Nichiren・Ikeda
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文明社会の論理の欠陥
「古典を語る」根本誠(池田大作全集第16巻)
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1 根本 今年(1974年)はどうもインフレと石油危機で、暗い感じの年明けになりましたね。
池田 晴れやかな日和が続いていても、石油という寒波に脅かされて、人の心はどこか重苦しい。この天候自体が、旱魃や火災の頻発につながるのではないかという心配もある。よくよく人間は、自然の波動に、一喜一憂しなければならない存在のようです。
根本 新春の雑誌に寄稿された随想のなかで、石油危機についての提言をされていましたね。鋭い、斬新な着想で、非常に感銘深く読みました。
池田 それはどうも、お目に留めていただき、恐縮です。
根本 今回の石油危機も深刻だが、有限な資源を、国土という境界によって独占するという論理をそのままにしておいてよいのか。
その発想の次元を変えないかぎり、人類の共存共栄は不可能ではないか。――この指摘は、まさに文明社会の論理の欠陥をついたものだと思います。たしかに、自然や資源についての考え方を転換させなければならない、という思いを新たにしました。
池田 私は格別、真新しい考えを述べたわけではありません。ただ、人間の発想というものは、なかな 従来の経験や、既成概念のワクから、脱けがたいものなのでしょう。
根本 それにしても、この不安な状態は早く打開されないと……。
『大予言』や『日本沈没』などが、たいへんな評判になったり、例のコホーテク彗星などが、騒がれたりしていますが。
池田 あの彗星は、この五月ごろまで見えるそうですね。
古来から、彗星が出現すると大きな異変があると言われている。平安時代には、とくに陰陽道の影響もあったでしょうが、たとえば、寛仁二年(1018年)の大彗星は、その後の政変、兵乱、疫病などの前兆であったとされたという。
根本 紫式部の仕えた中宮・彰子の父、藤原道長が出家したのも、そのころですね。何か騒然たる世の中という点では、似たものがあります。
池田 自然のリズムの変化、変調が、世情や人心に反映するのでしょう。ともかく、すべての面で、今年は明るい展望が閉ざされ、厳しい状況です。だが、こうした紛然たる混沌のときこそ、重みに耐え、活路を開いていく、人間の真実の力が試されるのだと考えたいですね。