Nichiren・Ikeda

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ツェンドアヨーシ モンゴル文学大学学長… ”文学の復興”に挑戦する

随筆 世界交友録Ⅲ(池田大作全集第124巻)

前後
4  「賢者ミャタブ」のごとく
 先生自身、十カ国以上で作品が翻訳されている作家である。文学評論、テレビや映画の脚本も手がけてきた。
 たとえば、「賢者ミャタブの物語」。(”Адтай Мятав”)
 アパートが火事。五階の坊やを、はしごも無しにどう救うか? 池で人がおぼれている。泳ぎが苦手の自分に何ができる? 岩山から襲いかかるヒョウ。どう素手で立ち向かう?
 主人公のミャタブは、どんな窮地も、あっと驚く機転と勇気で切り抜けていく。人助けに動かないでいられない「男のなかの男」である。
 ミャタブは、学長自身の分身なのかもしれない。
5  一九九四年、モンゴル文学大学の創立とともに、初代の学長に就任された。大学の方針は「一人の作家が、一人の学生を育てる」である。青年を”人の心を打つ作家”に育てることをめざしている。
 多くの文学コンクールで、同大学の学生はつねに上位を獲得。九八年には一期生が巣立った。ジャーナリストに、教員に、全国の文化関係の職場に ――”心の宝石”を社会へ送りだす”鉱山”のような大学なのである。
 「世界や宇宙のことも、人間に近づけて書くんだよ。人間が根本だよ」――学長は、そう教えているという。
 学長は、もったいなくも、私を大学の「名誉学長」としてくださり、創価大学での式典では、あいさつを、こう結ばれた。
 「世界が、子どもやお年寄りの歓喜の声で満ちあふれますように! 頭上には、いつも金色の太陽と紺碧の空が輝いていますように!」
 それは、そう、「おばあちゃん」と暮らした、あの幼き日の光景そのものだったのかもしれない。
 学長の姿に、私は思った。草の海、星の海。モンゴルには、もう一つ海があるのだ。どんな障害も、怒濤のごとき人間愛で乗り越えていく「心の大海原」が!

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