Nichiren・Ikeda
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安倍晋太郎 元外相
つねに紳士の品格の人
随筆 世界交友録Ⅲ(池田大作全集第124巻)
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12 ”生きて大業を、死して不朽の名を”
「日本の将来を考えると、世界に貢献する国家を、高い志を持った国家を、命がけで作っていかなければならない」
その言葉どおり、命がけで働いた氏には、一点の後悔もなかったであろうが、私としてはただ、総理になっていただき、ご自身の手で、ぜひ「日ソ平和条約」を結んでいただきたかった。
氏が敬愛する高杉晋作が師匠の吉田松陰に「丈夫の死すべきところは」とたずねたことがあった。
松陰は答えた。(=獄中から晋作に宛てた書簡)
――世の中には「身は生きながらも、心は死んでいる者」がおり、「身は滅んでも魂は残っている者」もいる。心が死んでいては、生きていても何の意味があろうか。魂が残っていれば、死んでも何を失ったことになろうか。
君よ、死して不朽となる見込みがあれば、いつでも死にたまえ!
生きて大業を成し遂げる見込みがあれば、いつまでも生きたまえ!――。
「生きて大業の見込あらばいつでも生くべし」
「死して不朽の見込あらばいつでも死ぬべし」
晋作は、わが身の病も顧みず、革命の渦を巻き起こし、巻き起こして、二十八歳で、この世を去った。
そして、大業を残し、不朽の名を残した。
桜花の季節とともに逝かれた安倍氏の生涯は、維新の舞台を用意しながら、みずからはその舞台に立つことのなかった青年志士を、私に思い出させるのである。