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奈良広布満三十年記念勤行会 「和楽の家庭」「和楽の組織」を

1986.6.17 「広布と人生を語る」第9巻

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1  私が修学旅行ではじめて奈良を訪れたのは十一歳のときであった。季節は五月か六月のころと思う。それは伊勢、奈良、京都とめぐった四泊五日の旅行で、ひじょうに印象深いものだった。奈良では若草山を駆けまわったり、鹿とたわむれたり、また猿沢池で遊んだことなどが懐かしく思い起こされる。
 シルクロードの最終地点といわれる、この奈良の地は、古より日本の故郷ともいわれ、ロマンのかおる歴史の揺藍の天地である。このなかには東京のような都会にあこがれ、うらやましく思う人がいるかもしれないが、私ども東京に住むものにとっては、奈良の天地に憧憬をおぼえ、こういう地に住めればと思うものである。ともあれ、住んでいる土地の違いによって、人生の幸・不幸が決まるものではない。ゆえに、それぞれの住むその国土で、広布の歴史をひらいていきたいものである。
2  この奈良の地で、皆さま方は広宣流布のために、平和楽土の建設のために、日夜、活動されている。多忙ななか、広布のために走っておられる皆さま方のことを思うとき、少々疲れていても、また何があっても、皆さま方に応えていきたい。広布のために活動しておられる仏子である学会員のためにつくしたい。また、つくさなければならない、との責任感で、私は今日まで動きに動いてきたつもりである。それが私の信仰者としての道であり、学会の指導者としての生き方であると決意しているからだ。
 どうか、皆さまもまた、縁深きこの奈良の地で、広布と信心に貫かれた幸の人生を生きぬいていただきたいと心から祈るものである。
3  広布先駆に誉れの人生
 本日、京都から奈良まで近鉄の電車に乗ってきた。車中でしばし、京都の奥深き峰々をながめ、また平城京跡のたたずまいに目を向けながら、思ったことがある。
 大きく発展した現在の奈良広布の出発は、草創の一つの支部であった。その初代支部長、初代支部婦人部長が、きょうも会場に来ておられる有馬猶二郎・のぶさんご夫妻である。世間の無認識や偏見と戦いながら、今日まで一貫して懸命に広布の道を開いてくださった。もしも御本仏日蓮大聖人が現代に御出現あそばされたとするならば、この有馬さんご夫妻に対し、どのようにたたえ、励まされたことであろうか。また、どのような称讃の御手紙をしたためてくださるであろうか――と。どの地にあっても、いつも私は、功労の方々に対し、そのように思ってきた。
4  有馬さんご夫妻は、まことに人柄のよいおふたりである。しかし真実の仏法を流布したがゆえに、多くの障魔にあってこられた。自宅の塀に悪口を大きく落書きされたこともある。一部の地方紙に悪意に満ちた批判を書きたてられたこともあった。そうしたこともぜんぶ私はうかがい、承知している。しかし、そのような非難のなかを、ご夫妻はまっすぐに、けなげに広布へと戦ってこられた。これほど尊い姿はない。その功労は永久に奈良の広宣流布の歴史に燦然と残りゆくにちがいない。
 私にとっても一生涯、忘れえないご夫妻である。中西吉松県総合指導長とともに、お元気で長寿の人生をと願っている。
 やはり、けなげに戦ってこられた方々のことは、私はけっして忘れることはできない。また何より御本尊が見守ってくださるし、信心の行動というものは、因果の理法でぜんぶ自身の福運となっている。そのように、すべてを信心で受けとめていかねばならない。
 若き現代のリーダーの方々は、こうした尊き先覚者である先輩の存在を、絶対に忘れてはならないと申し上げておきたい。
 現在、この奈良は京大出身で優秀な奥本県長を中心に進んでいる。奥本県長は私が信頼し期待する若きリーダーである。
 一般に奈良の方々は、すばらしい環境のせいか、王朝の舞台をしのばせるような、ゆかしき人々が多いようだ。(爆笑) 竹取の”かぐや姫”の物語に出てくるような、雅なる風貌の方がいらっしゃる。林県婦人部長もそのお一人であろうか。(笑い)また東尾県総合長は、まるで仏法守護の仁王のような面がまえで(爆笑)、まことに頼もしく、安心できる指導者である。
 どうか、これからも奈良は奥本県長を中心に、仲良く、大いなる発展を続けていただきたい。
5  子供をはぐくむ親のあり方
 小さなお子さんをお持ちの若きリーダーの諸君に申し上げておきたい。
 私は、教育者と種々語りあう機会をできるだけもつようにしている。数多くの同志とともに歩みゆく広宣流布の指導者として、子供の教育についても、ぜひとも知っておきたいことが多々あるからだ。
 そのなかで、どの教員の方に聞いても同じ結論に連していることがある。それは”夫婦の陰険な争いが子供に多大な悪影響を及ぼす”という点である。
 夫婦げんかもさまざまであるが(笑い)、外見が派手なだけで、愛情のある争いには、のちのちまで子供の心に残る深刻な影響はないようだ。しかし、陰険ないさかいは、子供の心の奥深くに暗い思いを沈殿させ、純白の心に重い痕跡を刻んでしまうのである。それが人格形成にゆがみを生じさせることにもなる。
 その意味でも、夫婦の争いは慎むべきだし、また、できるだけ子供に気づかれぬよう(笑い)、細かく配慮してほしい。一見、かんたんなことのようだが、子供たちの未来のためにはきわめて大切な点であると思う。
 また、子供の健全な成長にもっとも大切なことは、父母、とりわけ母親が”まじめ”な信心を貫き、多くの人々に慕われる”信頼の人”であることだ。
 いかに多忙であっても、地域と広布のために活躍する母親の懸命な姿があれば、”母はあんなにも多くの人々に慕われ、また多くの人々を激励している。なんと立派な母親であることか”と、子供は親への尊敬の念をおのずと心に芽生えさせていくものである。
 皆さま方のお子さんは、一家の未来を担い、新たな時代を築くリーダーへと育ちゆく子供たちである。その意味から、これからも、真心と慈愛の念をこめ、子供たちと接し、彼らを立派な広布の人材へと育てていただきたい。
 また、戸田先生もよく話されていたことだが、わが子だからといって、いつまでも子供扱いをしてはいけない。子供の人格を認め、ある意味では、対等な大人として語りあっていくべきである。
 かつて、ある英国大使は、幼少のわが子に、一日の出来事をすべて語り、対話していたという。
 子供を”子供”と思って扱っている間は、子供が自身の心を開き、ほんとうの気持ちを打ち明けることはない。大人が自分を低く見ていることを鋭く感じとっているからだ。
 少年少女の感性は、まことに鋭いものだ。人の心を見ぬく鋭さは大人以上といってよい。その繊細な心の眼で、子は親の姿をじっと見ているものである。
6  信心の世界はまじめに
 これは数多く寄せられる手紙や報告等を分析した結果だが、多くの例をみていくと、概して酒にだらしないリーダーのいる組織は発展していないようだ。けっして酒屋さんの営業妨害をするつもりはないけれども(笑い)、酒に関して公私の区別をきちんとしていくべきであると言っておきたい。
 たまたま幹部になって、心おごり、公私を混同した酒の飲み方をする指導者が一人いるだけで、後輩は苦しむものだ。なんとなくいやな雰囲気を組織にかもしだし、後輩はまことに情けない思いをしなければならない。
 しぜん、心が離れ、指導も聞けなくなってくる。心からの歓喜の信心で活動をすることもできず、かえって功徳も消してしまう。
 信心修行においては、どこまでも厳しく公私を峻別していくべきである。あくまで純粋でまじめな世界が信心の世界であるからだ。学会はまじめであり、真剣であったからこそ、ここまで発展したのである。そのことを幹部は絶対に忘れてはならない。
7  さらに、一事が万事で、とくに婦人部の方々がなんとなく、ものが言いにくいような雰囲気をつくってはけっしてならない。女性は”天の半分を支えている”といわれるが、実際にはまだまだ男性本位で、女性が従属しなければならないような封建的な考え方が根強い。しかし、わが学会にあっては、そうであってはならない。むしろ女性優位で、男性は女性の言い分に従っていくというくらいの方が(爆笑)、理想的ではないかと言っておきたい。
 組織にあっては、女性の方々が安心して何でも喜んで話をし、伸びのびと意見を述べていけるという指導者のもとでは、みなが生きいきと活動しているものだ。
 逆に、威圧的で、言いたいことも言えなかったり、何かにつけて叱ったりするような指導者のもとでは、人の心が離れていくのはとうぜんといえよう。感情的に叱るなどということはあってはならない。
 どこまでも婦人の方々にはやさしく、何でも聞いていくという姿勢から出発していただきたい。あくまで女性の皆さんが伸びのびと活動していける組織にしていくことが、これからの時代にとって大切になってくると申し上げておきたい。
8  最後に、朗らかなご家庭であっていただきたい。たとえば、ご婦人方は、広布の活動からの帰宅のさいにも「遅くなってすみません」といった、夫や子供たちへの感謝の言葉を忘れないでほしい。真心の感謝の一言が、なごやかな雰囲気を一家に広げゆくからである。逆に、感謝の気持ちを忘れ、家族に不平をもらすようでは、家庭は和楽とはならない。
 またご主人方は、妻や子供たちへの愛情あふれる対話を心がけていただきたい。ときには、良い意味でのお世辞も大切ではなかろうか。いつも一家の主が、苦虫をかみつぶしたような顔ばかりしていては、家族もいい気持ちがしないものだ。つねに明るい笑顔で、家族に安らぎと安心を与えていける存在であってほしいと思う。
 ともあれ、信心のことでいさかいをしてはならない。信心の功徳につつまれた仲の良い円満な家庭の建設を心からお願いしたい。
9  本日の会合を記念して、次の歌を、皆さん方の代表として県青年部長、県女子部長に贈らせていただく。
  若き将 君に顧まむ 奈良広布
    みなぎる力を 惜しまず指揮とれ
  
  清らかな 心で築けや 幸の道
    三世の旅路の 今日の修行と

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