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日蓮大聖人・池田大作

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1 「経中の王」の根拠を示す  

「東洋の智慧を語る」季羡林/蒋忠新(池田大作全集第111巻)

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1  写本が証明する歴史上の事実
 池田 二十一世紀を「生命の世紀」「平和の世紀」と輝かせていくために、私たちは『法華経』から何を学んでいくべきか。この点について語りあっていきたいと思います。
  賛成です。大事なことです。
 池田 そのために、貴国のすばらしい伝統にならって、まず過去の歴史から学び、そして、現在を洞察し、未来を展望したいと思います。
 季博士の信条であられる「実事求是」(実際の対象から出発し、その発展する法則性を探求し、事物の本質を認識する)の科学的態度にもとづいてまいりましょう。
  歴史を振り返り、現状を考察することは、正確に未来を展望するうえでの有効な手段です。
 池田 仏典にも「聖人というのはくわしく(過去・現在・未来の)三世を知る人をいう」(御書974ページ、通解)とあります。三世にわたる真実を、聡明な先生方とともに探究できることは、このうえない喜こびです。
  広く歴史を振り返れば、おびただしい仏教経典のなかで、『法華経』こそ、世界で最も長期にわたって伝播し、最も広範に流布し、最も数多くの信仰者と研究者を集める経典です。まさに「経中の王」であることがわかります。
 また、広く現状を考察してみれば、現代の世界にあって、最も大きな影響を及ぼし、しかも、ますます広がりを見せている仏教経典も、やはり『法華経』であることがわかります。
 ゆえに、未来を展望するとき、われわれは確信をもって「二十一世紀において『法華経』は全世界に広まっていくであろう」と予見することができます。
 池田 じつに明快なご主張です。とくに、どのような事実にもとづいて、そう、お考えなのでしょうか。
  私がこのように申し上げるのも、ただ一つの根拠にもとづいています。それは、客観的に存在する事実です。私自身は無宗教、無党派であり、ただ「実事求是」を指導方針として実践している平凡な一研究者にすぎません。
 私が根拠とする事実を簡単に紹介したいと思います。
 『法華経』の起源はインドにあります。ただ、古代インド文化は歴史の事実を記した文献が乏しいのです。
 そのため、『法華経』がインド仏教史上にどのような影響を与えたかとの問いに対し、具体的に、また詳細に答えることはできません。
 しかし、現存する他のいかなる仏教経典の梵文写本と比較しても、『法華経』写本には、きわめて明瞭で、他に類のない特徴があります。
 池田 たしかに、歴史を重視する中国と比べ、古代インドには史書があまり見あたりません。時間を超えたものへの憧憬が強いゆえでしょうか。
 それでは、『法華経』の類のない特徴とは、具体的にはどのようなものでしょうか。
  第一に、梵文写本の数量が多いことです。
 第二に、写本発見地も多く、それがきわめて広範囲にわたることです。
 第三に、言語、構成、および文章の長さなどで、写本間の違いが最も複雑であることです。
 第四に、書写された期間が長く続いていること、などです。
 これらの特徴を総合的に研究すれば、われわれは確かな結論を導きだすことができます。
 すなわち、『法華経』はインド仏教史上において非常に広範囲にわたり、長きにわたって影響を及ぼした仏教経典であるということです。
2  竜樹も世親も重用
 池田 明快です。よく理解できます。
 大仏法学者の竜樹、世親らも『法華経』を引用しています。竜樹は、二~三世紀の大乗の大論師です。南インドで活躍しました。
 また、世親は『法華論』(菩提留支訳『妙法蓮華経憂波提舎』、動那摩提訳『妙法蓮華経論優波提舎』の漢訳のみ現存)という『法華経』の注釈書を著しています。四~五世紀の人です。北インドで活躍しました。
 この二人の文献を見るだけでも、南北インドで、数世紀にわたって『法華経』が注目されたことがわかります。

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