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日蓮大聖人・池田大作

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2 教育交流は世界平和の基盤  

「人間と文化の虹の架け橋」趙文富(池田大作全集第112巻)

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7  人類の幸福と平和のために
 私も、済州大学を訪問させていただいた時(一九九九年五月)のことが、昨日のことのように思い起こされます。繰り返し申し上げますが、趙博士は、次のように、おっしゃいました。
 「大学というのは、人類共同体を実現するための精神を養う重要な場です。『哲学の英知』も『最先端技術の開発』も、結局は『人類の幸福と平和のための手段』にすぎません。しかし、大学には、このような人類の志向する幸福と平和をつねに追求しなければならない使命がある」と。
 深い感動を覚えました。
 また、貴大学が「学生第ごの大学運営を心がけ、大学の図書館は、試験期間ともなれば二十四時間開放されていることなどもうかがいました。当時総長であられた趙博士みずから、学生の輪に飛び込んで直に学生と接しておられる姿も、目の当たりにしました。
 日本の大学にはない、独自の「学びの環境」が整っていると実感しました。
  日本の学生が韓国留学を志望するとき、多くの場合がソウルの有名大学を目指すでしょう。
 しかし、彼らがどういう目的で韓国に留学するかを尋ねたら、残念ながら高い目的意識をもっている学生は、おそらくごくわずかではないかと思うのです。
 これが、済州・釜山・木浦にはどういう海洋文化があって、それらを比較するために済州大学に学ぶとか、そのような具体的な目的があれば、留学生活はまったくちがったものになると期待できます。
8  明確な目的観をもって留学を
 池田 実りある留学のために、見つめ直すべき点ですね。
 留学生を受け入れる際に、苦労された点はありますか。
  中国の東北地方に住む朝鮮族の学生が、済州大学に留学したいと言ってきたことがあります。
 奨学金制度や学費免除の制度で、学費については最大限配慮することができます。しかし、生活費も出してほしいと言われ、それは困ると率直に申し上げました。
 済州に限らず、韓国に留学している外国人学生で、生活費までもらって生活しているケースはほとんどないからです。
 生活費を稼ぐために学業が疎かになり、さらにはお金儲けに走ってしまう留学生が多いのも悲しい現実です。これも、目的観の欠落から来る結果ではないかと思います。
 池田 むずかしい問題ですね。
 創価大学は、戦後に新中国が誕生して以来初となる留学生を、日本の他の大学に先駆けて受け入れました。今から約三十年前のことでした。
 初めてのことでしたので、私は寮生活から教育内容まで、彼らとよく語り合い、環境を整えられるよう心を配りました。その留学生たちは、今や中国の各界を担う存在となり、中日友好のために活躍されています。
 また、一九八四年、創価大学は貴国より初の留学生を迎えました。その留学生のご家族の方が、韓日の万代の友好を願い、五百本ものムクゲの苗木を贈ってくださいました。今、そのムクゲは校内で、毎年、美しい花を咲かせています。本当にうれしいかぎりです。
9  済州島に「南北センター」を
  尊いご献身に、心より敬意を申し上げます。
 ここで、済州大学の特徴を少し詳しく申し上げさせていただければ、済州島が北方大陸文化と南方海洋文化の交差点に位置するため、これら二つの文化を調和させるという、人類にとって非常に重要なテーマを身近に感じやすいという点があげられます。
 ハワイには、戦前から「東西センター」がありました。ここが、東西文化の交流と、人類の相互理解のために役立ってきた歴史は有名です。
 それと同様に、済州島では、「南北センター」を設置できる可能性があると考えています。
 ここでいう「北」とは、資本主義のノウハウと倫理で成り立ち、発展してきた国、たとえばドイツ、フランス、イギリス、そして日本が含まれます。それに対し「南」とは、資本主義のノウハウと倫理が必ずしも成り立たない国、たとえば南半球の大部分の国家と、中国やロシア、東南アジア、南アジア、中東などの諸国が含まれます。
 これからの人類は、経済関係の活動と倫理関係の活動の両方を、解決しゆくことを考えなければならないでしょう。
 池田 ハワイの「東西センター」は、私も以前(一九九五年一月)講演をしたことがあります。東と西が出会うハワイという歴史と文化の地にふさわしい研究機関でした。
 平和と共生の地球社会を築くためにも、「南北センター」の構想は、とても重要だと思います。
 本年(二〇〇四年)から、済州大学と創価大学が期間一年の交換留学生を相互に派遣する予定になっています。
 創立者として、ますますの活発な交流を、心から期待しています。
  そうですね。私も大変に期待しています。
 留学生たちの道のりは、決して平坦ではないでしょう。しかし彼らの交流は、まず言葉の問題、次に、お互いが理解しようとしている文化の問題、そして習慣の問題を解決するのに役立つはずです。
 自分が決めた分野の研究のために、文字どおり日本と済州島を行き来し、さらに次の研究ステップへと情熱を燃やし続けることができれば、これほどすばらしいととはありません。
 ともかく、自分の経験から言っても、留学には明確な目的をもつことが大切だと思います。
10  中国を含む三カ国交流への展望
 池田 済州島では現在、ビジネスの面でも、観光の面でも、中国との交流が拡大していると聞いています。
 これは文化交流、教育交流にもつながる動きではないでしょうか。
 済州島をはじめとする韓国と中国、そして日本を含めた三カ国の教育交流について、何かお考えはありますか。
  朴正煕大統領の時代、韓国は経済的に大きな発展を遂げました。それを見た中国は、発展の原因が韓国の教育にあると考え、韓国の教育事情を調査しました。
 しかし、これは両国の教育交流という観点から見ると、逆効果でした。
 当時、韓国は軍事政権で、その教育は中国から見て「あまりに自分勝手な人材育成であり、社会主義的立場を維持する中国の発展のためには、参考にならない」と映ってしまったのです。
 その印象は、数十年経った今も、影響を及ぼしているように思えます。
 現在、韓国の学生たちが相当数、中国に留学していますが、彼らは韓国で暮らしているのと同様、自分勝手に振る舞っていると中国側に見られる傾向にあるようです。
 一方、日本との関係で問題になるのはむしろ、日本人学生が韓国にどれくらい興味をもち、学びに来るか、ということでしょう。韓国に留学することの意義を見出せるかどうかということです。
 池田 示唆深い大切なお話です。学生世代の韓日交流は、世代別に見て最も活発に行われ、教育交流もまた、韓日二カ国間では大きく前進していると言えます。
 北東アジアの平和と安定を考えたとき、この両国と中国との教育交流も、否が応でも重要になってくると思われます。
 先ほども触れましたが、創価大学は、日中の若い世代の交流がアジアの平和の大きな礎になるとの思いで、新中国からの留学生を迎えてきました。
 今では、日本全体で、中国からの留学生は、五万八千人を超える(二〇〇二年五月時点)までに大きく広がっており、うれしく思っています。
  池田先生が早くから日中の教育交流に尽くされてきたととは、よく知っています。
 韓国の場合ですが、改革案としては、たとえば中国の大学の分校のようなものを済州島などに作り、そこで中国の教育システムを一、二年教えて、それから中国本土へ留学させるという方法が考えられると思います。
 中国との経済交流が進めば、当然、文化交流も、教育交流・人材交流も進むことでしょう。逆に、政策によって教育交流から始めて、文化交流や経済交流が活発になる可能性もありますね。
 池田 二〇〇二年は日中韓の国民交流年でしたが、四年後の二〇〇八年には、北京オリンピックもあります。こうした機会をとおして、三カ国の交流が大きく進むよう願っていますし、私たちも力を尽くしていきたいと決意しています。
 その意味でも、平和のために、戦争のない世界を築くために、教育交流が、ますます必要です。
 アジアの国々が、一つ一つの課題を見極め、ともに知恵を出し合って、教育が平和に与える「可能性」を、どこまでも深く追求していくべきです。
 とくに中園、韓半島、日本という、北東アジア地域の交流がきわめて大切です。この地域の相互理解が、平和と安定への大いなる土壌になると確信します。

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