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創価女子中学・高校第3回入学式――メッ… 人間としての”芯”を確立

1975.4.9 「広布第二章の指針」第6巻

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1  本日は、希望にあふれての晴れやかな入学式、まことにおめでとうございます。創価女子中学も高校も、本年でいよいよ開学三年目。初めて一年生から三年生までの全学年の生徒の皆さんの顔ぶれがそろいました。
 春の陽光を浴びて萌え出した、この交野の里の木々の若芽のように、皆さん方一人ひとりの生命のなかには、力強く伸びゆく力と可能性が秘められています。
 門出の日にあたり、私は、皆さんにいくつかのお願いと約束をしておきたい。
 まず「自分をよく知り、自らを鍛えていこう」ということであります。エマーソンは「偉大なことで熱意の力なしで成しとげられたものは一つもない」といっている。熱意こそは、明かりをともす発電機のようなものであり、人を動かし、眠っているエネルギー、才能をゆり起こし、偉大なる成長へと導くものであります。
 勉強とは「強いて勉める」と書きます。弱い心や障害と戦いながら、向上に努めなければならない。そのさい「だれでも、時には熱心になるものである。ある人は熱意をもつのがたった三十分であり、ある人は三十日間である。しかし、人生で成功するのは三十年間の熱意を持ち続ける人間である」とのエドワード・B・バトラーの指摘も心しておきたい。なにごとをなすにも、持続の二字こそ偉大なる力なのであります。
 精神や知識の面だけでなく、肉体をもおおいに鍛えて、健康をわがものとしていただきたい。みがいた人格も、たくわえた力も健康であって初めて生きてくるからです。
 そのうえで、おのおのの特性を伸ばし、個性的な人になっていただきたい。皆さんもよく口ずさむ「春の小川」という歌に「岸のスミレやレンゲの花に……」という歌詞がありますが、春の野の花々がそれぞれに「においやさしく、色美しく、自分らしく精いっぱいに咲き誇っている」――こんな光景を、私は皆さんの未来の姿と二重写しに思い浮かべます。
 そうした自分らしさのなかで、つねに新しいものを作り出そうとする創造性と、人のため社会のために貢献しようとする社会性を、持ち続けてほしいのです。平凡な生活のなかにも、新鮮な感動、喜びを発見できる人は、自己を創造的に生きているといえましょう。風にそよぐ一枚の木の葉にも、脈打つ光の鼓動を聞いてほしい。道端に咲く名も知らぬ野草にも美しさを発見できる心を養ってほしい。しかし、それは感傷であってはならない。強靱な生命力でいかなる荒波も乗り越えていく、正義と勇気のうえの心の豊かさであっていただきたい。
 次に「福徳のある人に」ということを申し上げたい。「幸いは心より出て我を飾る」という格言がありますが、自分を深く耕して、人間としての力、奥行きと広がりをつちかい、わが身のなかに、人から敬愛され、守られ、また一切の環境を切り開いていける”生命の財産”ともいうべき福運を、築いていってほしいのです。
 本年は「国際婦人年」にあたり、この十日からは「婦人週間」も始まる。女性の生き方、地位向上等について盛んな論議が展開されていくでありましょう。が、社会的な差別等のもう一歩奥に、大事な問題があるように思う。
 ここに一人の例をあげてみたい。明治三十年代に浪漫主義の歌人として活躍した与謝野晶子の名は、歌集「みだれ髪」などとともに皆さんもよくご存知でしょう。彼女はこの学園と同じ大阪府は堺市の、練り菓子の老舗に生まれました。彼女の女性としての生き方には、いろいろな側面があると思いますが、私は彼女の優れた面を二、三あげてみます。
 日露戦争に出征する弟の身を案じて作った「君死にたまふことなかれ」の詩は、市民の立場からの反戦の叫びとして有名です。当時としてはたいへんに勇気のいることでした。晶子は国粋主義者たちから激怒をかい、過激な糾弾をうけます。しかし彼女はひるまず、ペンで戦いぬいたのであります。
 私が注目したいのは、こうした彼女の、男にも勝る勇気と才能豊かな活躍が、十一人もの子供を育て、家計のやりくりに苦労しながらの庶民の日常生活の地平から発しているということであります。
 しかも彼女は、子供たちには、手作りの菓子を与え、やんちゃ盛りの子供の着物を縫い、洗たくし、自作の童話を語って聞かせるというように、母親としても見事な姿を示しています。ごうごうたる世間の非難や圧迫、経済苦にも一歩も退かず、愚痴もいわない強さの半面に、この心やさしき、豊かな情感その生活は貧しくはあっても、愛情に満ちあふれ、心の綾に美しく彩られていたことでありましょう。彼女はけっして環境に甘えてはいなかった。邪悪なものと戦い、自己の内に豊かなものをたくわえ、それを赤々と燃やし続けて、人間らしく生きようと努めたのだと思います。
 結局は、女性であるとともに、一人の人間としての”芯”を確立していくことこそが大切になってくるということであります。
 皆さん方は、万葉の昔からの歴史の息吹と豊かな自然環境を呼吸し、よき友、よき先生たちと交わり、豊かな人間陶冶の三年間を過ごされますよう、そして、皆さんの生命の小窓ともいうべき純粋なひとみの輝きをいつまでも失ってほしくない、透明な精神の鏡を、世の汚濁の荒波やゆがんだ才智にくもらせてほしくないと祈りながら、私の本日のお祝いのあいさつといたします。

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