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日蓮大聖人・池田大作

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1 文化の定義と二つの文化発祥説  

「東洋の智慧を語る」季羡林/蒋忠新(池田大作全集第111巻)

前後
1  人間としての証
 池田 東と西の自然観の相違について論を進めてきました。ここでは、東洋と西洋の比較文化論を語りあいたいと思います。
 動物は、行動の様式が「本能」によって決定されています。これに対し、人間は、どのような行動をするかの選択は、各人の主体的な判断にゆだねられています。
 行動の「主体性」「自由性」こそ人間の特質と言えるでしょう。人間が「本能」のかわりに拠りどころとする行動様式の体系ーーそれが「文化」です。
 もちろん、人間には、動物としての側面もあります。しかし、人間は、長い進化の過程で、他の動物とは異なる地平に”跳躍”をとげました。まさに、そのときに「人間」が誕生したのです。
 喜怒哀楽の感情は、動物にもあります。しかし、最も進歩した動物でも、自己を内省し、現在の自己を乗り越えて、新たな自己を築こうという能動性までは、もちえません。ここに、前章で話しあった倫理性の次元が開けてきます。
 人間と動物には、明らかな違いがあります。私は、「文化」をもつことこそ、人間の人間たる証であると考えます。
 では、「文化」とはいったい、どのように定義しうるのか。文化人類学者のエドワード・タイラー以来、多くの試みがあります。
 タイラーは言っています。
 「文化あるいは文明とは、知識・信仰・芸術・法律・習慣その他、社会の一員としての人の得る能力と習慣とを含む複雑な全体である」(『原始文化』比屋根安定訳、誠信書房)
 タイラーは「文化または文明」と言っているように、この二つの概念に根本的な区別をもうけてはいません。季博士は「文化」をどのように考えておられますか。
2  「文化」は人類が創造した複合体
  全世界の学者が文化に与える定義は五百種類を越えると言われています。これでは定義がないと言うにひとしくなりますが。
 私の浅はかな理解では、人類が精神、物質の両方面において創造した一切の優秀なものを、「文化」と考えています。
 池田 「文化」の本質を的確にとらえた言葉だと思います。
 「文化」は人類が創造した複合体です。習慣、法律、芸術、道徳、科学、宗教などは、ともに高度に発達した複合体をなしているのです。
  季先生の「文化」に対する定義は、たしかに、全体から「文化」の本質をとらえたものだと思います。私は、池田先生のこの定義に対する評価に全面的に賛成です。
 この定義によると、文化とは人類社会の物質的財産と精神的財産の総和であると言えるのではないかと思います。この財産とは、人類が智慧を働かせ、労働によってたえず創造され、蓄積されてきたものなのです。

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