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日蓮大聖人・池田大作

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4 家族制度の崩壊  

「21世紀への人間と哲学」デルボラフ(池田大作全集第13巻)

前後
13  池田 私が考えるに、男と女が結婚して、夫が夫として、妻が妻として生活していくということは、とうぜんのことながら、どちらにとってもはじめての経験でしょう。そこには、たんに男女間の愛情だけではなく、家庭生活をいとなむうえでの責任がそれぞれに課せられ、それをたがいに助言しあいながら全うしていこうとする、忍耐と思いやりが必要です。それによって困難を乗り越えられることもありますが、ときには、二人だけの努力や知恵ではおよばない場合もありましょう。
 そうしたときに、幾多の経験を積んだ老夫婦の助言は貴重な知恵を授けてくれるはずです。かならずしも、それは、夫あるいは妻の両親でなければならないわけではありませんが、大多数の人にとっては、そのような血のつながりのある先輩が、悩みごとも打ち明けやすいし、真剣に心配もしてくれるでしょう。
 夫婦の離婚は、そのあいだに生まれた子どもにとっては、まさに重大問題です。もし、それが死別といった不可抗力による場合は、子どももそれをやむをえないこととして受けとめ、かえって残された片親に対する同情と愛情を深め、人間的にもいっそう深みを増すことさえ少なくありません。しかし、もし、それが子どもには納得のできない、夫婦相互のわがままなどによる場合は、大人に対する、さらには人間そのものに対する子どもたちの不信をつのらせ、その人格形成に深い傷を残すことになるのではないでしょうか。
14  デルボラフ 両親の離婚が、成長期の子どもにとって、ときとして、どんなにつらい体験であっても、それが唯一の、もっともな解決策である、というような状況もあります。たとえば、夫婦がいつも衝突していて、子どもをおのおの自分の側につけようとしているときには、「悲惨な結末」のほうが「結末なき悲惨」よりもたいていの場合はましなのです。両親が別居したほうが、子どもたちにとっては家庭内の雰囲気もすっきりする場合もあります。
 ただ、その場合、子どもたちは、母方と父方のどちらと一緒に住みたいのか、決めなければなりません。一方に決めれば、他方との接触はときどき訪問するくらいになるわけで、その覚悟はしなければならないでしょう。
15  池田 たしかに、離婚したほうが夫婦にとっても、また子どもにとっても、かえって大きな不幸を小さなものにできる場合もあることは認めます。しかし、夫婦は自分たちのつくった家庭が自分たちだけのものではなく、二人のあいだに生まれた子どもたちにとっては、おそらく自分たちよりもずっと大きな価値をもつ世界であることを考えてあげなければならないし、そのうえでの決断であるべきだと思うのです。
16  エリクソン
 (一九〇二年―九四年)アメリカの精神分析学者。ハーバード大学教授。青年期の課題としての〈アイデンティティ〉論を提起。

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