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日蓮大聖人・池田大作

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4 家族制度の崩壊  

「21世紀への人間と哲学」デルボラフ(池田大作全集第13巻)

前後
12  デルボラフ 日本の場合と同様、近代以前はヨーロッパ諸国でも、たいていは親が縁組みを決め、それも人間的・人格的観点というより、経済的観点が中心でした。つまり、合理性が感情よりも重視されていたわけです。
 今日では、いわゆる「恋愛結婚」があたりまえで、離婚の可能性が高くなったとしても、頭から否定すべきではありません。もちろん、情熱がさめてから相手に失望したり、結婚をあたかも誤りであったかのごとく無効にしようとする若い夫婦がずいぶんおります。おっしゃるとおり、こうした状況は、若い新郎新婦が結婚のまえに、またそのあとでも、祖父母のような経験豊かな年配者に相談したり、助言を受けたりすれば、部分的にさけられるものです。
 ただ、そのような感情的錯覚だけが、いま東西を問わず増大している離婚問題の唯一の原因ではありません。いまの人は百年まえの人よりも寿命が長くなっていますし、教育を受ける機会も増しているため、よりいっそう精神的に成長できる状態にあります。この場合、男女ともに画一的に成長する必要はまったくありません。おのおのの教育程度や興味に応じて個性豊かに成長してよいのです。
 さてここに、いわゆる「中年の危機」という問題がおこってきます。つまり、若くして結婚した夫婦は、子どもが一人前になるころでもまだ比較的若く、しかも残りの人生を自分のためにも使えるため、結婚生活の初期のころにできなかった多くのことを取りもどすことができると考えるわけです。そこで、もっと深く自分をわかってくれる別の相手を見つけるとか、または、もっと満足できる別の仕事を探すかになるわけです。
 ここで、あるオーストリア人の外交官の例をあげますと、彼は大使館に勤務している関係上さまざまな国をまわり、妻や子どもたちに変化に富んだ経験を積ませることができました。ところが、妻のほうが離婚を申し出たのです。理由は、すべてを「夫の目で」見ることが急にいやになり、自分の好きな芸術の道を一人で追求したい、ということでした。
 このような場合、在来の宗教・道徳的価値観がもはや拘束力を失っている以上、教会の禁令も、聖典上のタブーも、離婚を阻止することはできないのです。
13  池田 私が考えるに、男と女が結婚して、夫が夫として、妻が妻として生活していくということは、とうぜんのことながら、どちらにとってもはじめての経験でしょう。そこには、たんに男女間の愛情だけではなく、家庭生活をいとなむうえでの責任がそれぞれに課せられ、それをたがいに助言しあいながら全うしていこうとする、忍耐と思いやりが必要です。それによって困難を乗り越えられることもありますが、ときには、二人だけの努力や知恵ではおよばない場合もありましょう。
 そうしたときに、幾多の経験を積んだ老夫婦の助言は貴重な知恵を授けてくれるはずです。かならずしも、それは、夫あるいは妻の両親でなければならないわけではありませんが、大多数の人にとっては、そのような血のつながりのある先輩が、悩みごとも打ち明けやすいし、真剣に心配もしてくれるでしょう。
 夫婦の離婚は、そのあいだに生まれた子どもにとっては、まさに重大問題です。もし、それが死別といった不可抗力による場合は、子どももそれをやむをえないこととして受けとめ、かえって残された片親に対する同情と愛情を深め、人間的にもいっそう深みを増すことさえ少なくありません。しかし、もし、それが子どもには納得のできない、夫婦相互のわがままなどによる場合は、大人に対する、さらには人間そのものに対する子どもたちの不信をつのらせ、その人格形成に深い傷を残すことになるのではないでしょうか。
14  デルボラフ 両親の離婚が、成長期の子どもにとって、ときとして、どんなにつらい体験であっても、それが唯一の、もっともな解決策である、というような状況もあります。たとえば、夫婦がいつも衝突していて、子どもをおのおの自分の側につけようとしているときには、「悲惨な結末」のほうが「結末なき悲惨」よりもたいていの場合はましなのです。両親が別居したほうが、子どもたちにとっては家庭内の雰囲気もすっきりする場合もあります。
 ただ、その場合、子どもたちは、母方と父方のどちらと一緒に住みたいのか、決めなければなりません。一方に決めれば、他方との接触はときどき訪問するくらいになるわけで、その覚悟はしなければならないでしょう。
15  池田 たしかに、離婚したほうが夫婦にとっても、また子どもにとっても、かえって大きな不幸を小さなものにできる場合もあることは認めます。しかし、夫婦は自分たちのつくった家庭が自分たちだけのものではなく、二人のあいだに生まれた子どもたちにとっては、おそらく自分たちよりもずっと大きな価値をもつ世界であることを考えてあげなければならないし、そのうえでの決断であるべきだと思うのです。
16  エリクソン
 (一九〇二年―九四年)アメリカの精神分析学者。ハーバード大学教授。青年期の課題としての〈アイデンティティ〉論を提起。

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