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新時代第35回本部幹部会 ワイマール・ゲーテ協会特別顕彰授与式、創立80周年記念第2回全国青年部幹部会

2009.12.12 スピーチ(聖教新聞2009年下)

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2  一流に学べ!
 ここで、本日ご出席いただいた、ワイマール・ゲーテ協会顧問のオステン博士についてご紹介したい。
 博士は、ドイツのケルン大学で法学博士号を取得された後、外交官として活躍された。
 その間、1986年から92年まで、在日本ドイツ大使館にも勤務されています。その時代から、私についても研究してくださったとうかがいました。
 きょうの出会いを、本当にうれしく思います。
 博士は、父君の影響で、幼少のころからゲーテの作品に親しんでこられた。素晴らしい教育です。
3  どんな分野であれ、「一流」に触れさせる意味は大きい。
 きょうのこの会場にも、お子さんをもつ親の方々がおられるでしょう。
 子どもにゲーテのことを語れば、「お父さん、すこいな!」と尊敬される。
 頭ごなしに「こうしなさい」「ああしなさい」というだけでは、子どもも嫌になる。それよりも、よき刺激を与えることだ。偉大なものに触れてこそ、目が開かれるのです。
 本来、仏法は普遍の英知を説いている。ゲーテに学ぶことが、最も価値ある人間の道に通じていくのです。
4  欧州の文化首都
 かつてオステン博士は、ドイツSGIのヴィラ・ザクセン総合文化センターで、素晴らしい講演をしてくださった。この場を借りて、感謝申し上げます。
 博士が顧問を務める「ワイマール・ゲーテ協会」は1885年、ドイツ中部の都市ワイマールに、ゲーテ研究の推進を目的として設立されました。
 ワイマールは、ゲーテが政治、文化、芸術の活動の拠点として、長年にわたって住んだ天地です。
 現在も、ヨーロッパを代表する歴史と文化の都市として知られ、1999年には「欧州文化首都」に選ばれています。
 ワイマール・ゲーテ協会は、ヨヘン・ゴルツ会長のもと、世界50カ国に約3,500人の会員を擁します。
 欧州のみならず、南米やアジアにも研究者のネットワークを広げています。
5  それは1777年、ドイツの寒い冬のことでありました。
 北風に向かって、勇んで28歳の若き指導者が馬に乗り、旅を続けておりました。
 冷たい雹が降っても、青年は、ひるまない。ワイマールの都から遠く離れた、悩める無名の友のもとへ、青年は森を抜け、山を越えていきました。
 一人を励ますために走った、この若き指導者こそ、私たちの敬愛するゲーテなのであります。
 大変な中を、ただ友のためにと行動する。学会の活動、仏法の修行も同じです。
 こういう人が偉くなるのです。このことを忘れないでいただきたい。
 自分は苦労を避けて、楽ばかりしている人が、偉大になるわけがない。
 一番貧しい中で、一番大変な中で、一番陰で戦った人こそが、本当に偉大な人間になるのです。
 ゲーテは叫んだ。
 「人間よ 気高くあれ」(星野慎一訳『ゲーテ詩集』潮文庫)
 ちょっとしたことで落ちこんだり、すぐにくたびれて、だらけたり、意気地なしになったりしてはいけない。
 “気高くあれ! グッと胸を張れ!”──これがゲーテの心でありました。
 彼は、こうも言う。
 「進んで人を助け善であれ!」(山口四郎訳「くさぐさの歌」、『ゲーテ全集1』所収、潮出版社)
 学会活動、仏法の精神にも通じる言葉です。
 そして、「正しいことを つねに倦むことを知らずおこなえ」(高安国世沢「神性」、『ゲーテ全集第1巻』所収、人文書院)と。
 ゲーテの訴えは、仏法者の行動とも、深く響き合っている。
 私は若き日に、戸田先生から、「ゲーテを読んだか」「どこまで読んだか、内容を言ってみなさい」と厳しく鍛えられた。
 「ゲーテのように生きなさい! 戦いなさい!」と、何度も何度も言われました。
 戸田先生も私も、ゲーテが好きでした。世界に輝く大文豪です。
 一生懸命、読み、研究しました。
 青年時代に住んでいたアパートの本棚には、ゲーテの著書がたくさん並んでいた。
 また、妻もゲーテが好きで、一緒に、ゲーテについて語り合ったことを思い出します。
 ともあれ、ゲーテの文学を読む人は多い。しかし、その精神を受け継いで行動を起こす人は、どれだけいるだろうか。
 ここにお迎えしたオステン博士をはじめ、貴協会の方々こそ、高貴なる「ゲーテ精神」の体現者であります。
 きょうの出会いを、私は心から楽しみにしておりました。
 尊きご夫妻に、万雷の拍手をもう一度、送りましょう!(大拍手!)
6  勇気と信念の翼を広げよ!
 オステン博士が、意義深き「ゲーテ・メダル」を、どれほど深いお心でお持ちくださったか。
 連絡をいただいた時も、今も、私は心の中で涙を流しました。誠に、ありがとうございました。
 大文豪の命が光る、この人類の宝のメダルには、「行動せよ。翼を持ったわが友、ペガサス」と刻まれている。
 このメダルが、いかに貴重なものか。私は、よく存じ上げています。
 ゲーテが依頼し、12個しか作られなかったうちの一つである。〈1816年制作〉
 まさに“宝の中の宝”である。
 私は、貴協会のご厚情に、世界192カ国・地域の青年とともに、ゲーテの心を携え、勇気と信念の翼を広げて、お応えしていく決心であります。
7  感謝の心を忘れるな!
 オステン博士は、ゲーテの報恩の心を通して、「感謝の念をもって生きるとき、はじめて生命は意義深いものになる」と強調しておられます。
 仏法でも報恩を説きます。まさしく博士の主張は人生の法則に則っておられます。
 人間の道に背く恩知らずを許してはならない──それがゲーテの心でありました。
 ここで私たちは、大変に母思いであり、母を大切にしたゲーテを見習って、世界の偉大な母たちに敬意を表し、「婦人部の皆様、ありがとう!」と心からの感謝を捧げてまいりたい。〈参加者が立ち上がって、婦人部に感謝の言葉を贈り、最敬礼した〉
8  「仇を討つ!」
 お母さんを大事にするのです。それを忘れてはいけない。
 特に若い皆さんに、そう申し上げておきたい。
 終戦のとき(1945年〈昭和20年〉8月15日)、私は17歳。
 わが家もまた、例に漏れず、あの戦争に苦しめられた一家でした。
 戦時中、私の4人の兄は次々と戦地に召集された。
 一家の柱の父も病気がちで、母の苦労は並大抵ではなかった。
 その母を助けたいと思い、私は小学校6年生の時から3年間、新聞配達もしました。
 昭和20年に入ると、わが家は強制疎開で取り壊され、新しい家も空襲で直撃を受け、灰燼に帰した。どん底の中のどん底でした。本当に苦しみました。
 だから私は、戦争反対です。戦争が憎い。
 初代会長の牧口先生は、誤った思想を奉じて戦争を遂行した軍部政府に、真っ向から反対して投獄され、獄死されました。
 第二代会長の戸田先生も、牧口先生にお供して、2年間の獄中生活を強いられました。
 この獄中で、牧口先生の死を知らされた戸田先生は、独房の中で、ただ一人、涙にかきくれました。
 そして、「必ずや牧口先生の仇を討つ!」と心に誓い、出獄後、平和への大闘争に立ち上がっていかれたのです。
 ここに創価学会の師弟の原点があります。
 戸田先生のもとで、「平和の世紀」を開くために戦った私もまた、正義の民衆の団体を弾圧せんとする権力の横暴によって、無実の罪を着せられ、牢獄に入りました。
9  いかなる行動をしているか
 こうした生死を越えた経験を通して、恩師の戸田先生が、弟子の私に何度も教えてくださったことがあります。それは、次のようなことでした。
 「どんなに立派な肩書を持った人であろうとも、人間は人間である。相手の立場や地位を見て、ペコペコと頭を下げたりしてはならない」
 「人間にとって大切なのは、いかなる思想を持ち、いかなる行動をしているかだ。
 ゆえに人類最高の思想を学び、人々の幸福のために行動している創価の青年は、どんな人に対しても、胸を張って、堂々と、わが信念を語っていくのだ」
 「一番大事なのは民衆である。創価学会は民衆の団体だ。青年が主体である。
 ゆえに、どんな時も強くいけ! 勇気! 勇気だ!」と。
 民衆こそ王者です。若き皆さんには、恐れるものなど何もない。
 勇気をもって、希望をもって、朗らかに、また堂々と、わが胸中の正義を叫び抜いていただきたい。
 それがゲーテの生き方でした。よろしく頼みます!
10  言葉が大事! 態度が大事!
 きょうは未来部の代表も参加している。本当にうれしい!
 未来部の皆さんは、学びに学んで、親孝行をしてください。
 親に苦労させたり、苦しめたり、悲しい思いをさせてはいけない。
 いろいろあるだろうけれど、どんな親であっても、心の中では子どものことが心配でならない。皆さんのことが一番大切なのです。その心が分からないといけない。
 親に喜んでもらうのです。ほっとさせ、安心させてあげるのです。
 そのためにも、皆さん方は、言葉を大切にしていただきたい。はっきりと言葉に表してこそ、心の思いは相手に伝わっていく。皆さんの言葉と態度が大事です。それは、何よりも価値があるのです。
 親の言うことには、「ハイ!」と返事をする。それができるのが、大きな心の人だ。
 時には、「お母さん、きょうは私がお手伝いするから休んでいてください」と優しい言葉をかけてあげるのです。一言、そう言えば、どれほど、親はうれしいか。きっと陰で涙を流して、喜んでくれるでしょう。
 未来部、そして青年部の皆さん、親孝行を頼みます!
11  どんな境遇でも勉強できる
 ゲーテは、わが青春の魂の友であります。
 私は、読んで読んで読みまくりました。
 ゲーテというと、やはり戸田先生のことを思い出す。一流の教育者であり、何もかもご存じの天才的な指導者であられた。
 軍国主義に抵抗し、断じて信念を曲げなかった先生は、「牢獄で2年間、勉強したよ」ともおっしゃっていた。
 どんな場所でも勉強できる、大境涯を開いていける──そのことを身をもって示された。立派な、不世出の先生でした。虚偽を見破る鋭さは、怖いほどでした。
 ゲーテは“優れた師に学び、さらに発展させよ”と教えた。ゲーテ自身も、そうでした。
 彼は”偉大な師匠を見つけよ。その人に学ぶことが、一番大事なのだ”と示唆しております。
 この賢人ゲーテの励まし通り、私は師弟の道を走り抜いてまいりました。そして広宣流布を進め、世界中に仏法を広めました。世界の各地に、未来への“第一歩”を印したのです。
 きょうは海外の同志の皆様、本当にご苦労さま! ありがとう!
 本当に、本当にありがたい方々である。
 皆で拍手を送りましょう!
 はるばる遠くから、大変な苦労をして来てくださったのである。
 尊い志の同志に対して、幹部が「よくお越しくださいましたね!」と心を込めて迎えるのは当然のことです。
12  人を活気づけるものは「対話」
 戸田先生と私は、ゲーテをめぐって何回も何回も語り合いました。偉大な師匠だった。あらゆることを教わりました。
 社会変革への燃える心を、まだ若い20代の私に対して、深く深く打ち込まれた。
 そして私もまた戸田先生に、民衆のための闘争を誓ったのである。
 きょうは懐かしき語らいを思い起こしつつ、ゲーテから学ぶ指針を3点、お話ししておきたい。
 第1は、「対話」であり、「友情」であります。私たちでいえば、友の幸せを願い、正義と真実を語り抜く「折伏」に通じるでしょう。
 ゲーテは、こんなやりとりを記している。
 ──金よりも素晴らしいものは何か?
 それは光である。
 光よりも活気づけるものは何か?
 それは会話である、と(国松孝二訳「ドイツ亡命者の談話」から。『ゲーテ全集第8巻』所収、人文書院)。
 学会は「対話」で勝ちました。「折伏精神」で勝ちました。これからも大いにやろう!〈会場から「ハイ!」と勢いよく返事が〉
 勇敢なる「対話」の人こそ、創価のリーダーである。
 そして、リーダーならば、同志が本当に喜び、心から安心できる、そういう展望を示していくことです。
13  「抜苦与楽」の心
 ゲーテは、この世から苦しみを少しでも減らしたい、皆に喜びを贈りたいと願って、一生を過ごした。
 仏法の「抜苦与楽」の実践にも通ずる。
 そのゲーテの武器こそ、「対話」だったのであります。
 私も「対話」で世界に「友情」を結んできました。今や192カ国・地域に、たくさんの学会の同志がおられる。
 日本だけではない。世界中の民衆と「対話」を広げてきたのです。
14  世界の指導者と深めた『友情」
 各国の大統領や首相とも、私は、胸襟を開いて語り合ってきました。
 そのなかには、生涯にわたる友情を結んだ方々も少なくありません。
 統一ドイツのヴァイツゼッカー初代大統領も、私の大切な友人です。二人で、いつまでも語り合いました。
 オステン博士の王者の風格は、この哲人大統領と実によく似ておられると申し上げておきたい。
15  知姓と行動光る人間王者たれ!
 きょうは、大切な宝の友人である、インドネシア大学の先生方も出席してくださった。誠にありがとうございます。
 インドネシアの信念の大作家プラムディヤ先生は、「素晴らしい友情は炎の敵意にまさる」(押川典昭訳『プラムディヤ選集5』めこん)と綴られた。
 権力でもなく、利害でもない、大誠実で築かれた心の友情ほど強いものはありません。
 どうか、偉大なる創価の青年部の君たちもまた、世界一の「平和と人道の大連帯」を、さらに強め、開いて、若き創造者としての出発をお願いしたい。
 「若き創価のゲーテたれ!」と私は叫びたい。いいですね!〈青年部から「ハイ!」と力強い返事が〉
 ゲーテは、実践も強い。頭もいい。知性と行動、その両方が優れている。これが本当の人間王者です。
16  人間革命の前進
 ゲーテに学ぶ第2は、「人間革命の前進」であります。
 ゲーテは、人間形成の物語の中で、「世の中のいちばん役立たずに見えた」女性が、人々とともに、地道に、そして立派に活躍しゆく挿話を描く。「人間とはどんなに変りうるものか」とも記しています(登張正實訳「ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代」、『ゲーテ全集8』所収、潮出版社)。
 人間は限りなく向上できる──これこそ、仏法とゲーテが目指しゆく「人間革命」の軌道にほかならない。
 大事な一点です。
 わが胸中の太陽を輝かせながら、どこまでも強く、明るく、晴れやかに、喜びの光を広げていくのです。
 この希望と充実の花の道を、“華陽の乙女”女子部の皆さんは、朗らかに進んでください! 愉快な前進をお願いします!〈「ハイ!」と女子部の友の快活な返事が〉
 一人ももれなく、幸福になるのです。
 大切なことは、悩みにぶつかった時に、相談できる人、信頼できる人をもつことです。
 愚かであってはならない。つまらないことで、苦しんではいけない。何でも、ご両親や先輩、友人に相談しながら、賢明なる青春を送ってほしい。
 私と妻は、心から、そう祈っています。
 ゲーテは別離、病、誹謗にも負けなかった
17  永遠に勝利の大生命を開け
 ゲーテに学ぶ第3は、「永遠に勝利の大生命を開きゆくこと」であります。
 人間らしく、自分らしく、大いに羽ばたいていける土台をつくらなければならない。
 ゲーテは大病に苦しんだ。最愛の家族にも先立たれた。最も高貴な行動を貫いて、最も卑劣な誹謗を浴びた。
 しかし、断じて負けずに、わが生命を威風も堂々と燃え上がらせて戦いました。
 「日のある限り、活動せよ!」(木村謹治訳『ゲーテ全集第32巻』改造社)と。
 そしてゲーテは、死をも悠然と見つめながら、 “生命は永遠に活動を続けるものだ”と確信していた。
 〈ゲーテは、「われわれの精神は、絶対に滅びることのない存在であり、永遠から永遠にむかってたえず活動していくものだ」と語っている(エッカーマン著、山下肇訳『ゲーテとの対話』岩波文庫)〉
 生命は永遠である。
 ゲーテの洞察は、仏法に近かった。
 ともあれ、わが壮年部の皆さん!
 ゲーテのごとく、師子となって戦ってもらいたい!
 若々しく、はつらつと!
 90歳になっても「まだ20歳ですか?」と言われるくらいの気概でいこう!
 青年たちのために、心を尽くすのだ。婦人部・女子部に最大に感謝していくのです。
 威張る人は、誰からも尊敬されないものだ。
 感激もなく、挑戦もなく、うまく立ち回る、要領だけの人間になってはいけない。
 皆のために働けば、気持ちがいい。健康にもいい。
 私はまだ、81歳で青年の心意気です。あらゆる勝利への手を打ち、前進しています。
 どうか皆さんも、最前線の友の意見によく耳を傾けながら、一段と頼りにされ、信頼される名指導者になっていただきたい。
18  悩みに負けるな 自分らしく光れ
 かつてゲーテが自らの全集を寄贈したアメリカのハーバード大学で、私は2度、講演いたしました。
 そこで私は、仏法の生死観の真髄を「生も歓喜、死も歓喜」と論じました。
 〈SGI会長は2度目の講演「21世紀文明と大乗仏教」で、生死の苦の解決こそ、哲学・宗教の出発点であったと指摘。大乗仏教で説く「大我」とは「一切衆生の苦を我が苦となしゆく『開かれた人格』の異名」であるとし、「大いなる人間性の連帯にこそ、いわゆる『近代的自我』の閉塞を突き抜けて、新たな文明が志向すべき地平があるといえないでしょうか」と展望。そして「『生も歓喜であり、死も歓喜である』という生死観は、このダイナミックな大我の脈動の中に、確立されゆくことでありましょう」と述べている〉
 終了後、万雷の拍手を送っていただいたことは、今もって忘れることができません。
 また、フランス学士院、中国社会科学院や北京大学など、世界各地の学術機関で講演を行ったことも、懐かしい思い出です。
 ともあれ、いかなる苦難があろうとも、大宇宙の法則に則って、正義の道を開き、人々の幸福を祈り、今を真剣に生ききっていく。その生命は、生死を超えて、歓喜に躍動するのです。
 太陽が輝いて全世界を照らすように、永遠の大歓喜に生命が包まれる。その原動力が仏法です。
 その反対に、悩んで、悩みに負けて、いつも不満ばかり。自暴自棄になって、人の幸福を妬む。人を蹴落としても、自分さえよければいい──そうした醜い心に支配されてしまえば、結局は不幸である。愚かです。
 大歓書の人生を生きよう!
 戦おう、大いなる希望のために!
 そこに人生の醍醐味がある。
 自分らしく、自分の夢のために生ききって、素晴らしい毎日を送るための信仰です。
 これを実行しょう!〈「ハイ!」と元気な返事が〉
19  生き生きと!
 ゲーテが生涯をかけて挑戦し続けた、教育の発展も、文化芸術の興隆も、福祉の政治も、そして人類の平和と幸福も、その根幹には、正しき生命観・生死観の確立がなければならない。
 これが21世紀の焦点であります。私がお会いした世界の識者も、この点に深く共鳴しておりました。
 私たちは、「常楽我浄」の生命哲学の旗を高く掲げたい。
 生き生きと、若々しく進もうではないか!──そう呼びかけるゲーテの声が、私の胸に響いてならない。
 ゲーテが願い求めた「人間の尊厳」のために、我らは、学会創立80周年の明年も前進しよう! 断固として、自分自身が勝ちまくっていこう! いいね!〈「ハイ!」と力強い返事が〉
 わが使命の戦野に躍り出たならば、勝たなければ損である。
 何のために生きているのか。何のために仏法があるか。
 それを胸に刻んで、「断じて負けるな!」と申し上げたい。
20  私の青春時代、師匠である戸田先生にゲーテの詩をお聞かせ申し上げた光景は、今も心に鮮やかです。
 先生の日々の薫陶は、正義が勝ち栄える社会を築きゆくためでありました。
 結びに、懐かしいゲーテの詩の一節を朗読して、御礼のあいさつといたします。
 「わたしはいつも人間のよろこびを謳う
  ただしい道をそれぬかぎり/人間は実にうつくしく/永遠に人間は偉大である」(大山定一訳「しろがねの真昼は…」、『ゲーテ全集第1巻』所収、人文書院)
 悲しみの道ではなく、喜びの道を、そして正しい道を、まっすぐに進むのだ。
 そしてまた──
 「臆することなく起って進め、/世の人々はためらい惑うとも。/気高い者が明知と勇気をもって事にあたれば、/すべてのことは成就するのだ」(手塚富雄訳『ファウスト』中公文庫)
 ダンケ! ダンケ!(ドイツ語で「ありがとうございました!」)
 誠にありがとうございました。
 きょうの式典のことは、ゲーテの詩歌とともに、皆、一生涯、忘れないでしょう。
 海外の友も、未来部の皆さんも、本当によく来られた。ありがとう!

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