Nichiren・Ikeda
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古代史のナゾ
「古典を語る」根本誠(池田大作全集第16巻)
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1 池田 先日、保存調査も行われたようですが、あの壁画古墳というのは、これまでは記録にもなかった。同種のものが、高句麗時代のものとして、朝鮮半島にはいくつか出土していましたが。
根本 原始的な装飾古墳とは比較にならない芸術性の高いもので、高松塚古墳は、大陸や高句麗の影響というより、もっと身近、な関係を想定しうるわけですね。
池田 埋葬された人物は、記紀(きき)、万葉時代の人物、それも皇族ではないかと推測されている。
根本 そこで、天皇家の祖先は外来の――大陸または朝鮮系統ではないかとも考えられ、江上波夫氏の「騎馬民族国家説」の有力な証拠ともなるのではないか、と言われております。
池田 シュリーマンのトロイ遺跡発掘という有名な例もあります。日本古代史の研究のうえで、もし江上説が実証されたら、たいへんなことですね。
根本 邪馬台国論争とか、邪馬台国東遷説とか、――また、記紀の記述から、天照大神(アマテラスオオミカミ)は卑弥呼であるとか、神武天皇実在論とか、なかにはセンセーショナルなものまで含めて、いくつも仮説が提出されている。学問的にはともかく、古代史のナゾをめぐる話題は、つきないものがありますね。
話が、横道に外れたようです。本道にもどりましよう。(笑い)
池田 そうですね。神代では、海幸・山幸の話もおもしろい。中.下巻では、沙本毘売の物語(『垂仁記』)、目弱王の乱の物語(『安康記』)等が、私には印象的です。いずれも、ぬきさしならない状況における人間の真実が、簡潔な筆致で刻印され、緊密な構成で、優れた短編になっています。しかしやはり、魅力ある人間像は、ヤマトタケルだと思います。歌謡も物語によく調和していますね。
根本 同じ題材でも、『日本書紀』のほうは精彩に欠けています。