Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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フィリピンの心 寛容の大地に開く友情の花

1998.2.15 随筆 新・人間革命1 (池田大作全集第129巻)

前後
1  冬の東京から一転、常夏のフィリピン・マニラへ。
 太陽の光が、身に染みて明るかった。
 世界的に有名なマニラ湾の夕日は、さすが世界一の荘厳さを見せてくれた。
 5年ぶりの訪問である。
 マニラの街は整備され、景観は一段と美しさを増していた。
 フィリピンに、あらゆる次元で、勝利と栄光の自信と誇りが、満ち満ちていた。実に目覚ましい発展である。
2  二月九日、私は、独立の″魂の父″ホセ・リサール博士の理念を継承するリサール協会から、「リサール国際平和賞」を頂戴した。
 この平和賞は、フィリピン独立百周年を記念して創設されたもので、私は、その第一回の受賞者の栄を賜った。
 フィリピン国際会議場での授賞式には、大変にお忙しいなか、ラモス大統領も駆けつけ、祝福してくださった。まことに感謝に堪えない。
 また、わが師である戸田先生のお誕生日にあたる11日には、マニラ市立大学から、栄えある名誉人文学博士号をいただいた。
 同大学は、アジアで初めて、高等教育の授業料無償化の道を開いた、″民衆の大学″として権威もあり、有名である。
 先生は「雲の井に 月こそ見んと 願いてし アジアの民に 日(ひかり)をぞ送らん」と詠まれ、アジアの同胞の幸福を願い続けてこられた。
 戸田先生は、この栄誉を、心からお喜びくださっているにちがいない。
 先生のお誕生日を祝うかのように、この夜、美事な、おとぎの国を思わせる満月が微笑んでいた。
3  戦時中の日本軍の蛮行による、フィリピンの犠牲者は、あまりにも多く、傷も深かった。
 その狂気の嵐のなかで、誉れある、わが創価の牧口初代会長も、二代の戸田会長も、敢然と軍部権力と戦った。
 なんと誇り高き師匠であろうか。
 なんと偉大な、殉教の師であろうか。
 その源流をもつSGIに対する、フィリピンの方々の信頼は厚く、また、温かく見守ってくださる。この深い洞察に、私は敬意を表したい。
 十一日の夕刻、リサール協会は、スペインのカルロス国王に、「リサール大十字勲章」をお贈りしている。
 私も、同勲章の受賞者として、また、初の「リサール国際平和賞」の受賞者として、この式典に出席し、慶祝させていただいた。
 国王は、独裁者フランコ総統の時代に、二十余年の忍従の歳月を過ごされている。そして、独裁が崩壊するや、民主国家の建設に、さっそうと指揮をとられた方である。
 フィリピンには、スペインの植民地として服従を強いられてきた、悲しい歴史がある。ホセ・リサール博士もスペイン軍によって処刑された。
 ともすれば、過去の歴史から、その国を憎悪し続けるのが、人間の常であろう。
 しかし、「国家」という枠をもって人間をとらえ、「過去」に縛られ、「反目」と「憎悪」を継承することを、リサール協会は拒んだ。国王の偉大なる功績を正しく評価し、顕彰したのである。
 私は、ここにも、フィリピンの方々の鋭い洞察眼と「友愛」と「寛容」の心を見る思いがする。
4  二十一世紀を「平和の世紀」とするためには、「寛容」の精神に立つことが不可欠である。
 しかし、「妥協」と「寛容」とは異なる。
 「妥協」は、保身と利害と精神の脆弱さの産物にすぎない。その帰結は、悪の容認であり、堕落である。
 だが、「寛容」は、善悪を見極める鋭い洞察眼に裏打ちされた、強き信念の所産である。また、苦難のなかで磨き培われた、まことの人間性の輝きであり、その光が友情を育む。
 広宣流布の大信念に生きるわれらの胸には、悠々たる寛容の大地が広がる。ゆえに、創価の友のいくところ、笑顔と対話の友情の花が咲き薫る。
 フィリピンの友の友情と未来を称えるかのように、国花のサンパギタ(マツリカ)の白い花が、太陽に微笑んでいた。

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