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日蓮大聖人・池田大作

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ある文豪の生命 ――ドストエフスキー――

詩歌・贈言「青年の譜」「広宣の詩」(池田大作全集第39巻)

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 神への叛逆者
 反動の天才
 国民精神の鼓吹者
 遥かなる未来への啓示者
  
 かれに投げかけられた名称は無数だ
 絶えざる褒貶にさらされながら
 かれはつねに 悲しげにも強く
 自身として在った
  
 美しき青春を雪の嵐に狂わせた
 シベリアへの処刑
 強靭な怒りに駆り立てる
 ペテルブルグの白夜
 病魔に苦しみ困窮に悩んだ
 波乱の生活
  
 かれは
 いかなるこの世の悪戦にも屈しなかった
 それらのすべてを 貴重なセメントとして
 あの自己自身の精神を燃焼させてやまない
 白熱の燦々たる世界を構築したのだ
  
 かれは芸術至上主義者ではない
 サロンの貴族主義者ではない
 甘美な感傷に耽る余裕はない
  
 時間と債鬼に追われて
 かれは何かを見つめながら ただ書いた
 明日のパンを購うために
 無間の負債を還すために
 ゆとりある推敲の{寸暇}(いとま)も無く――
 しかしまた――限りなき情熱に動かされて
 空中を滑行するように ただ書き続けた
  
 かれは民衆の破れた外套の下から現われ
 病者と 犯罪者と 貧乏人の
 塵埃と悪臭と喧騒とに充ちた
 人生の真っ只中に 全存在をささげて
 静かに ますます充実した姿を没するのだ
 その余影で限りなく後世を震揺させながら
 容赦なく没するのだ
  (1971.12)

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