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日蓮大聖人・池田大作

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5 天台大師の登場  

「東洋の智慧を語る」季羡林/蒋忠新(池田大作全集第111巻)

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1  『法華経』を宝典に
 池田 『法華経』は、思想的な面でも大いに注目されたということですね。
 早くから、そうそうたる仏教学者たちが、『法華経』の注釈をしていますね。現存する最古のものは、鳩摩羅什の弟子の道生どうしょうによる『妙法蓮華経疏』ですね。
 さらに光宅寺の法雲、吉蔵、慈恩大師基、そして白眉は天台大師です。
  概括的な表現をすれば、惰、唐以前において、『法華経』は中国仏教史の翻訳と講釈の段階にありました。
 この段階において、中国仏教には、学派あるいは学説しか存在せず、宗派はまだ出現していません。
 『法華経』の学説を中国に広めるうえで最大の貢献をしたのは、間違いなく鳩摩羅什でした。
 惰、唐から、中国仏教は宗派の創建時代に入りました。この段階において、『法華経』を普及するためにとくに功あったのが、天台宗の創始者である天台大師です。
 天台宗は『法華経』を宝典とし、法華宗とも呼ばれています。
2  「一乗思想」の明確化
 池田 天台大師は『法華経』にもとづいて『法華玄義』『法華文句』そして『摩訶止観』の「天台三大部」を世に問うていますね。
 なぜ、天台大師は画期的な貢献ができたのでしょうか。
  それについては、おそらく多くの原因があったと思います。
 私個人の浅見によれば、その根本的な原因は、彼の教義に対して、かたくなな教条主義的態度をとることなく、『法華経』の教義の精髄を当時の中国の国情と結びつけ、『法華経』の教義に対して正しく明快で、さらに統一を必要としていた当時の中国社会の国情にかなった解釈をしたところにあります。
 『法華経』の統一思想は、中国伝統文化における「大一統」(統一をとうとぶ)という概念を強めました。その影響の深遠さは今もって、推し量ることができず、とくに注目すべき点であります。
 池田 『法華経』の「一乗思想」を明確にしたことが、大きな要因だったのですね
 すべての人が成仏できると説く「一乗思想」には、普遍性と平等性があります。それが、長い小国分裂の時代を超えて、隋・唐という大統一国家にいたった時期に、時代の精神として受け入れられた。これは、現代にも通じる、まことに重要な観点です。

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