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団地部全国大会 社会の連帯と協調の先駆を

1978.6.25 「広布第二章の指針」第13巻

前後
1  入信して間もなく、私は東京・大森の新井宿で、アパート住まいをしたことがある。狭くて寒い北向きの一部屋であった。ここで私は二年間暮らした。
 当時、戸田前会長の事業が大変な状況下にあった。そこで働いていた私の日常も、朝は早く、夜は遅くなるというリズムにならざるをえなかった。したがって、アパートの同居者からみるならば――朝は早くて、夜もめったに見たことがない。いったい、この部屋にはどんな人が住んでいるんだろう……(笑い)とうわさしていたようだ。しかし、姿は見えないけれどお経だけは聞こえてくるんだから、いることは確かだ(笑い)……と。
 勤行のときは、隣接の部屋の人たちから小さな声でしてくれ、といくたびも注意をうけたものだ。それで同居者に迷惑をかけてはならないと、一生懸命低い声で勤行するなど、苦労したものである。
 アパート生活は、私の人生に忘れぬかずかずの思い出を刻ませてくれた。ゆったりとしたおつきあいをすると、まことに人情味の深い友情が培われることも知った。
 私の部屋で、よく座談会も開き、折伏弘教もした。二年間のうち何人か入信したときには、たいへんにうれしかった。訪ねてきた多くの同志とともに、広布の未来を語り、外食券食堂にもよく出向いて食事をとりながら懇談もしたものである。現在の北条理事長、辻副会長、中西総務ら数多くの同志と語り明かしたものだ。
2  しかし、一人住まいというのは不便なものだ。靴下がほころびても縫ってくれる人がいない。仕方がないから二、三枚重ねてはいたり、裏返しにしてはいたりしたものだ。(爆笑)自分でご飯も炊いたこともあるが、どうしても軟らかく炊けない。また、あるとき、ふとんが切れたので自分で縫った。それで夜になって床につき、どうもチクチクして痛いと思ったら、ふとんの中に針が入っていた。(爆笑)
 いまとはちがって、当時の大森の地域は蚊がいっぱいいた。この蚊にずいぶん痛めつけられたのも懐かしい思い出である。あとで考えてわかったことだが、他の同居者は、みんな蚊帳をつっていた。そこにいくべき蚊がぜんぶ、私のところにきて痛めつけたわけである。(爆笑)
 また、アパートに入って二年目の九月にこういうこともあった。蚊を退治するには蚊取線香がいいということで、それを買ってきた。なるほど、その晩はぐっすり眠れた。ところが、なんとなく温かく煙につつまれているような夢を見た。と思った次の瞬間、はっと目を覚ましてびっくりした。蚊取線香が一箱ぜんぶ灰になり、部屋中もうもうたる煙につつまれていたのである。(爆笑)
 いま振り返ると笑い話になってしまうが、忘れえぬエピソードである。当時、前会長のもとにあった私は、学会が再建できるかどうかという壮絶な渦中におかれていた。毎日が無我夢中だったといってよい。
 ある寒い一夜にはこんなこともあった。夜中に、私は滝の夢を見た。その滝の中に立っている私は、あまりにも寒くて震えがとまらない。そこで目が覚めて、初めて真相がわかった。私の部屋の上に住む人が、水道の蛇口をあけっぱなしにし、その水がぜんぶこぼれ落ちて、私はびしょぬれのふとんの中にいたわけである。(爆笑)
 私が体験を語るのも、団地部の皆さん方と相通ずるものがあるからと思ったからである。失敗もしたし、さまざまな苦楽も味わってきた。平凡に生き、一個の人間として、また庶民の一人として歩みつづけるところには、互いの共通性が理解できるものである。――それが私の信条でもあるからだ。
3  革新の道ゆく誇りもて
 皆さんが住む団地は、私が住んだアパートの状況とは変わっていると思う。また、人間関係においても、いくらでも友情の輪を広げていける環境に入ったとも考えられる。
 とくに仏法を基調に長期の視点からみていくならば、たとえ一時的に反感をもたれるような場合があったとしても、最後は妙法に縁し、結ばれていくものだ。この意味で順縁逆縁の原理を、深く銘記していただきたい。
 団地社会の広がりは、時代の要請といってよい。
 社会の根本は連帯である。その連帯の先端で結びあい、協調しあっていかなければならない団地部の皆さんこそ、もっとも革新的な世界で活躍されている方々であると強調しておきたいのである。したがって、もっとも革新性にとんだ社会の前駆を行く誇りを忘れないでいただきたい。
4  過日、北海道指導に赴き、多くの北海の同志と語りあった。雪深い北海道においては、お互いに守りあわなくては生きていけないという生活習慣が、一人ひとりの身についているということである。その点、雪国は非常に心と心が結びあっている社会といえる。
5  時代の進展のうえから、また人間性社会という面からみた場合、人間としてはつらつと前進していくためには、現代の都市生活には、さまざまな連帯上の課題はある。しかし皆さん方は、団地それ自体が連帯の象徴であり、そこで信心していることは、家族以上の強い絆で結ばれた社会であると確信していただきたいのである。
 団地の団は、団結にも通ずる。この意味からも、われわれこそ、もっとも理想的な人間の協調の社会をつくりあげている主体者なのだという気持ちで、団地生活をより楽しく、はつらつと社会の最前線で活躍していかれるよう願ってやまない。
6  なお、小説「人間革命」第十巻”展望”の章を、七月一日より聖教新聞紙上で連載を再開するべく、本日より編集部の方へ原稿を回し始めた。ご支援のほどよろしく願いたい。(大拍手)
 最後に、皆さん方の無事安穏とご多幸を心よりお祈り申し上げ、本日の指導とさせていただく。

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