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創価高校第6回卒業式メッセージ 「境智行位」で栄光の座を

1976.3.16 「広布第二章の指針」第8巻

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1  私はいま、岡山県におります。この岡山の地より、はるか諸君の卒業式を見つめながら、万感こめてあいさつをさせていただきます。
 陽春三月のこの日、親愛なるわが学園の卒業生諸君、多年の研鑽の功なって晴れのご卒業、まことにおめでとう。私は、諸君にもっとも深くかかわりあいをもった一人として、まことに喜びにたえません。心からお祝い申し上げるしだいでございます。
 また、父兄の皆さま方、私は、ただいまの皆さま方の親心、うれしさのなかにも深く複雑な感慨をそのまま一緒に共感させていただいております。ほんとうにおめでとうございました。さらに、校長先生をはじめ教員、職員の皆さま方、そして裏方の推進役を引き受けてくださった下宿の皆さん、卒業生諸君をよくもここまで、ご訓育くださいました。あらためて厚く御礼申し上げるしだいでございます。ほんとうにありがとうございました。
 それが天職とは申せ、連々たえざるご努力は、じつに容易ならざるものではなかったかと思うのでありますが、これからも、なおなお、よろしくお願い申し上げるしだいでございます。今後、先生方も関係者諸氏も全生徒も、それに不肖私も、みな打って一丸となって全校あげて、さらにこの学園の健全なる発展へ、努めてまいりたいと思いますので、なにとぞよろしくお願い申し上げます。
 巣立ちゆく卒業生諸君に申し上げます。世に「故郷忘じがたし」という言葉があります。世の荒波にもまれて、年とともに故郷なつかしの思いがつのるという、当然なる人間心理をいいあてた言葉であります。この学舎は諸君にとってまさに「精神の故郷」の思いがするところではないかと思うのであります。そういう意味のうえで、人らしい人なら、将来いろいろと青春を発散したこの学園を懐かしむようになることは間違いないと思うのであります。
2  そこで私は諸君に対して、もう一歩深く立ち入った人間愛の自覚を提唱したいのであります。それは「魂魄をこの土にとどめて」というように、永久に自分の魂を学園にとどめるという点であります。ただ、懐かしむだけなら自分と対象とのあいだに、まだ距離がある関係でありましょう。それに引き換えて魂をとどめてある関係ならば、距離はまったくなくなって、それは自己と対象とが、いつでも一体に同化している状態であります。万事、断絶だらけの現代において、見事に断絶を乗り越えた境涯であります。そういう信念の持ち主であれば若輩ながら大人にも勝る立派な人物ではないかと思うのであります。それならば、まったく同じ労によって、ともに机を並べて苦楽を分かち合った学友同士も生涯にわたって、ますます連帯の絆が強まっていくと思うのでありますが、諸君、いかがでありましょうか。
 諸君、思い出多いこの武蔵野の自然は、まことに平和であります。昨今の世相などウソみたいであります。だが、実社会の現状というものは、なんともトゲトゲしいありさまで、諸君も十分にご承知のとおりであります。不況のあおりが学生の世界にまで押し寄せて、今年の大学卒業生は、二割強もが就職不可能、就職浪人の悲哀を余儀なくされておるそうであります。それを敏感に感じとった大学受験生たちは、有力な大学の、頼りになりそうな学部へ、いっせいに押しかけていった。そのため、そうした大学の学部の競争率は、軒並み去年の倍から倍以上にハネ上がったとも伝えられております。まったくたいへんな話であり、世相であり、時代であります。それに引き換えて、皆さん方は全員が進学志望で、その多くは創価大学へ推せん入学ということになっております。全国の受験生が精根をすり減らし、青春をすり減らしているのに比べれば、生命力に余裕をもち、バイタリティー、エネルギーをより多く保っていけるということは、たいへんな未来への財産であると思うのであります。そこで私は、その有利さを大学へ行ってから、有効に利用してほしいと思うのでありますけれども、どうでしょうか。
 文化、つまりカルチュアという語の原義は耕すという意味だそうであります。諸君は諸君がいまもっているこの有利さを生かして、大学四年のあいだに、ぞんぶんに自分自身を耕して、きたるべき社会進出のときに備えてくだされば、私はほんとうにうれしく思います。諸君が大学を出るころには、世相も落ち着くところに落ち着いていくことでありましょう。
3  ともあれ、諸君は、福運をもっているのであります。ひとつ、肝っ玉を大きくして、ここから巣立っていってください。
 東洋古来の哲理のひとつに「境智行位」という経験則がございます。この本来の意味、解説というものはここでは申し上げませんが、今後の諸君にあてはめて、ひとこと門出のはなむけといたしたいと思います。はじめの「境」とは、諸君が取り組むべき大学生活の全体であり、せんじ詰めれば、まさに自分自身のことであります。「智」については、邪智を排して英知を光らせていく、「行」については、純真な情熱を燃やして体当たりし、もって「位」においては、どっしりした栄光の座を勝ち取らんことを心から祈るものであります。
 さて、在校生の諸君、諸君のよき兄だったたくましい先輩たちが、ただいまこの場から未来へと旅立ってまいります。いままでの友誼と好意の指導に万感の謝意を表明しつつ、おおいなる拍手をもってお送りしてあげてください。
 終わりに臨んで卒業生はもちろんのこと、全学園の皆さま方のご健康、ご多幸を心からお祈り申し上げるしだいであります。ご来賓の皆さま方におかれましては、ご多忙のなかわざわざおいでをいただき、厚く厚くこの地より御礼申し上げます。では卒業生諸君、いつまでもお元気で。

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