Nichiren・Ikeda
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日蓮大聖人・池田大作
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第2章 母は、何ものにも負けない!
「21世紀への母と子を語る」(池田大作全集第62巻)
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食卓は子どもの心身を育む大切な場
池田
“同じ場所”にいても、それぞれは“別の時間”を過ごしている――いわゆる「ホテル家族」と呼ばれる現象だね。
同じ家に住みながら、別々に食事をとり、それぞれが好きなテレビを見て、別々の部屋で自由に過ごし、別々の時間に休む……。
ともあれ、昔と比べて「家族の団欒」の時間が減ってきていることだけは確かなようだね。
岡野
はい。なかでも、子どもが一人で食事をする“孤食”が問題となっています。
この前もテレビの番組で、小学校高学年の四人に一人が、朝食を一人で食べているという実態が紹介されていました。
自分が食事をする姿を、子どもたちが絵に描いていたのですが、広いテーブルに子どもがたった一人で食べていて、親はいなかったり、別のことをしているという家庭が、予想以上に多くて……。とても驚きました。
“孤食”は家族のコミュニケーション不足を招くだけでなく、子どもの「偏食」がふえている原因となっていると言われます。
子どもの好き嫌いをなくすには、親がいっしょに食事をして、おいしそうに食べる姿を見せることが大切です。また、いっしょに食事ができなくても、何を食べて、何を残しているか、お母さんがしっかり見届けて、しっかり声をかけてあげることが大切ですね。
番組を見ていて、こんな偏った食事ばかり続けていたら、子どもの成長が本当に心配だなと感じました。
池田
食事は生活の基本であり、食卓は大切な家族の団欒の場ですから、子どもの健全な心と体の成長のためにも、親のほうで最大限、気を配ってあげる必要があるね。
人と人とのコミュニケーションでも、食事の場は大切です。戸田先生は「食事をしながら話し合うと、互いに胸襟を開くものだよ」と、よく教えられた。
私も機会を見ては、いろいろな人と食事をしながら懇談をし、激励を重ねてきました。
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同じ目的に進む飛行機のような家庭に
政森
以前、総理府の調査で注目すべき結果が出たと、新聞で報じていました。
子育てをつらいと感じている女性が、その理由として挙げた項目の中で最も多かったのは、「自分の自由な時間がなくなる」という回答だったのです。
また親の側だけでなく、“自分の好きなように時間を過ごしたい”と考える子どもがふえており、食卓の孤独化も、そうした家族の心の反映であるような気がします。
この点、かつて読んだ、池田先生の『家庭革命』という本の中の、“現代の社会における家庭は城ではありません。飛行機に近い。飛行機と心得、この操縦を楽しみ、はるかな視野の広い彼方の同じ方向を見つめて行く、これが今日の健康な家庭である”との趣旨の話が忘れられません。
池田
家族の団欒が大事といっても、生活形態や生活リズムがこれだけ多様化しているのだから、すべてが昔と同じようにいかないのも現実でしょう。
また、お母さん方の「自分の自由な時間がほしい」という気持ちも、ある面で分かります。
いまだに育児は母親の負担が重く、とくに精神面で周囲がどう支えていくかは、大きな社会的課題と言えます。
とはいっても、家族が互いのことを思いやる気持ちだけは失ってはいけません。
めいめいが別々の方向を向いて生活している“ホテル”ではなく、たとえ離れた席に座っていても、同じ目的地に向かって進む“飛行機”のように、心合わせて「家庭」を築いていくことが大切ではないでしょうか。
岡野
本当にそうですね。
親と子が心の奥でつながっているという安心感は、とくに小さいお子さんにとって、欠くことのできない成長の礎です。
池田
飛行機といえば、戸田先生が、ある時、こんな話をされたことがあった。
「昔、私は仙台から飛行機で東京へ帰ってきたことがあるが、その途上、阿武隈川の川下のあたりで、烈風にあった。
その頃の飛行機は、今どきのと違って、六人乗りの簡単な飛行機だから、上下に激しく振動して、なかなか前には進まない。仙台から東京までの間、飛行機が気流と闘争していたが、その闘争は見ていて実に立派な闘争であった」と。
具体的な話をとおして、すべては闘争だという本質を教えてくださる師でした。
子育ても家庭のことも、すべて現実との格闘です。もとより楽なはずはないし、思いどおりにならないことのほうが多いかもしれない。しかし、目的地に向かって心を定め、苦悩の乱気流を突き抜ければ、そこには澄み切った希望の青空が広がっている。
仏法では、「苦」と「楽」は表裏一体であり、「労苦」のなかにこそ「遊楽」はあると説きます。大事なことは、負けないことです。あきらめないことです。
飛行機も飛び続けてこそ、目的地にたどりつけるように、人生の醍醐味は、深い労苦を勝ち越えてこそ満喫できるのです。
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母の力は世界を一つに結ぶ
政森
母親には、家族全員を幸福の道に運ぶ“名操縦士”としての使命があるということですね。
こうした家庭のあり方を見つめ直す社会的な運動を、創価学会婦人部としても取り組んできました。その一つに、一九九四年、国連の「国際家族年」にスタートした「わたしたち地球ファミリー展」があります。
全国で巡回展示を行なっており、広島で開催した時には、九万人を超える観賞者が訪れるなど、大きな反響を呼びました(一九九五年一月)。
池田
会場の入り口ではユニセフ(国連児童基金)駐日代表事務所所長のジェヒー・ワイルダーさんから寄せられた、「『ゆりかごを動かす手が世界を動かす』――私の大好きな言葉です。創価学会婦人部の方に教えていただきました」とのメッセージが掲げられていたそうですね。
「ゆりかごを動かす手」――それは、生命を育む母の力であり、この力こそ国境や民族も超えて世界を一つに結びゆく原動力と、私も確信します。
岡野
展示された世界六五カ国の家族の写真などを見ると、家族のぬくもりのすばらしさに心が温まりますね。
広島展では、被爆者の戦後五〇年の生活も写真や物品、手記で紹介されたそうですね。
政森
ええ。一九九五年は、広島への原爆投下から五〇年にあたる節目の年であり、未来へ向けて「平和」への決意を込めて企画を進めました。
ですから、「広島コーナー」では、被爆の苦しみを乗り越え、一家を支えながら「平和の心」を発信する六人の友の五〇年の歩みを紹介したのです。
来賓の一人、詩画家のはらみちをさんは、こんな声を寄せてくださいました。
「私は、母をテーマに二五年ぐらい描き続けてきましたが、戦争をはじめとする暴力の歴史のなかで、母はいつも悲しい尻拭いの役割を強いられてきました。
しかし、創価学会婦人部の皆さんは、子どもたちを守るために立ち上がり、戦おうとされている。その心に感動しました」と。
池田
二十一世紀は、女性が時代をリードし、皆が平和で幸福な社会を築く時代です。
二〇年以上も前のことですが、ヨーロッパ統合の推進者であったカレルギー伯と対談したことがあります。
その中で、「女性の幸不幸の姿こそ、一つの社会、一つの国が安泰であり、健在であるかどうかの具体的なあらわれである」と述べた私に対し、カレルギー伯はこう語っておられた。
「女性がより大きな役割を果たす機会が与えられれば、それだけ世界が平和になるということです。なぜなら、女性は本来、平和主義者だからです」
「世界中で女性が、議会と政府の半分を占めるようになれば、世界平和は盤石になるだろう」――と。
忘れることのできない、含蓄深い言葉でした。
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平和の世紀を築くのは女性
岡野
ガンジーやタゴールをはじめ、平和学者のガルトゥング博士や、アルゼンチンの人権の闘士・エスキベル博士など、世界一級の知性の人びとは、“平和の世紀を築くのは女性である”と訴えていますね。
池田
そのとおりです。それが、まぎれもない時代の潮流なのです。
かつてガンジーは、インドの独立闘争のなかで戦う女性たちの姿を讃え、「もし、『力』が精神の力を意味するのであれば、女性は計り知れないほど男性よりもすぐれている。もし非暴力が、私たち人間の法則であれば、未来は女性のものである」と述べました。
このガンジーのもとで、独立運動に挺身していたメータ女史もこう語っています。
「ガンジーは『勇気をもって、正義のために戦え。真実を語れ』と教えてくれました。また『女性が心の平和を確立することによって、社会の平和は築き上がる。その時、女性のもつ平和の力は爆発的な偉大な力となり、社会は変えられる』と教えてくれました」と。
婦人部の皆さま方は、自らの行動をもって、その時代の最先端を切り開かれている。世のため人のため、懸命に活動しておられる。本当に尊いことだ。合掌する思いです。
皆さん方が、世界の希望です。人類が皆さんの未来への行動を見つめています。
一つひとつの行動は目立たないかもしれないが、着実に、社会を世界を、「幸福」の方向へと導いている。その行動は、そのまま、お子さんたちの「希望の未来」を開いていることにもなるのです。
誇りをもって進みましょう。
「平和の世紀」を築くために!
「使命の人生」を勝ち取りながら!
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