Nichiren・Ikeda
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日蓮大聖人・池田大作
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池田大作
「東洋の智慧を語る」季羡林/蒋忠新(池田大作全集第111巻)
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これに対し、「慈悲」や「創造」の心は「結合」のエネルギーであります。それは、人と人、民族と民族をつなぎ、人間と自然を融合し、共生へと導いていきます。人間生命に内在する「結合」のエネルギーの連帯をもって、「分断」のエネルギーをコントロールしゆくことこそ、「戦争」から「平和」への「基本軸」でありましょう。
東洋文明の悠久の歴史には、人間生命に内在する「善性ーー結合の子ネルギ」の洞察と開発の「叡智」が、ダイヤモンドのごとくきらめいております。この生命の「宝」をともに開発し、現代の知性で磨きゆく碩学として、私は、
季羨林
き せんりん
先生、
蒋忠新
しょうちゅうしん
先生のお二人と出会うことができました。
思えば、現代文明の行き詰まりを鋭敏に察知し、「西欧中心史観」に異議申し立てをしたのは、二十世紀世紀を代表するイギリスの歴史家トインビー博士でありました。西洋文明一元論に対抗し、インド文明、中国文明をも包括する人類史的視野に立って、幾多の文明の誕生、発展、衰亡をダイナミックに描き出したのであります。
私は、東洋文明、とりわけ大乗仏教の実践者として、三十年前、トインビー博士との対談に取り組みました。東洋の叡智に深いまなざしを向けられていた博士が、「未来の世界統合の機軸」として注目していたのが、中国でありました。
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現代中国を代表する世界的知性の季羨林先生は、「生涯現役」で、五十六年の長きにわたって、大学教授を続けられ、副学長も歴任されております。
季先生は、二十世紀のインド学・仏教学の最高峰の、国際的に著名な学者であられます。東方学の開拓者であり、まさしく東洋の智慧を体現してこられました。中国学術界のリーダー的存在であり、中国敦煌トルファン学会会長等の多くの学術分野の指導的な重責を担われております。
また、たいへんに格調の高い流麗な文体で、膨大な散文を書いておられる中国当代一流の文筆家でもあり、「国学大師」としても広く深く尊敬を受けております
さらに、さまざまな国家の要職を歴任され、国家人民と人類のために大きな貢献をなされてきました。
季羨林先生と私との最初の出会いは、一九七八年九月の第四次訪中の折、北京大学を訪問し、一回目の図書贈呈をさせていただいたときでした。そのとき、受け入れてくださった大学側の中心者が、当時、副学長の季羨林先生でした。十年に及ぶ文化大革命の苦難を乗り越えられた先生の尊容は、北京秋天のごとく晴れやかでした。
そして、もうお一方のてい談者である蒋忠新先生は、中国社会科学院アジア太平洋研究所の正研究員(教授)であり、『法華経』写本研究の世界的な第一人者であられます。
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この「てい談」の直接のきっかけをつくってくださったのは、
卞立強
べんりつきょう
先生(創価大学客員教授)でした。当時、北京大学東方言語文学学部日本学科の教授であった卞先生は、季羨林先生の教え子であり、私の著書を中国語に多数翻訳され、季先生に紹介してくださっておりました。季先生と卞先生の語らいのなかで、私との対談のアイデアが生まれたとうかがっております。
仲介の労をとってくださった卞先生に、厚く御礼申し上げます。
当初は、季羨林先生との対談形式で準備が進んでおりましたが、「東洋の智慧」としての仏教、なかんずく『法華経』に言及するとなれば、季先生の教え子であり、とくに『法華経』研究に、おいて格別に深い学識をもたれている蒋忠新先生にも加わっていただきたいと考え、三者による「てい談」を提案いたしました。私の考えに、季先生も全面的に賛同してくださいました。
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私たち三人は、東洋思想の悠久の歴史のなかに、人間、民族、宗教、文化を結びゆく「統合」「共存」の智慧を求めて、対話を重ねてまいりました。
三者による往復書簡を通し、探究しあった成果は、東洋哲学研究所発行の学術誌「東洋学術研究」に四回(通巻第一四五~一四八号〈二〇〇〇年十一月~二〇〇二年六月〉)にわたり掲載されました。このたび、単行本として上梓するにあたり、「序章」を加え、加筆を施しました。
本書は、まず、九十歳を超えられた季羨林先生の波瀾の人生、ならびに師弟の道を貫かれる蒋忠新先生の生き方を主軸に始まっております(序章)。
そして、季羨林先生の仏教学、言語学における世界的な業績を通して、「釈尊の使った言葉」や、仏教の「平等の精神」を解明していきました(第一章)。
次に、大乗仏教の編纂の時代から続く「大乗非仏説」論への批判を通して、「『法華経』の起源」(第二章)に焦点をあてております。また、『法華経』がインド・中国・日本へと流布してきた足跡をたどって、日蓮大聖人の仏法に及びました(第三章)。そして、今日、創価学会の歴史のなかに「法華」思想の現代的な展開がなされていることを語っております(第四章)。
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ここで、人間の善性の開発のために、中国哲学史に視野を転じ、「性善説」「性悪説
」を取り上げて、「人間の本性」について考察しました(第五章)。
さらに、東洋と西洋の文化の特質を比較し(第六章)、東洋文化の精髄をなす「天人合一」思想や「依正不二」論について論究しあいました(第七章)。
最後に、二十一世紀の人類の未来を開くにあたっての、「東洋の智慧」の貢献について、具体的に意見を出しあっております(第八章)。
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このような語らいを通して、東洋思想に内包されていた「結合のエネルギー」を開発する叡智が次々と洞察され、そこに現代的な知性の光があてられていったのであります。
『法華経』の統合的精神である「一念三千」論、中国思想の精髄としての「天人合一」の思想、インド哲学の究極である「梵我一如」の思想ーーこれらは、まさに、分断と分裂を重ねる現代文明の「闇」を照らしゆく、珠玉のごとき「東洋の智慧」の結晶であります。
私は、てい談者の一人として、東洋の叡智が、万物の共生、共存を志向する「平和と希望の世紀」に、その雄姿を見せゆくであろう「人類文明」の導きの”光”となることを希求しております。
季先生も言及されているように、人類が待望する未来は、仏教で「仏国土」と表現し、また、儒教では「大同の世界」として描いてきた世界であります。
本年は、日中国交正常化三十周年の住節にあたります。周恩来総理は、だれよりも深く、強く、日中の友好を願っておられました。私は、日中の学術・文化交流の一つの成果として、本書がこの記念すべきときに出版されることを、周総理も喜んでくださっているにちがいないと、確信しております。
両先生が、人類の平和と繁栄、そして日中友好の増進のため、さらにご健勝で活躍されますことを、お祈り申し上げます。
二〇〇二年八月二十四日
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