Nichiren・Ikeda
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後記
「池田大作全集」刊行委員会
講義「方便品・寿量品」(池田大作全集第35巻)
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3 なお、本全集への収録にあたって、付言しておきたい点がある。創価学会では、二〇〇四年九月に「勤行」および「御祈念文」の制定を行い、各人の一生成仏と、広宣流布を進める勤行という日蓮大聖人の本義に基づき、世界広宣流布の時に適った勤行の在り方として、「方便品・寿量品」の読誦から、「方便品・自我偈」の読誦へと勤行方式を変更した。
その意味では、本全集で収録する講義の中で、寿量品の「長行」を講義した範囲については、現在、会員の勤行では読誦されない部分となっている。しかし、刊行委員会としては、本講義は、長行部分と自我偈の両方によって「寿量品」講義が成り立っていることを考慮し、さらに、教学の研鑽としては寿量品全体を学ぶ意義も大きいことから、そのまま全体を収録した。ただし、「御観念文」との表現については、現在の勤行要典に合わせて「御祈念文」と変更した。
4 さて、この講義は、連載中から国内外の友に感動を広げ、世界各国でも翻訳・出版された。
この中でロシア語版には、ロシア科学アカデミー東洋学研究所のマルガリータ・ヴォロビヨヴァ=シャトフスカヤ博士が「発刊に寄せて」を執筆されている。長年にわたって法華経写本を研究してきたことで広く知られている同博士は、名誉会長との会見の時も、「私は池田会長の法華経講義を読んださい、会長が、難解な思想を非常に分かりやすく、現代人の考え方を配慮しながら、多くの人々が理解できるように語られていることにたいへん、感動いたしました」との感想を寄せられていた。
そして、「発刊に寄せて」では、次のようにつづっている。
「法華経は、あらゆる差異を取り払って成仏の可能性を万人に開きました。法華経が深く愛され、経典の最高峰であるとされる所以は、ここにあるのです」
「衆生は決して弱く愚かな存在ではないと法華経は励ましています。人間の自立を促す仏の教えは、多くの人々にとって良き助けとなっていくことでしょう。釈尊がこの世を去ってから大きな時間が経過しました。その間、仏は、決してどこか遠い世界から衆生を傍観しているのではありません。仏陀の声は、その教えを正しく受け継ぐ生きた人間の声となって私たちに語りかけ続けているのです」
「そのような声の一つが、本書の著者、池田大作博士といえます。池田博士が読むように法華経を読む人は、現代にあって、仏陀の声を聞く人です。仏の心をたもつことになります」
この博士の言辞の中に、名誉会長の法華経講義の特徴が端的に示されていよう。法華経は、万人に内在する可能性を開き、人類の境涯を高める経典である。この法華経の力を信ずる人は、たとえ、いかなる困難が生じても、人生を苦しみと思う必要はない。すべてを乗り越えていけるからである。
5 そうした励ましは本書の随所にある。
「自身の内なる宝に気づいた人は、今度は他人の宝に気づき、他人を心から尊敬する。そして、他者に対する触発と貢献への『行動』に立ち上がっていく。その中でこそ、自身の宝が磨かれる。自身の可能性、尊厳性への確信が深まっていく──。こうした人間の『限りない向上』への道が、仏法なのです」(本巻三三ページ)
法華経は、民衆救済の経典である。法華経は、「万人が仏である」という真理と、「万人を仏にする」という実践が説かれているが、名誉会長の講義にも、民衆の可能性を開く智慧と慈愛とともに、地涌の使命を呼び覚まし、自他共の幸福の実現のために戦い続ける不惜の精神が満ちあふれでいる。
連載当時、読者から「読むたびに心の境涯が広がることを感じます」「毎回、新たな勇気がわき、立ち上がる決意が込み上げてきます」という声が多数寄せられたが、それは、名誉会長が、一人一人の胸中に太陽を昇らせようとの思いで講義をつづったからにほかならない。
6 自我偈の結びの一節では、「毎自作是念 以何令衆生 得入無上道 速成就仏身(毎に自ら是の念を作す 何を以てか衆生をして 無上道に入り 速かに仏身を成就することを得しめんと)」(法華経四九三ページ)という、仏の願いが記されている。
仏のこの願い、すなわち、人々を幸福にする実践、幸福を阻む魔を破る実践で、仏の戦いに連なる行動を貫いてきたのが、創価学会である。この「毎自作是念」と同じ戦いを起こす人はまた、「仏の使い」「仏子」である。この実践こそ、仏の誓願であり、同時に、仏弟子の決意であることを名誉会長は、強調して本講義を終えている。
どこまでも「民衆の幸福」を目的にしていく菩薩の誓願を貫く生き方を、万人に促し、内発の勇気と、不惜の決意と、開拓の智慧と、無限の希望をもたらす大いなる指標を示すのが、この「法華経方便品・寿量品講義」である。世界中の地涌の勇者によって、本書の精神が、ますます世界に広がり、時代を大きく変革していくことを確信してやまない。
二〇一〇年七月三日