Nichiren・Ikeda
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日蓮大聖人・池田大作
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第4章 心と心をつなぐ
「21世紀への母と子を語る」(池田大作全集第62巻)
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子ども同士のヨコのつながりが重要
原田
私の子育てを振り返りますと、ようやく子どもを出産できた時は本当にうれしかったのです。うれしくて、ずっと子どものそばにいたくなってしまって、だれにも触らせたくない、と。(笑い)
「鬼子母神」とでも言うのでしょうか(笑い)、そんな自分に、我ながら、戸惑いました。
そうした時、子どもといっしょに池田先生にお会いする機会があったのです。
先生は「あなたは、そうやって子どもを抱いているより、学校で子どもたちと笑いさざめいている姿のほうが似合うよ」と言われました。先生のその一言で、「そうだ。感情に流されて、大切な使命を忘れてはいけない!」と我に返り、ひどく反省しました。
池田
素直な告白ですね。(笑い)
子どもがある程度、大きくなったら、親の仕事は、子どもの自主性を見守ることにあります。
子どもは五歳くらいまでは、本当にかわいいものです。しかし、それからは次第に親から離れ、自立していく。もちろん、親の支えは、それからも必要ですが、かかわり方を変えていく必要があるのです。
特に小学校入学からは、人格をつくり上げていく時期に入ります。いわば「子ども」を「人間」にしていくと言ってもいいだろうか。
原田
私も子育ての最中、先生から、「小学校に入ったら、お母さんがいろいろなことを子どもに教えるのだ。お母さんの出番だよ」とおっしゃっていただきました。大変ありがとうございます。
思春期や、それを越える年齢になると、もう口で、ああしなさい、こうしなさいとは言えなくなりますね。子どもに本当に言いたいことほど、口に出して言ってはいけないものです。
とにかく、がまんして「祈る」ことしかできない、という時期もありました。
池田
子どもは、母の祈りを、必ず心の奥底で、生命で受け止めている。
人生の道は、最終的には自分で見つけるしかない。親が用意するものではありません。
子どもを育てていく過程では、時には、子どもが自分のもとから離れていくような淋しい気持ちになることもあるでしょうが、親は、それを乗り越えなければならない。そうでないと、子どもの成長を妨げたり、自立できないマザコンにしてしまいます。
子どもが大きくなると、親との関係より、友だちとの関係で成長していく場合が多いものです。
牧口先生はこう言っている。
「教師と生徒との交際間におけるよりは、むしろ生徒相互間における影響によって教育の理想を満足させる」(「単級教授の研究」牧口常三郎全集第七巻所収、趣意)
つまり、教師と生徒というタテの関係よりも、生徒同士、つまり友だちの関係によって、教育の理想を実現するのだ、と。
同じく、親と子のタテの関係も大事だが、子ども同士のヨコのつながりが、子どもの成長にとっては大変、重要なのです。
笠貫
子どもの友人関係は大事ですね。親は「よい友だちと付き合ってほしい」と願うものですが、「悪い友だちと付き合っているのか心配」と言う人もいます。
池田
親は、子ども同士の関係に容易に入ってはいけないものです。
子どもの友だちの悪口を言うことは、慎まなければならない。「あんな悪い子と付き合ってはいけない」などと言うと、子どもは反発する。
子どもは子どもで、お互いのよさを見つけて付き合っている。それが分からないで、友だちの批判をすると、よけい子どもは心を閉ざしてしまいます。
もちろん、よい友だちと付き合ってほしいと願うのは率直な心でしょう。しかし、親が子どもの友人を決められるわけではない。
実際の社会にはいろんな人間がいます。
子どもの時に、いろんなタイプの人間と触れ合っていないと、免疫のない、もろい人間になってしまう場合だってある。
大事なのは、子ども自身に、善悪を判断する力を、しっかりとつけさせることです。
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教師と生徒の信頼関係を大切に
笠貫
よく分かりました。
ところで今は、学校の先生との関係がうまくいかず、悩んでいる親も多いようです。
原田
子どもに教師の悪口を言うことは避けたほうがいいと思います。新学期になって、「今回の先生は、当たらなかったね」(笑い)などと、子どもに言うのは、本当にいけませんね。
池田
教育の基本は、教師と生徒の信頼関係ですから、それを親が壊してはならない。
できるだけ、よいところを見て、言っていくようにしたほうがプラスです。
もし、教師の行動で納得できないことや、おかしいことがあったら、率直に対話していくほうが価値的ではないだろうか。
原田
今、親と学校のよりよいあり方が模索されており、授業参観ではなく、父母が実際に参加する“授業参加”に取り組み始めた学校もあります。
特に小学生の場合は、子どもの教育を学校任せにするのではなく、できるかぎり積極的に親もかかわっていくべきだと思います。
池田
牧口先生も同じことを言っているね。
「学校は他人のものではなくて、我がものだという自覚を以て無益な遠慮は為ぬことである」(『創価教育学体系・第三巻』「第四編 教育改造論」牧口常三郎全集第六巻所収)と。
これは、国や政治家などに握られ、国家主義に子どもを駆り立てていく教育を、教師と父母の手に取り戻そうとする牧口先生の信念が込められている。
「子どもの幸福」を最も願う者が、力を合わせて、よりよい教育をつくりあげていくべきだ、と。その当事者が親であり、教師である。
ですから、教師や親が責任をなすりつけ合うところからは何も生まれない。
教師は、生徒をわが子と思い、情熱と確信をもって育てていく。親は親で、すべて学校任せにしてはいけない。
「子どもの幸福」という一点を見つめて、協力関係を培っていくのが正しい道だと思います。
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だれにも大切な使命がある
原田
教師をやめてから一〇年以上、過ぎましたが、生徒が成長していく姿を見るのは、本当にうれしいものです。
ついこの間まで高校生だった人たちが、青年になり、親になり、いつしか社会の第一線で立派に活躍している。まぶしいくらいです。その成長ぶりに驚かされます。
池田
親や教師からすると、子どもが大きくなるのは、本当に“あっという間”です。
「また後で」「いつの日か」と思っているうちに、子どもは大人になってしまう。その間に、どれだけ子どもに、かかわれるかが勝負です。
笠貫
池田先生が高等部員に贈られた「青春対話」によって、悩みから立ち上がった青少年の感動のドラマを各地で聞くことがあります。
入会まもない、ある婦人部員の方の体験をうかがいましたので、紹介させていただきます。
入会前、この方の息子さんは、高校に入ってからいじめにあい、学校に行けなくなりました。自分の気持ちのやり場のない息子さんは、やがて家庭内で暴力を振るい始めました。地獄のような辛い日々が続きましたが、それが一変したのは、ある学会員の人と、息子さんとの出会いでした。
ある日、息子さんはこの学会員から一冊の本を借りてきました。表紙には『青春対話Ⅰ』と書いてありました。息子さんは、何回も何回も、何十回も繰り返し、むさぼるように、この本を読んだといいます。突然、お母さんにこう聞いてきました。
「池田大作って、どんな人?」
やがて、息子さんのたっての願いと強い意志で、母子ともに入会。青年部の献身的な励ましによって、息子さんは変わっていきます。何といっても目の輝きが違ってきたのです。お母さんは「奇跡が起こったとしか言いようがない」と思ったそうです。
ある時、息子さんは言いました。
「お母さん、僕には使命があるんだ!」
大学進学を目指して勉強を始め、大検に合格。この春、晴れて希望の大学に入学されたそうです。
池田
これほど、うれしいことはありません。
これからも、人生の勝利者を目指して、がんばってほしい。「青春対話」を始めたのも、そうした願いからです。私は、こうした青年たちのことを一生涯、祈り続けます。
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「育つ」ことが「恩に報いる」こと
原田
池田先生に育てられ、先生との出会いを原点として成長していった人が、どれほどたくさんおられるか、計り知れません。
笠貫
私は、この連載てい談に登場した高柳婦人部長や、長野の森本さん、神奈川の大曽根さんたちと、同じ時期に女子学生部でした。
特別な力もない、平凡な私たちでしたが、先生から、生きた哲学を教えていただき、幾たびも励ましを受け、いくつもの「金の思い出」をつくっていただきました。先生の慈愛あふれる激励があったからこそ、ここまで進んでこられたとの感謝の思いでいっぱいです。
池田
学会の世界では、自分が命を注いで育てた人の成長を見るのは、何よりもうれしいものだね。その姿だけで、苦労は十分、報われる。第一線の方々のご苦労は、私には、よく分かります。
私自身、戸田先生の大恩に報いるために、「自分が成長しよう!」「自分が力をつけ、先生の偉大さを世界に宣揚しよう!」という決意で進んできました。
戸田先生は、今も私の中に生きている。戸田先生の慈愛は、今も私の五体をかけめぐっている。ありがたい師匠です。
「育つ」ことが「恩に報いる」ことです。
次元は違うかもしれないが、子どもが育ち、伸びゆくその姿自体が、親に対する報恩の姿だと、私は感じるのです。
原田
関西学園の卒業生の一人が、千葉で婦人部のリーダーを務めています。三歳のお子さんをかかえて、多忙な毎日なので、「子育ては、大変でしょう?」と聞きました。すると、返ってきたのは意外にも、こういう答えでした。
「いいえ、子どもが、こんなにも、毎日毎日、親を楽しませてくれるとは思いもよりませんでした」と、弾んだ声で言うのです。
実は彼女は、早くにお母さんを亡くしているので、自分は親孝行できなかったと残念に思っていたそうです。でも、子どもを育ててみて、子どもがどれだけ親に喜びを与えてくれるのかを知り、「私もこうして少しは親孝行したんだなあ」と、大変うれしく思ったそうです。
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池田
「子どもがいるから大変だ」と考えるか、「子どものおかげでいろんな経験ができる」ととらえるか、心一つで変わる。
「苦しい気持ち」「辛い気持ち」ばかりで、子どもに触れ合っていれば、それはそのまま子どもに伝わってしまう。子どもがかわいそうだし、自分も損です。
「この子を立派に育ててみせる!」という使命感、「この子のおかげで、自分も成長できる!」という感謝の心が、「親子の触れ合い」をより豊かに、より喜び多きものにしていくのです。
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