、ということですね。
  はい。全面開放といっても、低俗なものや暴力性を含んだもの、あるいは戦前・戦中の日本の軍国主義を想起するような内容が含まれたものは、やはり拒否反応もあるでしょう。
 池田 日本でも最近、貴国の映画やテレビ番組が、数多く紹介されるようになりました。
 「韓国の文化には、日本人も心から共感できる部分が多い」と気づき始めたのだと思います。
 どの国にも、歴史が育んできた文化があります。そのよさを学び合うことはとても大事なことです。
  歴史を振り返れば、戦前・戦中を通じて、日本文化と言えば、わが民族にとって強制的に「押しつけられた文化」でした。こうした悪い印象は戦後もずっと続き、全斗煥チョウドンファン盧泰愚ノテウ両大統領の時代でも、日本からは雑誌すら自由に持ち込めないこともありました。「日本文化の完全開放」など、まったく考えられない空気が強かっただけに、隔世の感があります。
 池田 「考えられないこと」とおっしゃる歴史的背景を、日本人はよくよく考えなければなりません。
 戦後六十年にもなろうとしているこの時期にいたって、なぜ「ようやく」隣国の日本文化が完全開放されるのかという歴史的背景を、日本人は真摯に省みる必要があります。
 文化は本来、戦争の対極に位置すべきものです。ところが実際は、戦争や暴力を生み出す社会構造に組み込まれてきたことが、しばしばありました。貴国の人々は、その文化の「恐ろしい面」を嫌というほど味わってきた。
 文化は人間の精神活動によって創造された学術、芸術、哲学、道徳、さらには衣食住など、あらゆる生活様式の総称であるとも言えます。
 その意味で、貴国とわが国は、どこよりも文化的に深い関係を築いてきました。
 しかし、その類似性とともに、独自性や違いを認識し、尊敬し合わなければ、独善的、排他的な悪弊が表面に出てきてしまう。両国の不幸な歴史は、それを語って余りあります。
  文化は、本来、戦争の対極にあるべきものーーまさに池田先生の、おっしゃるとおりだと思います。文化こそ本然的に、自然や環境と共存しつつ、人間が「理想」を追求し実現する精神的な活動であると思います。
 池田 これからは、「戦争の文化」に対して「平和の文化」を、断じて築いていかなければなりません。
 「生命の尊厳」の基盤に立脚して、人間、生命、環境を第一に大切にする文化、そして、さまざまな差異を超えて「共生」し、「多様性」を尊重できる文化を、どう育んでいくか
 趙博士との語らいは、この何よりも大切な「平和の文化」の種蒔きにほかならないと確信しております。

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