Nichiren・Ikeda
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日蓮大聖人・池田大作
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熱原の三烈士
詩歌・贈言「青年の譜」「広宣の詩」(池田大作全集第39巻)
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ああ弘安二年 その九月
秀峯富士は揺るぎなく
輝く雲に
黄金
きん
の海
稔の
民謡
うた
もにぎやかに
豊作の村 功徳あり
輝きいづる田園に
風にはあらず馬蹄鳴る
行智は命令一下して
奸智の網も十重二十重
雪崩の如く押し寄せり
行解の道は嵐あり
大法五字の忍辱に
鎧かぶりし熱原の
信徒は決然堪忍の
厳しき緒をば切りにけり
ああ神四郎さしずあり
正当防守の戦いと
正義の戦いま迫る
咄嗟の武器に応戦す
ひとりは暴徒の武器をとり
涙光りて
崇高
けだか
くも
日頃の慈折眼差しは
利那は修羅に替えて立つ
いまわの
翅
はね
は転び撃つ
結恨懐きし行智らは
積もる
意趣
うらみ
今ここに
多数を頼みて昂然と
津波とうねり押し引きて
怨敵
てき
神四郎めがけ斬る
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ああ神四郎無勢なり
厳しき
眉目
おもて
に血は
奔
はし
り
一歩も退かず
巌
いわお
のごと
多勢の悪徒悩ませど
無念に力尽きはてぬ
渦巻どよむ
小舟
ふね
なれば
捕縛
なわ
をうけるは二十人
護法の友に涙なく
政所へと縛られぬ
一人の女人もありにけり
いま滝泉寺と弥藤次が
訴人となりて一党を
幕府の鎌倉引き立てぬ
ああ幾年の村あとに
別れの
譜
うた
か秋の風
その罪名は策意あり
「日秀始め神四郎
多数の百姓さしずして
刀剣
弓矢
きゅうし
を帯しゆき
滝泉寺へと乱入す」
問注所への嘆願も
芒を乱す風の音
その糾問のありさまも
足蹴の誹り人非人
日々月々に伏し
疼
いた
む
7
我が世の月と時めける
平左衛門頼綱は
無辜
むこ
の信徒を
法庭
にわ
に出し
強く問う声魔神かと
口髭反らす哀れなり
「汝ら早く妙法の
信仰やめて念仏を
申して帰れ安堵せよ
もしや信仰捨てぬには
重罪その罪恐ろしや」
声も荒らに言い
遣
や
りて
はるかに衆を見下しぬ
その巌かな顔色に
いかなる剛の者たりと
蠢く虫と伏しおがむ
いざやされども神四郎
かねては覚悟の上なりと
声爽やかに色見えず
端座の姿そそり立ち
憂身恐れず自若たり
「われは申さん明らかに
法華の信仰さらに増す
いかなる法門君とせん
王を瓦に替えんとや
問うも愚かと言いつべし」
思いの外の強言に
衆人せきと声をのむ
頼綱狂い激怒して
汝ら百姓分際で
天下の管領なんとみる
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人もなきかの雑言よ
憎げの姿 天魔らが
これぞ無智なる下郎
人
びと
暫し示さんこの弓を
判官あるかとわが子さし
蟇目
ひきめ
をもちて伏してみよ
弓取りあえず判官の
飯沼武士は
鏑矢
かぶらや
を
満とひきいて狙い射つ
如来の使いか神四郎
鏑矢走りて
紅
くれない
の
流れる血にもひるむなく
見守る友の合掌は
御経
みきょう
を
誦
ず
して声涼し
天下の法庭 なにゆえに
蟇目の
調伏
ちょうぶく
剛信に
苦悶の乱れ終になく
平の長官
兵士
つわもの
は
眼みあわせ驚けり
見よや
微
かす
かに笑みありて
聞けや
擁
いだ
きし信の声
糾問無益と法庭は
牢所
ろう
にひきいて閉じられぬ
多事
蒼惶
そうこう
の弘安の
松風
浪
なみ
に鳴るときに
俄に牢所の三烈士
死滅の剣で首はねん
黙する天は瑠璃光り
寂する地には花薫り
過ぎ去りゆくが霊山
寂光
会上
えじょう
に飛びゆきて
真如の都に遊びけり
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平頼綱
矛
ほこ
おさめ
残るは追放十七士
名残りもつきずわれ斬れと
後世の善処に新たなる
誉れの汗に
躍動
ちから
あり
人は見渡し襟正し
宝玉の身か
草鞋
わらじ
身か
武士も恥じいる志士なりと
讃える心胸深く
姿ばかりは意地はりぬ
諸行無常の鐘やみて
常楽我浄の風吹けば
ああ神四郎その
兄弟
ともら
淋しく法戦消え去りぬ
繁れる
法庭
にわ
の杉木立
はや時去りて時は来ぬ
春秋ここに十四
歳
とせ
篝火ほのか朝まだき
頼綱屋敷に急襲の
兵
つわもの
かこみて火を放つ
朧
まぼろし
の夢 月満ちて
執権凌ぐ権力者
その王座をば狙いしに
叛乱
むほん
の
咎
とが
に
誅死
ちゅうし
さる
飯沼判官ともに死す
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刹時の内に身も
家宝
いえ
も
薄き光と消え果てぬ
謀叛悪逆背に負うて
一家一族亡びけん
栄えも空し憂世波
生死流転の神四郎
桜の花に吹く風に
あれよ広布の
鑑
かがみ
よと
その名かんばし熱原の
烈士の命 誉れあり
(1971.10.12)
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