Nichiren・Ikeda
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日蓮大聖人・池田大作
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9 天台の「一念三千」論
「東洋の智慧を語る」季羡林/蒋忠新(池田大作全集第111巻)
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「一瞬の心」に無限の可能性
池田
華厳思想は、『華厳経』に出てくる整然とした宇宙観、世界観をもとに、「唯心縁起」とか「法界縁起」とか言われる法門を構築していきました。
心を離れて対象世界が存在することはなく、心の展開によって現象世界の現れがあるというものです。
「法界縁起」を表す譬喩として、私は、一九九七年の「SGIの日」記念提言(「『地球文明』への新たなる地平」)で環境問題を論じたさい、「帝釈天の網」を引用しました。
ーー帝釈天の宮殿に懸かる網には、無数の結び目があり、そこに宝石(珠)が結びつけられている。そして、すべての宝石が、他の宝石をきらびやかに映し出し、相互に反映しあっているーー。
万物がこのような無限の相互作用をなす世界を、「法界縁起」と表現しています。
これに対して、鳩摩羅什や僧肇などが深く学んだ「般若空」の思想は、「縁起」を人間の意識や言語の作用を考えるときに用いております。
たとえば、親という存在は子どもという存在を前提としているのであって、子どもと別に親という存在はない。しかし、人が親と子という存在を分けて、差別しようとする。「親」と「子」という言葉に対して、独立して存在する実体はなく、互いに依存した意識や言葉のうえの存在でしかないという考えです。
華厳思想とは違った視座からの「縁起」の表し方ですが、どちらとも事物を固定的、実体的に考える態度を戒めたものです。
そして、天台の「一念三千」論の考え方は、それらを大きく統合しようとしたものと言えましょう。
この法理は、人間の「一瞬の心」、すなわち「一念」の働きに、「世界」を生みだす無限の可能性を見たものです。
天台は、「一念三千」論の中で、大宇宙の構造を「三世間」とも表現しております。
ここに三世間とは、「五陰世間」「衆生世間」「国土世間」をさします。「依正不二」論との関連で見れば、「五陰世間」「衆生世間」が「正報」にあたり、「国土世間」が「依報」になります。
「正報」(「五陰世間」「衆生世間」)と「依報」(「国土世間」)は「不二」となって、大宇宙、大自然を形成し、しかも「一念」の中に包摂されると言うのです。この「一念三千」論は、まさにインド哲学の「梵我一如」、そして中国思想の「天人合一」思想と通底している東洋思想の極致と言えましょう。
さて今、韓国の呉博士のお話が出てまいりましたが、韓・朝鮮半島における「天人合一」思想はいかがでしょうか。
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