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日蓮大聖人・池田大作

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後記 「池田大作全集」刊行委員会

詩歌・贈言「青年の譜」「広宣の詩」(池田大作全集第39巻)

前後
2  ことに「建設の年」と銘打たれた一九六九年元旦に発表された『建設の譜』は、全会員に、社会に崩れざる平和と幸の都を建設する仏法者の使命の自覚を促した。その共感の波は怒濤のように広がり、各人の生活全般に建設の気概がみなぎっていった。そして「破壊は 一瞬 建設は 死闘」の一節は、社会にあって自己の課題に挑戦する会員の合言葉になった観さえある。
 また、一九七〇年十二月五日に作詩した詩『青年の譜』、翌七一年九月五日、学生部に贈った『革命の河の中で』は、混迷の時代に新たな道を開き、青年の生き方の規範を提示するものとなった。
 一九七〇年といえば、スチュデントパワーの嵐が吹き荒れ、「反戦」や「権力の解体」を叫ぶ学生のデモが街路を埋め、キャンパスではロックアウトが相次いでいたとろである。更に、公害による環境破壊が露呈し、反公害を訴える市民運動も高まりを見せていた。それは、物質的な豊かさの追求がもたらした歪みを是正し、人間が人間らしくあろうとする「渇仰」と「模索」がもたらす”混沌カオス”の時代でもあった。しかし、人間自身の変革の方途を見いだせず、民衆から遊離した急進的な運動は、やがて頓挫をきたしていく。青年の多くは、自分たちの進むべき指標を見失い、無気力に陥ることを余儀なくされていったといってよい。
 そのとき、学会の青年たちは、この『青年の譜』を行動の規範とし、互いに暗唱しあいながら、時代創造への新たな青年の道を切り開いていった。
  われらは遂にこれを見つけた
  本源的人間への挑戦
  これ人間革命の戦いなりと
  いま一人より起ちて
  七百万の{民衆}(とも)となる(『青年の譜』)
3  反戦平和を叫びながら、分裂と抗争を繰り返してきた運動の矛盾。それを回避するために何がなければならないのか――著者は、創価学会の目指す人間復権の運動の在り方を示し、その解決の方途を謳う。
  われらは
  いかなるセクトも必要ない
  偏狭なる党派門閥の障壁を
  勇敢に乗り越えて
  人間として
  赤裸々な人間として
  生き 動き 喜ぶ新社会のために
  君よ 戦え!
  僕も 戦う!
  その ノン・セクトのセクト
  セクトにならない 人間というセクト
  これを 人間党と 共に叫ぼう(『革命の河の中で』)
4  それは階級対立やイデオロギー、国家、民族の壁を越え、「人間」という普遍の共通項に立脚した平和創造の”調和の哲学”を開示したものといえよう。時代を鋭く洞察し、人間の進むべき道を照らし出す著者の詩には、仏法を基調にした哲理と英知のきらめきがある。そして、労苦の人を思いやる慈愛の温もりに満ちている。
  おお 誇り高き
  静寂の朝――
  暁天をあおぎ 広布の便りを携えて走る
  今日も 明日も
  君らこそ 如来の使いの姿であり
  真実の 民衆の王者だ(『無冠の友』)
5  これは聖教新聞の配達員の友に贈った詩の冒頭の一節だが、この詩を目にしたメンバーは、日々の労作業にどれほど大きな誇りを見いだしたことだろうか。暗夜をも一瞬にして光の園に変えてしまうようなロマンの光彩を見る思いがしてならない。
 「詩は歴史を支える地盤である」とはハイデッガ―の言葉だが、これらの詩を心の支えとして、無名の民衆が信仰の歓びを噛みしめながら、創価の歴史を織り成してきたことを思うとまことに感慨深い。世界には、民衆に愛され、親しまれた詩人は多いが、その一つ一つの作品が、単なる慰めにとどまらず、人々の生きる力を育み、時代創造の源泉となってきた詩人は少ない。
 著者の詩は、一本の桜の木や雑草を謳いながらも、それが永遠、常住に連なり、生命の讃歌となり、人間への頒詩しょうしとなっている。この詩に接するとき、人は、自分という微小な存在が人類の平和に繋がり、宇宙に連動する無限大の存在であることを知る。「我即宇宙」「宇宙即我」ともいうべき精神の広大な広がりを感じる。この詩のもつそうした、ダイナミズムは、仏法者として徹して行動に生きる著者の心音が紡ぎ出すヒューマニズムの錦にほかならない。まさに、詩とは境涯の投影であり、人間の胸中に脈打つ念々の発露といえよう。
6  なお、本巻の前半『青年の譜』は、読売新聞社発刊の詩集『青年の譜』に収められた作品を再録し、後半の『広宣の詩』は、聖教新聞社発行の詩と贈言『青年の譜』『青年の詩』などの作品を、四章に再構成したものである。このうち『広宣の詩』では、「青春」の章に著者の若き日の作品を、「希望」の章には高等部、中等部、少年・少女部をはじめ、未来に生きる若い力を称え詠んだ作品を収めた。「歓喜」の章には『人間革命の歌』をはじめ、各部各地の友に贈った歌詞を収録。「同志」の章には『青年よ二十一世紀の広布の山を登れ』のほか、九州、関西、更にアメリカ、ドイツなどの友に贈った長編詩を中心に構成したことを付記しておきたい。
 本書が、現代という精神の荒野を潤す泉として、また、人類の未来を照らし出す光源として、多くの人々に愛読されることを願ってやまない。

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