Nichiren・Ikeda
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日蓮大聖人・池田大作
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まえがき
「21世紀への母と子を語る」(池田大作全集第62巻)
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1
フランスのパリ郊外の美しきビエーブルの森に、「ヴィクトル・ユゴー文学記念館」があります。
文豪ユゴーゆかりの「ロシュの館」に、私たちの文化貢献の願いを込めて、一九九一年、開設したものです。
記念館には、ユゴーの直筆で丹念に直しが入れられた、『レ・ミゼラブル』の校正刷り(八巻セット)も展示されています。世界の宝ともいうべき、大変に貴重なものです。
この不朽の名作をユゴーが執筆したのは、ナポレオン三世の独裁と対決して、ガーンジー島で亡命闘争を繰り広げている最中でありました。
その島での拠点であった「オートヴィル・ハウス」に、ユゴーは、毎年暮れになると、恵まれない子どもたちを招待して、パーティーを開くことを、恒例としていました。
2
今から百三十年前、一八六九年にも、四十人の子どもたちを招いて、ともに楽しい思い出をつくっています。
そのとき、ユゴーは、同席の大人たちに向かって、次のようにスピーチしました。
「子どもの本当の名前は何か、皆さんはご存じだろうか。それは『未来』である。
子どもは、未来の収穫の畑である。その子どもの心に、種を蒔こう。正義を与え、歓喜を与えてあげよう。
子どもを育てながら、我々は『未来』を育てているのである。『育てる』という言葉は、何と深い意味を持っていることだろうか。
我々の目の前にいる子どもたちを、教育していこう。そうすれば、新しき世紀は赫々と光り輝くであろう。
子どもの中に燃える炎こそ、未来の太陽なのである」(「追放」神津道一訳、『ユーゴー全集』9、ユーゴー全集刊行会、参照)
3
「子育て」といい「教育」といい、“未来からの使者”である子どもとかかわっていくことは、なんと壮大なロマンでありましょうか。
地味なようであって、これほど創造性に満ち、永遠性へと連なりゆく、尊い聖業はありません。
その偉大な労作業に携わる方々が、より大きな誇りと希望と安心をもって、取り組んでいってもらいたい。母と子が幸福の大道をともに歩める世紀を、切り拓いていきたい――これが、私の心からの願いであります。
4
家庭のあり方、とくに、お母さんの存在は、子どもに大きな影響を与えます。
太陽のように明るいお母さんのもとでは、明るく伸び伸びとした子が育つことでしょう。
何があっても負けないお母さんのもとでは、はつらつとした強い子が育つことでしょう。
「不登校」「家庭内暴力」「病気」「事故」「いじめ」……尽きない悩みと不安のなかで、断じて、へこたれず、大切な宝である子どもたちを真剣に育んでおられるお母さま方を、私は最大に尊敬します。
5
「子どもを育てること」は、人類始まって以来、連綿と続いてきた“最も古い”営みであり、同時に、一人ひとりにとっては、一切が初めて経験する“常に新しい”体験であります。
だからこそ、先輩たちが、それぞれの経験を、率直に語り合っていくことは、これからの若い方々が、自信や勇気や智慧をわき出していくための“応援歌”となるのではないでしょうか。
そういう思いから、創価学会婦人部の代表の方々と、具体的に対話した内容をまとめたのが、本書です。(「灯台」〈第三文明社〉1998年6月号~1999年1月号掲載分を収録)
「成績と進路」「食事の工夫」「多忙な時の接し方」「子どもの叱り方」「早期教育」「テレビやゲームへの対応」など、話題は実に多岐にわたりました。
6
私たち夫婦を、家族のようにつつんでくだっさった鄧穎超さん(周恩来総理夫人)は、中国の青少年を、皆、わが子のごとく、慈しんでおられました。
「子どもに目を向けることは、未来に目を向けることです。それでこそ、私たちの事業は、子々孫々まで伝わっていくのです」と。
7
さまざまな悩みと闘いながら、前を向いて、希望に燃えて生き抜いていく、けなげなお母さん!
人のため、社会のために奔走し、なかなか、わが家を顧みる時間がなくとも、その尊貴な後ろ姿で、皆を力強く引っ張っている、たくましいお母さん!
人がなんと言おうと、子どもをとことん信じ、守り、太陽のように照らしていく、優しいお母さん!
どんなに、よその家の子が良く見えようと、「うちは、うちよ」と笑いとばす、朗らかなお母さん!
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二十一世紀へ前進されゆく、すべての偉大なお母さま方に、このささやかな一書を捧げます。
一九九九年六月六日 牧口先生の生誕記念日に 池田大作
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