Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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熱原の三烈士  

詩歌・贈言「青年の譜」「広宣の詩」(池田大作全集第39巻)

前後
3  その示威強く人くだ
 徒党の力草も伏す
 げにや別当だきこみて
 怨みの双手もろて日に炎
 権威ちからに注ぎいやさか
  
 さては左衛門頼綱の
 なさけを借りて謀議はかりあり
 その企みは狂おしく
 幾重に垣を廻らして
 弘通の防遏ぼうあつ楔うつ
  
 しかるに青年神四郎
 師子座に居して毅然たり
 疲れながらも命
 微動もみせず指揮とらん
  
 暁いずこ朝風に
 遥けき高嶺、おねに夢燃えて
 外に権路の矢を払い
 内に同志の憂い聞き
 濃紫むらさき着し一人立つ
  
 いざ行智た手を焼きて
 風にも{樹)(き)にも恐れなば
 頼むは呵責の力待ち
 焔を消さんとめぐ
 ついに行きつく政所
  
 法華信徒を離さんと
 「日蓮房に帰依すまじ
 背ける者に咎あらん」
 鎌倉幕府の御教書を
 偽作などしてふれ回る
4  応答なにも効き目なく
 青年信徒に微笑あり
 胸は花咲き真鳥まどり舞う
 比翼の結び強ければ
 恐れもなきか信の城
  
 誉れの優勢 口惜しさに
 膏油煮え立ち喘ぎ立ち
 和合の綱に手を伸ばし
 き乱さんと仇心
  
 さらに大進 三位房
 学匠の身 誉れあり
 傲れる誇りのはた高く
 日蓮よりも博学と
 強く自惚れ眼下なり
  
 城者破城のことわり
 獅子の身中虫なるか
 行智弥藤次甘言を
 正しと受けてとき今と
 信友同志を害しけり
  
 驕れる花の移ろいて
 冴えゆく月も山の端に
 その法則かいざしらず
 落馬の大進悶死せり
 三位房もまた逝きぬ
  
 これに懲りず迫害は
 弘安二年のその四月
 浅間神社の祭礼に
 ひそかに狙いて信徒らの
 四郎達をば傷つけぬ
  
 護法の友等は怒り秘め
 人みな興師の訓戒みおしえ
 堅く護りて修行みち静か
 誹謗の声を夢になし
 厳と誇りの法旗はたもてり
5  ああ弘安二年 その九月
 秀峯富士は揺るぎなく
 輝く雲に黄金きんの海
 稔の民謡うたもにぎやかに
 豊作の村 功徳あり
  
 輝きいづる田園に
 風にはあらず馬蹄鳴る
 行智は命令一下して
 奸智の網も十重二十重
 雪崩の如く押し寄せり
  
 行解の道は嵐あり
 大法五字の忍辱に
 鎧かぶりし熱原の
 信徒は決然堪忍の
 厳しき緒をば切りにけり
  
 ああ神四郎さしずあり
 正当防守の戦いと
 正義の戦いま迫る
 咄嗟の武器に応戦す
  
 ひとりは暴徒の武器をとり
 涙光りて崇高けだかくも
 日頃の慈折眼差しは
 利那は修羅に替えて立つ
 いまわのはね は転び撃つ
  
 結恨懐きし行智らは
 積もる意趣うらみ今ここに
 多数を頼みて昂然と
 津波とうねり押し引きて
 怨敵てき神四郎めがけ斬る
6  ああ神四郎無勢なり
 厳しき眉目おもてに血ははし
 一歩も退かずいわおのごと
 多勢の悪徒悩ませど
 無念に力尽きはてぬ
  
 渦巻どよむ小舟ふねなれば
 捕縛なわをうけるは二十人
 護法の友に涙なく
 政所へと縛られぬ
 一人の女人もありにけり
  
 いま滝泉寺と弥藤次が
 訴人となりて一党を
 幕府の鎌倉引き立てぬ
 ああ幾年の村あとに
 別れのうたか秋の風
  
 その罪名は策意あり
 「日秀始め神四郎
 多数の百姓さしずして
 刀剣弓矢きゅうしを帯しゆき
 滝泉寺へと乱入す」
  
 問注所への嘆願も
 芒を乱す風の音
 その糾問のありさまも
 足蹴の誹り人非人
 日々月々に伏しいた
7  我が世の月と時めける
 平左衛門頼綱は
 無辜むこの信徒を法庭にわに出し
 強く問う声魔神かと
 口髭反らす哀れなり
  
 「汝ら早く妙法の
 信仰やめて念仏を
 申して帰れ安堵せよ
 もしや信仰捨てぬには
 重罪その罪恐ろしや」
  
 声も荒らに言いりて
 はるかに衆を見下しぬ
 その巌かな顔色に
 いかなる剛の者たりと
 蠢く虫と伏しおがむ
  
 いざやされども神四郎
 かねては覚悟の上なりと
 声爽やかに色見えず
 端座の姿そそり立ち
 憂身恐れず自若たり
  
 「われは申さん明らかに
 法華の信仰さらに増す
 いかなる法門君とせん
 王を瓦に替えんとや
 問うも愚かと言いつべし」
  
 思いの外の強言に
 衆人せきと声をのむ
 頼綱狂い激怒して
 汝ら百姓分際で
 天下の管領なんとみる
8  人もなきかの雑言よ
 憎げの姿 天魔らが
 これぞ無智なる下郎びと
 暫し示さんこの弓を
  
 判官あるかとわが子さし
 蟇目ひきめをもちて伏してみよ
 弓取りあえず判官の
 飯沼武士は鏑矢かぶらや
 満とひきいて狙い射つ
  
 如来の使いか神四郎
 鏑矢走りてくれない
 流れる血にもひるむなく
 見守る友の合掌は
 御経みきょうして声涼し
  
 天下の法庭 なにゆえに
 蟇目の調伏ちょうぶく剛信に
 苦悶の乱れ終になく
 平の長官兵士つわもの
 眼みあわせ驚けり
  
 見よや かすかに笑みありて
 聞けや いだきし信の声
 糾問無益と法庭は
 牢所ろうにひきいて閉じられぬ
  
 多事蒼惶そうこうの弘安の
 松風なみに鳴るときに
 俄に牢所の三烈士
 死滅の剣で首はねん
  
 黙する天は瑠璃光り
 寂する地には花薫り
 過ぎ去りゆくが霊山
 寂光会上えじょうに飛びゆきて
 真如の都に遊びけり
9  平頼綱 ほこおさめ
 残るは追放十七士
 名残りもつきずわれ斬れと
 後世の善処に新たなる
 誉れの汗に躍動ちからあり
  
 人は見渡し襟正し
 宝玉の身か草鞋わらじ身か
 武士も恥じいる志士なりと
 讃える心胸深く
 姿ばかりは意地はりぬ
  
 諸行無常の鐘やみて
 常楽我浄の風吹けば
 ああ神四郎その兄弟ともら
 淋しく法戦消え去りぬ
 繁れる法庭にわの杉木立
  
 はや時去りて時は来ぬ
 春秋ここに十四とせ
 篝火ほのか朝まだき
 頼綱屋敷に急襲の
 つわものかこみて火を放つ
  
 まぼろしの夢 月満ちて
 執権凌ぐ権力者
 その王座をば狙いしに
 叛乱むほんとが誅死ちゅうしさる
 飯沼判官ともに死す
10  刹時の内に身も家宝いえ
 薄き光と消え果てぬ
 謀叛悪逆背に負うて
 一家一族亡びけん
 栄えも空し憂世波
  
 生死流転の神四郎
 桜の花に吹く風に
 あれよ広布のかがみよと
 その名かんばし熱原の
 烈士の命 誉れあり
  (1971.10.12)

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