Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

戸田城聖先生のこと 池田大作

若き日の手記・獄中記(戸田城聖)

前後
1  恩師戸田城聖先生の十三回忌にあたり、御自宅に秘蔵されていた手記・書簡等を、近しい親戚の方々が、記念出版しようとの企画から、この度、『若き日の手記・獄中記』として、刊行される運びとなったことは、誠に喜びに堪えない。
 私は、恩師の遺徳を偲び、その偉業を宜揚することは、弟子としての責務であり、限りなき鴻恩に対する、せめてもの報恩の道なりと確信している。
 戸田先生に、初めてお会いしたのは、昭和二十二年八月であり、先生が四十七、八歳、私が十九歳の時であった。それは私の生涯における決定的な瞬間であった。以来お亡くなりになるまで十一年間、ある時は師として厳しく、ある時は親をも及ばぬ慈愛をもって、人間形成の薫陶を受けた日々のことは、──先生の偉大なる人間性の謄写のように、私の生命に刻みつけられていった。不肖の弟子である私が、今日まで辿りえたのも、常に恩師が見守って下さっていたからであると信じている。
 いかなる逆境にも、毅然として揺がぬ姿勢、天衣無縫ともいうべき豪放磊落さ、それでいて、鋭い英知の輝きと、細やかな心づかいを忘れぬ美しい情深さ、その人柄を語るには、言葉が尽きず、ただ感慨が胸にこみあげてくるばかりである。私もまた及ばずながら『人間革命』をつうじ、先生の不滅の人格と、思想と行動をとどめようと心血を注いでいる昨今である。よく先生はいわれた。自分の偉業が、世の人々に理解され、感謝される日までには、幾十年、幾百年もの歳月が必要となろうと。
 本書は、その先生が、故郷北海道の青春時代に折にふれてかかれた手記と、信仰の真髄を開悟された獄中で、厳しい弾圧と戦い、囹圄の身でありながら、家族、親類、社員にいたるまで、こまごまと心を配っておられる書簡等が記録されている。先生の高いヒューマニズムが、ダイヤモンドのごとく光っている貴重な文献であるといえよう。
 東洋仏法の真髄を、先生は、現代人にわかり易い指導原理として、身をもって教えられた。多くの人が、どれほど人生の新天地に勇気と希望を得たか計り知れない。それは一重に、先生の人間性を通して具現化されたものである。その意味からも、先生の遺徳が、広く世人に認識され、理解されゆくことを、心より祈るものである。
 御遺族の方々の、御繁栄を共に祈りつつ。  合掌
   昭和四十五年十二月十四日

1
1