Nichiren・Ikeda
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異なる風土の文化交流
「古典を語る」根本誠(池田大作全集第16巻)
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1 根本 半月あまり、香港、沖縄と回られたそうですね。
池田 ええ。途中、一日だけ、東京へ帰りましたが……。
根本 沖縄では、時間をかけて、くまなく歩かれたようですが、いかがでしたか。
池田 八重山が、とくに印象深いものがありました。純朴で、豪快なところがある。沖縄本島とも違う感じです。なにか日本人の原質みたいなものが生きているようで……。日本のハワイになってくれればよいなと思いました。
人間があり、自然があり、星がある……。いつまでもいつまでも、これらを大事にしたいと痛感しました。
根本 多くの方々と、お会いになったようですね。
池田 はい。真心から歓迎してくださり、ごあいさつもできて、たいへん有意義でした。
根本 沖縄というと、私たちはすぐ虐げられた島という連想をしますが。
池田 過去は過去です。仏法では現当二世と言つて、現在を原点として未来にわたって、どのように建設していくかという姿勢が、もっとも大事なのです。若い学生たちの集まりで、その姿勢を基点として、さまざまな激励をしてまいりました。
根本 なるほど。
池田 また、もう一つ感じたことは、異なる風土と文化をもつ地域の相互理解とか、交流とかいうことが、非常に重要となってきているということです。今まで本土と沖縄、あるいは日本とアジアの関係という問題について、あまりに政治や経済の側面からのみ、とらえられてきたように、思われてならない。それだけでは、真の理解も交流もできない。むしろ言語や民俗や宗教の次元での認識を深めることが、より重要な契機になる。一見、迂遠な道のようですが、じつはもっとも直道を行くものではないかと思う。
根本 それには文学、芸術も含まれますね。とくに古典ですが――。
池田 当然でしょうね。
根本 この対談も、決して迂遠なものではないわけですね。(笑い)
池田 そう確信したい。(笑い)
古典との対話の場合も、それによって、時代環境をこえて共通の、普遍的な人間心性の核を感受するのですが、そのためには、古典が書かれ、読まれた時代の特殊性を、じゅうぶんに理解しなければならないでしょう。