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日蓮大聖人・池田大作

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4 仏教学への学術貢献  

「東洋の智慧を語る」季羡林/蒋忠新(池田大作全集第111巻)

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1  『法華経』写本の研究
 池田 『法華経』の研究への学術的貢献のために、私どもは、東洋哲学研究所に編集を委託し『法華経』写本の出版を続けております。
 季先生、蒋先生にも、たいへんにど尽力していただいております。
 季先生には『旅順本』(『旅順博物館所蔵梵文法華経断簡ーー写真版およびローマ字版』)に巻頭言を寄せていただきました。
  旅順写本は断簡ですが、重要な意味をもっています。数多い『法華経』写本のなかでも初期に属するものだからです。ですから、創価学会によるこの写本出版はきわめて重要な意義を有しております。
 池田 ありがとうございます。蒋先生には『旅順本』のローマ字化とともに、序言の中で詳細な解説をしていただきました。
  創価学会が『法華経』写本の出版に関する計画を明らかにしたというととは、新たな『法華経』研究の上げ潮が実際にすでに始まったということになります。
 十九世紀中葉から現在にいたるまで、世界各国の学者が『法華経』写本の研究を行い、ちょうど一世紀半が経過しました。
 出版されたこの『旅順本』は、間違いなく『法華経』に関心を寄せるすべての学者たちから重要視されることでしょう。
 なぜなら、今まで『旅順本』の中で公表されているような、現存する最古の梵文『法華経』写本を目にすることは(一部をのぞき)なかったからです。
 『旅順本』の各断簡は、鳩摩羅什が『法華経』を漢訳するさいに使用した梵語の原本と同年代のものであることが証明可能なのです。
 池田 『法華経』写本の出版シリーズはこれまで次のようなものを刊行してまいりました。
 一 『旅順博物館所蔵梵文法華経断簡ーー写真版及びローマ字版』(一九九七年)
 二ー一 『ネパール国立公文書館所蔵梵文法華経写本(No.4-21)写真版』(一九九八年)
 二ー二 『ネパール国立公文書館所蔵梵文法華経写本(No.4-21)ローマ字版1』(二〇〇一年。=二ー三 同『ローマ字版2』は、二〇〇四年刊行)
 三 『カーダリク(中国新彊ウイグル自治区)出土梵文法華経写本断簡』(二〇〇〇年)
 四 『ケンブリッジ大学図書館所蔵梵文法華経写本(Add. 1682および Add. 1683)ー写真版』(二〇〇二年)
 さらに今後、次のものを刊行する計画です。
 五 「東京大学総合図書館所蔵梵文法華経写本(No.414)ーローマ字版」(=二〇〇三年)
 六 「ロシア科学アカデミー東洋学研究所サンクトペテルブルク支部所蔵西夏せいか文「妙法蓮華経」ー写真版(鳩摩羅什訳対照)」(=2005年)
 七 中国チベット自治区の「梵文法華経写本ーローマ字版」(=シリーズ七は、上記の写本に代わって、二〇〇七年に『英国・アイルランド王立アジア協会所蔵梵文法華経写本〈No.6〉ーローマ字版』を刊行)
2  「法華経学」の構築
  学術的に貴重な『法華経』写本を世に出すことは、きわめて深い意義をもちます。世界の「法華経学」への重要な貢献です。必ずや多くの研究者から熱烈な歓迎を受けることでしょう。
 未来を展望するにあたり、私が固く信じていることがあります。
 『法華経』の中には、「平等の概念」「慈悲の精神」「統一思想」が包含され、深遠な智慧があふれでいます。これらによって、『法華経』は二千年余の長きにわたって広大な地域で多大な影響力をもってきました。そして、今日も・なお、『法華経』は多数の信仰者と多数の研究者をひきつけています。
 そして、前にも申し上げましたが、とりわけSGIは『法華経』の精神を、現代の特徴をふまえ、人民の願いにかなった形で明らかにしました。
 また、揺るぎない確信と驚嘆すべき実践で全世界の人民の平和、文化、および教育事業のために傑出した貢献をしています。
 この事実によって、『法華経』は二十一世紀において間違いなく全世界人民のなかに広く、深く流布していくであろうーー私は、このように確信しています。
 そして、新たな『法華経』研究の上げ潮も、必ず二十一世紀においてその出現をみるでしょう。
 池田 民衆の幸福のために、人類の明るい未来のために、さらに『法華経』を深く、また広く探究していきたいと考えています。
 二十一世紀の『法華経』研究が「法華経学」として、人類の叡智を結集した総合的学問となることを期待しています
  そうです。東洋思想こそが人類を救うことができるのですから!
 池田 これからも両先生には、ますます、ご活躍いただき、人類の未来をともどもに切り開いていただければ、と願っています。

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