Nichiren・Ikeda
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日蓮大聖人・池田大作
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母
詩歌・贈言「青年の譜」「広宣の詩」(池田大作全集第39巻)
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3
おなじ人間が おなじ子どもが
なぜ相争うのか
何と惨めなる人間の業――
こんな愚かな事業から
人間は そして文明は
いまなお解放されていないのだ
恐ろしく空虚で不正義な
戦争という名の破壊事業
そこには
誇大がかった 偽の崇高な使命もあろう
己が理論の正当性もあろう
体面も 名誉も 意地も共存していよう
母の本能の智性は 叫んでいるに違いない
人間よ
こんな気どりの勲章のために
こんな虚像の名誉のために
こんな犠牲をつくる権力のために
なにゆえ 尊いこの生命を
路傍の屍とするのか と
そして
あの薪と炉のほとりを想い起こして
昔
いにしえ
の母の
詩
うた
をうたってもらいたい と
母は待っている
汚れなき涙を浮かべ
少年の頃の人間として
母の
懐
ふところ
に抱かれ
揺り籠の平和の
夕
ゆうべ
に
母の奏でてくれる魂の歌に
お伽の国を探検しつつ
安らかな寝息をたてて夢みた
あの健康な日々の復活を
4
母は
母は いついつまでも
われわれの忠実な侍者であった
未来からの
語部
かたりべ
であり
名歌手であり 名演奏家であり
強力な支援者であった
母はきっと願っているに違いない
人間が
変に大人ぶらないで
変に傲慢ぶらないで
この自らの純粋な発祥を自覚するならば
地平線上の争いは
いつか絢爛たる
平和の緑につつまれるだろう と
人は
これを感傷として
冷笑することは
容易
たやす
い
そんな弱々しい訴えで
カオスに踏み迷った人間群が
真っ暗な密林から抜け出られるかと
哄笑するかもしれぬ
だが母なる哲人は叫ぶ――
人間よ
静かに深く考えてもらいたい
あなたたちの後ろにも
あなたたちの成長をひたすら願う母がいる
ベトナムのアメリカ兵にも
わが子の生命を強烈に気づかう母がいる
硝煙の廃墟に苦しむ解放軍の背後にも
わが子の無事を祈り悲しむ
傷ましい母が待っているのだ
5
母という慈愛には
言語の桎梏もない
民族の氷壁もない
イデオロギーの相克もない
爽やかな畦道にも似ていようか
人間のただ一つの共通の感情
――それは母のもつ愛だけなのだ
その母の嘆きの悲願の姿に
チラッとでもいい
私たちは敬虔な視線を
刹那に送る余裕をもちたい
その母子の伴奏のなかにのみ
人間という人間の
深い心性が光沢にみがかれ
晴れやかな真実の進歩と
革命への前進があるはずだ
そしてその時
人間は遥かなる
共通の母をもつ兄弟として
対話と信頼に融和させていく
未聞の文化興隆の
崩れざる行進を開始することだろう
母よ
わが母よ
風雪に耐えぬいた可哀想な母
悲しみの合掌を繰り返してきた
いじらしい母
あなたの願いが翼となって
天空に舞いくる日まで
いついつまでも達者に と
私は祈らずにはいられない
6
母よ
そして母よ!
あなたのその慈しむ愛の力を
断じて孤立させてはならない
それはなぜか――
盲愛では不幸の翳りが漂うだろう
故に連帯と目的と理性に裏づけられた
慈母の愛のみが
苦しみ嘆く野蛮の未来に
点睛
てんせい
の光線を入れることができるからだ
その地道なる点火が
ただ一つの道として
生命の尊厳を
この世から真実に防衛できると思うからだ。
打ちひしがれて微笑を失った
失望と
紅
あか
い涙の
あの暗い 女の歴史は
もはや永遠に 太古の化石としたい
今からは
今日からは
あなたの あなた自身の変革による
思想と聡明さをもって
わが家に憧憬の太陽を
狭く薄暗い社会に明朗な歌声を
春を願い待つ地球上に
無類の音楽の光線で 平安の楽符を
伸びのびと奏でてほしいのだ
その逞しくも持続の旋律が
光と響の波として彼方を潤すとき
あなたは蘇生しゆく人間世紀の母として
悠遠に君臨するにちがいない
(1971.10.4)
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