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新時代第22回本部幹部会 広布第2幕第11回全国青年部幹部会

2008.9.30 スピーチ(聖教新聞2008年上)

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2  中途半端を排せ
 世間が暗くとも、いな、暗い時こそ、我らは景気よく、威勢よく進みたい。
 周囲までも、もっとパッと明るくなるようにしていくのだ。
 学会の会合は、世界一、元気のよい、勇敢な、朗らかな集いでなければならない。
 出発する前から疲れてしまって、「また会合か」「また戦いか」――そういう人の集まりだと、拍手の音まで疲れている。
 草創の会合は、拍手一つとっても、わっと盛大で、力強かった。
 そうすれば、自分も元気になる。第一、体にもいい。
 何事も、中途半端は意味がない。半分、居眠りしているような姿勢では、悔いなき人生は生きられない。
3  勢いよく進もう!
 ありがたいことに、私は今、全同志の皆様を代表して、世界の多くの大学等から、「名誉学術称号」の授与決定の知らせをいただいている。
 〈これまで池田名誉会長に寄せられた、世界の大学等からの名誉学術称号の決定通知は「264」。受章は「243」に及ぶ〉
 これが、創価の平和・文化・教育運動に対する、正視眼の評価なのである。
4  原点を忘れるな
 きょうは、創価大学・女子短大の教職員の代表も、参加されている。本当にご苦労さま!
 名誉学術称号は、教育界、学術界における最高の誉れである。
 創立者への栄誉は、とりもなおさず、あとに続く教職員、学生の皆さんへの栄誉であることを、深く知っていただきたい。
 創立の精神こそ、創価教育の根幹である。
 そのもとに集ったという原点を忘れたならば、最後は必ず、さびれていってしまう。
 どうか皆さんは、学生と喜びを分かち合いながら、創立の精神が燃え上がる、理想的な学府を築いていっていただきたい。
 ともあれ、21世紀は教育の時代である。未来は教育から始まる。教育が歪めば、一切がおかしくなる。
 今や、「創価大学に行きたい」「女子短大に通わせたい」という声が、数多く寄せられるようになった。
 しかし、教職員が、みずみずしい息吹を失ってしまえば、輝く伝統は崩れてしまう。
 常に生き生きと、花が咲き、道が開け、太陽が昇るような心で行動していくのだ。
 明るく快活に、青年に接していきたい。
5  学会にあっても同じである。油断を排してきたからこそ、学会は、ここまで勝ち続けてきたのだ。
 どんな団体も、衰亡する時は、上が、だらけている。慢心になり惰性に陥っている。
 学会の幹部は、そうなってはいけない。力強い声で語るのだ。皆から頼られる存在になっていただきたい。
6  「祈り」で勝て
 インド独立の父マハトマ・ガンジーいわく。
 「あなたの崇高な夢、大志は、必ず実現されるでしょう。良い目的のために努力すれば、それは決して無駄になることはない」と。
 強き意志のあるところ、夢を実現する道は必ず開かれる。
 いわんや、私たちには、「祈り」がある。絶対に勝つことができるのだ。〈「ハイ!」と力強い返事が〉
7  民衆に最敬礼を
 私は、青春時代からの読書のなかで、味わい深い一節一節を、数多く心に刻んできた。文学と世界を思索しながら、生きた学問を深めていった。
 読むべき本を読み、学ぶべき人から学ばなければならない。
 そうでなければ、厳しき現実社会で、使命の戦を戦い抜くことはできない。
 日本の小説家・山本周五郎は、勢いある筆で、こう述べている。
 「戦は生きもので決定的なところへゆくまで勝敗はわからない、そして勝敗を決するものは勝つという確信だ、勝つと信ずるものが必ず勝つんだ」(「水の下の石」、『青べか日記―わが人生観28―』所収、大和出版販売)
 このように、急所を教える名文句を、昔は為政者も、教育者も皆、覚えていたものだ。
 ともあれ、人生は勝負である。勝って、勝って、勝ちまくるのだ。自らの力を振り絞って!
 気取りや、人まかせの心があれば、勝ち続けることはできない。
 まして、人間として大切な恩を忘れ、広宣流布を忘れ、わが心を魔に食い破られれば、最後の勝利をつかむことなどできない。
 仏法の真髄は、人の振る舞いにある。威張り、格好をつけるリーダーは、愚の骨頂だ。
 尊き仏子には最敬礼しながら、だれよりも祈り、だれよりも苦労して、道を開く。その必死の行動が、勝利の波を起こすのだ。
8  「いよいよ!」の心意気で進め
 次は、フランスの作家である。
 話が、パッと変わったほうが、皆、聞こうと思うものだ。「またか」と思わせるようではいけない。
 さて、フランスの作家・サン=テグジュペリの代表作『星の王子さま』。
 そこに、こんな言葉がある。
 「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ」と(内藤濯訳『星の王子さま』岩波書店)。非常に有名な一節だ。
 肝心なこと。それを見通していけるのが、信心である。信心は最高の智慧なのである。
9  大聖人は「心こそ大切」と教えられた。
 どんなに、ごまかしても、だめである。大切なのは「心」だ。
 戸田先生は、目に見えない弟子たちの心を鋭く見抜かれた。その先生から、私は厳しく訓練を受けた。
 どんな人物に会っても、先生は、「あの男には二心がある」「それは嘘だ」「この話は、うますぎる」等と、瞬時に喝破した。大切な人間学を教えていただいた。
10  では、次はゲーテ。その次は、トルストイの話。
 仏法だけでなく、こういう話だと、皆、興味がわく。
 「それなら知っている。面白そうだ」と思う人もいるだろう。
 ドイツの大詩人・ゲーテはうたった。
 「臆病な思い、/弱気の迷い、/女々しい逡巡、/けちな愚痴、/いずれも逆境を転じてはくれぬ、/きみを救ってはくれぬ」「迫りくるすべての敵に/刃向かいつづけ、/決して屈服せず、/自分の力を示すときこそ/神々の大軍を/招き寄せることができる」(松本道介訳、『ゲーテ全集2』所収、潮出版社)
 心強き人を諸天は護る。いな、強盛なる祈りで、諸天善神を揺り動かすのだ。
 この決心で進んでもらいたい。そして、「本当に見事だ」「成長したな」と讃えられる歴史を残していただきたい。
 「いよいよ、これから!」との心意気で進む、日本一の大関西の山下婦人部長も、きょうは元気に参加されている。ご苦労さま!
11  戦う日々が幸福
 次は、トルストイ。ロシアの大文豪が残した言葉である。
 「努力は――幸福を手に入れる手段ではなく、努力そのものが幸福を与えてくれるのである」(小沼文彦編訳『ことばの日めくり』女子パウロ会)
 〈関西の川島女子部長が英語と日本語で紹介し、関西大勝利への思いを述べた〉
 偉いね。関西は強い。何があっても、大勝利、大勝利と、にぎやかだ。
 関西の皆さん!〈「ハイ!」と元気に手が挙がる〉
 すっきりした心で、気持ちがいい。
 関西とともに、中部も、しっかり頼む! 日本の“真ん中”なのだから!〈「ハイ!」と元気に返事が〉
 トルストイの言う通り、途中にも、全部、意味がある。終わりにではない。こうなって完結したら、幸せ――そうではない。
 人生の旅は、途中、いろいろな姿を見せるが、信心さえあれば、苦難との戦いも楽しんでいける。悠然と勝ち越えていける。
 戦う日々が、幸福なのである。
12  「創価に来れ!」「我らを見よ!」
 わが学会は、西神田にある小さな小さな本部から出発した。
 戸田先生は、しみじみと言われた。
 「学会も、ビルを建てる時代が来れぱ、すごいのだがな……」
 私は、先生に申し上げた。
 「日本中、世界中に、広宣流布のための立派なビルを建ててみせます」
 この師弟の誓いを、私は厳然と実現した。
 今、日本には約1,200、世界にも約500の会館が、そびえ立った。
 学会本部が信濃町へ移転してから、今年で55年。
 創立80周年を期して、世界広宣流布の本陣は、盤石に荘厳される予定である。
 ともあれ、これからは諸君の時代だ。
 皆さんが堂々と、友人を創価学会へ招けるように。「創価学会を見よ!」と胸を張って歩んでいけるように――これが私の思いである。そういう時代の第一歩である。
 生まれ変わったような、世界一の「創価城」「広宣城」をつくっていく。海外から来られた方々も、悠々と、ゆっくりできるような「本陣」を、一段と整備していくことを、固くお約束します。楽しみに待っていてください。
 一切無事故で進むよう、皆でお題目をあげてまいりたい。
 “
 皆が会長”の使命感で
 関西は、先日、堂々たる阿倍野文化会館が完成した。衛星中継も始まる。おめでとう!
 また、大阪の富田林文化会館や、滋賀の東近江文化会館の建設が進んでいる。
 さらに、「常勝関西青年会館」「関西女子青春会館」も、皆さんにお贈りしたい。
 学会を去っていった人ですら、「学会は、すごいな!」と感嘆せざるをえない――そういう将来の学会像を、私は展望している。
 関西は、お互いが護りあって、皆で仲良く進むのだ。“皆が会長”“皆が理事長”“皆が関西長”という心意気で前進していただきたい。
 現在、横浜の瀬谷文化会館、川崎の宮前文化会館など、全国各地で新たな会館の建設、設計が進められている。
 学会の会館は、法華経に「我此土安穏」等と説かれる通り、いかなる乱世にあっても、生命を護り、生きる喜びと幸福を広げる城である。
 妙法の創価城は、その地域の繁栄の光となる。平和と文化の広場である。
 本年6月、ワシントDC文化会館の誕生に際しては、アメリカ各界からも祝福の声が寄せられている。
 〈アメリカ下院議会のペロシ議長からは、「この新たな“平和の砦”をわが国の首都に歓迎申し上げるとともに、この砦が、全ての人間の可能性を最大限に開花させ、安全を確保するという池田SGI会長の非暴力の哲学を支持し、推進することを希望し、期待申し上げるものです」との親書が届けられた〉
13  「今を越えて残るものを」
 韓国も、首都ソウルに「池田記念講堂」の建設が進んでいる。
 地上5階、地下5階。2,500席の大講堂を擁して、2年後に完成の予定とうかがった。韓国の皆様、おめでとう!
 “どうして日本の会館ばかり紹介して、韓国の会館を紹介しないのだろう”と思っていたかもしれないが、心配いりません。
 さて、英知の城である創価大学も、来年の春3月には、素晴らしい「新総合体育館」が完成する。
 さらに、ロマン薫る桜と銀杏の並木道が走る「創大シルクロード」と、「創大門」も誕生する。
14  私が歴史学者トインビー博士に紹介されて対話した、世界的な大科学者のデュボス博士は綴っておられる。
 「私たちの時代を越えてさらに生き残ることのできるものを、何ひとつ建築しないことは、私たちが後に続く子孫に対していかに無責任であるかを示しており、端的に言えば、過去の人々からしてもらったことを、私たちは子孫に対しては行なわないことを意味している」(長野敬・新村明美訳『生命の灯』思索社)
 我らの創価城の建設の槌音は、まさしく、未来、希望、そして永遠の勝利の響きである。
15  「熱」と「力」の戦う青年部たれ
 尊き韓国の皆様! 真剣な研修、ご苦労さまです。あらためて、海外からの同志の皆様、本当に、ようこそ!
 わが離島部の皆様、北海道の礼文島からも、沖縄の宮古島からも、よくお集まりくださった。さらに全国約240の島々の皆様も、お元気で! ありがとう!
 社会部の皆様! 信頼の拡大、立派です。
 学術部の皆様! 英知の前進、うれしい。
 「しなの合唱団」「聖教合唱団」、素晴らしい勝利の歌声、ありがとう。
 創価学会の発展は、太陽が輝き、天に昇るがごとくである。
 私は、いかなる悪心の謀略も乗り越えて、勝ってきた。
 皆さんもまた、全員が「勝利者」になって、この一生を送っていただきたい。
 私は、だれもが人生の勝利者になれる道をつくってきた。「正義」の道と一体で、つくってきた。この道を進めば、間違いない。
16  「しなの合唱団」は「東京都知事賞」、おめでとう! 全国大会も健闘を祈ります。
 〈ここで喜び勇んだ合唱団のメンバーが、我先にと決意を発表した〉
 (決意を聞いて)うれしいです。騒々しいというのは、うれしいことだ。
 音楽隊の皆さん、いつもありがとう。中部の音楽隊も、全国大会出場、おめでとう!
 わが「戦う青年部」の全国幹部会、ご苦労さま! 若き君たちの熱と力で、朗らかに勝ちまくれ!〈参加者が力強く「ハイ!」と応えた〉
17  きょうは、北欧のデンマークからヤン・モラー理事長ご夫妻が参加されている。
 ありがとう。お元気そうで、本当にうれしい。同志の皆様に、よろしくお伝えください。
 デンマークと言えば、作家のアンデルセン(1805〜75年)が有名だ。約150編の童話を残し、「童話の王」とうたわれる。世界中で愛されている。
 とくに有名な童話には「人魚姫」「親指姫」「マッチ売りの少女」などがある。皆さんも、よくご存じと思う。
 1961年の10月、私は、欧州への第一歩をデンマークに印した。その時、この「世界の童話王」の足跡を偲んだ。
 〈中国で発刊された「世界児童文学古典シリーズ」(作家出版社)の第1巻には、アンデルセン、グリム兄弟の童話とともに、池田名誉会長の創作童話が4編、収録されている〉
18  毅然たる王妃
 アンデルセンの童話に「名づけ親の絵本」という作品がある。
 昔、デンマーク王の都を支配しようと、大な勢力を誇る敵が攻めてきた。臆病な指導者たちは、民衆を守るどころか、先を争って逃げてしまった。
 その時、毅然と留まり、立ち上がったのが、デンマークの王妃であった。女性の力は偉大である。
 この勇敢な美しい王妃は、民衆のまっただ中に飛び込み、皆を力づけた。あの小屋、この家へと足を運び、励ました。そして、断固たる反撃が始まったのである。
 童話には、一人の王妃の必死の戦いによって、人々が勇気を取り戻していった様子が、記されている。
 「太陽の光がすべての人の心にさしこむと、すべての人々の目から勝利のよろこびが輝き出てきたのだ」(大畑末吉訳『完訳 アンデルセン童話集』岩波文庫)
 民衆に勇気を贈った王妃は、大喝采された。
 私たちも喝采を贈りたい。
 我らの「創価の太陽」の婦人部、万歳!
 婦人部は、創価学会が始まって以来、本当に、すべての原動力となり、勝利の鍵を握ってこられた。
 偉大な女性には、威張りや要領がない。祈りも強い。婦人部のおかげで、学会の連帯は崩れないのである。
 婦人部に感謝することだ。婦人部を軽んじたり、見下したりするようなことは、絶対にあってはならない。
 これは、戸田先生、牧口先生の厳命でもあった。その通りに実行してきたから、学会は強いのである。
 ある人が言っていた。一家も、お母さんで決まる。男は、外で強がっていても、家では、奥さんに頭が上がらない。いつも叱られて、肩身が狭い、と。
 母にかなうものはない。婦人部にはかなわない。
 婦人部は行動している。口先だけではないし、インチキもない。
 私は、常に婦人部を、大切にしてきた。激励に、激励を重ねてきた。
 女子部も尊い方々である。大事にするのは、当然のことである。
 男性は、女性を尊敬し、応援していくことである。また、女性が一生懸命やってくださることに対して、心から感謝の念を表していくことだ。
 もしも、威張ってばかりの増上慢の人間がのさばれば、学会の未来はない。
19  ただ民衆のため
 民衆ほど偉大なものはない。世の指導者は、民衆第一で進むべきである。
 民衆に頭を下げ、民衆に尽くし抜く。そこから始まり、そこに終わるのが、指導者のあるべき姿である。
 指導者は、民衆のためにいるのだ。いよいよ、指導者革命をすべき時代に入っている。
20  私は、師の心を心として、ただ同志のために生きてきた。
 きょうも、肩が凝るような話ではなく、今この瞬間だけは、日ごろの苦労も全部忘れて、皆に「本当によかったな」「心が洗われた」「ほっとした」「また頑張ろう」と思ってもらえるような、麗しい世界をつくってさしあげたいのである。
 そうでなければ、懸命に戦ってくださっている同志が、かわいそうである。
 どんなに大変であっても、わが同志の方々は「頑張ります」「勝ちます」と言って、理想に向かい、前進しておられる。こんな世界は、ほかにはない。
 指導者は、心からの感謝を忘れず、断じて応えていくべきだ。
 この一点が見えな人間は。欲望に狂い、傲慢になって、道を踏み外していった。そうした悪人を放任してはいけない。賢明な民衆が、目を光らせていかねばならない。
21  「人の喜び」が「自分の喜び」
 アンデルセンの童話を、もう一編、繙きたい。
 「カタツムリとバラの茂み」という作品である。
 バラが一生懸命に生き、美しい花を咲かせて、人々に喜びを贈っていた。
 この健気なバラを、カタツムリが馬鹿にした。カタツムリは、いつも自分の殻に閉じこもり、自分のことしか考えていない怠け者だった。
 「世のなかなんて、ぼくにはどうでもいいんだ。世のなかが、ぼくになんの関係があろう」(同)
 自分勝手なカタツムリに、バラの花は語った。
 「この世に生きているわたしたちは、みな、自分の持っているいちばんよいものを、ひとに与え、わたしたちにできることをしてあげるのが、ほんとうじゃないでしょうか」(同)と。
 バラは、いつも外に出て、人々を喜ばせ、それを自分の喜びをとする、幸福な一生を飾った。
 同じように、創価の乙女が対話の花を咲かせることは、人々に、社会に、最高の宝を贈りゆく青春だ。
 「花の女子部」、頑張れ! ありがとう!
 女子部と婦人部の奮闘あればこそ、学会の大いなる発展がある。幹部は、よくよく心しなければならない。世界に希望を贈る、創価の女性のスクラムは、本当に立派である。
22  苦難があるから境涯が開ける
 ドイツの楽聖ベートーベンが記した言葉に「悩みをつき抜けて歓喜に到れ!」(ロマン・ロラン著、片山敏彦訳『ベートーヴェンの生涯』岩波文庫)とある。
 いい言葉だ。
 だれしも悩みを持っている。大事なのは、悩みに負けないことだ。悩みをバネといて、さらに大きな境涯をつくり上げていくことだ。
 仏法では「煩悩即菩提」「生死即涅槃」と教えている。苦難があるからこそ、仏の境涯を開いていけるのだ。
23  太宰治の小説『走れメロス』。
 メロスは、自分を信じ待ってくれている友のもとへ走り続ける。日没までに友のもとへ戻らなければ、友はメロスの身代わりに処刑されてしまう――。
 もう、間に合わないかもしれない。走り続けるメロスは、呼吸もできず、口から血が噴き出した。人は「いまはご自分のお命が大事です」と言う。
 しかし、友が待っている。ギリギリの状況の中で、メロスは言う。
 「それだから、走るのだ。信じられているから走るのだ。
 間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。人の命も問題でないのだ。
 私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいもののために走っているのだ」(角川文庫)
 友情ほど美しいものはない。信頼ほど、尊いものはない。
 心から信頼し、信念をともにする友人をもつ人生は幸福だ。
24  「ありがとう!」と感謝の言葉を
 14世紀イタリアの大作家、ボッカチオは綴っている。
 「報恩ということは、もろもろの徳の中でも最も重んずべきもので、その反対のことは非難すべきものであります」(野上素一訳『デカメロン』岩波文庫)
 忘恩の人間には、絶対になってはならない。これほど卑しい生き方はない。
 デンマークの哲学者キルケゴールは綴った。
 「喜びは伝わるものであり、だから喜びを教えるということにかけては、みずから喜びに溢れた者に勝る者はいない」(尾崎和彦訳「野の百合と空の鳥」、『キルケゴールの講話・遺稿集6』所収、新地書房)
 自身が歓喜していれば、それは多くの人につた伝わっていく。信心の喜びは、大きな波動となって広がっていく。
 ともあれ、歓喜の中の大歓喜の仏法を、生き生きと、朗らかに語る婦人部、女子部ほど強いものはない。偉大なものはない。
 女性の活躍を讃え、「ありがとうございます」と深く感謝していく。それが男性のリーダーのあり方でなければならない。
 学会の女性の皆様は、自身の家庭や仕事をもち、地域のお付き合いも大切にしながら、広宣流布のために走ってくださっている。本当に尊い方々だ。
 こうした方々を叱ったりすることなど、あってはならない。どこまでも尊敬し、励ましていく。それが仏法の指導者である。
25  報恩の人に
 江戸時代の日本の文豪に滝沢(曲亭)馬琴がいる。学会本部のある現在の信濃町の地域に住んで、名作を書き残した。
 戸田先生も、よく語ってくださった。代表作に『椿説ちんせつ弓張月』『南総里見八犬伝』などがある。
 馬琴は綴っている。
 「世の中に人物として立つ者は、わずかな恩恵にもきっと報恩」する、と(徳田武校注・訳『近世説美少年録』小学館)。
 「恩」を忘れない人間かどうか。そこに人物を見る一つの基準がある。
26  嘘で陥れる手口
 また馬琴の小説の中で、登場人物が、悪党に対して、次のように叫ぶ場面がある。
 「(お前は)賢人を退け 有能者に嫉妬して、讒言して人を陥れる」(同)と。
 有能な人物を妬み、デマを撤き散らして陥れ、なき者にする。これが恩知らずの悪党の変わらぬ手口である。
 こうした愚行が、歴史上、どれほど繰り返されてきたことか。
 広宣流布の途上においても、嫉妬や欲望に狂わされ、師匠を裏切り、同志を裏切った恩知らずの輩が現れたことは、皆さんもご存じの通りだ。
 大聖人は、「仏法を学ぶ者は、父母・師匠、社会の恩を忘れることがあってよいであろうか」(御書293㌻、通解)と強く仰せである。
 こうした大聖人の御心に背いて、お世話になった人々の恩を踏みにじっていった増上慢の人間は、結局、人生に行き詰まり、ことごとく、惨めな苦しみの末路を辿っている。
 生命の因果律はあまりに厳しい。
27  弟子の誇り
 大聖人は、「大難なくば法華経の行者にはあらじ」と断言されている。
 法華経の行者は、必ず大難に襲われる。
 その大難と戦う「真実の行者」を命がけでお護りするのが、「真実の弟子」である。法華経の行者を苦しめるものは魔物である。
 私は、恩師の戸田先生を命をかけてお護りした。それが、弟子たる私の最高の誇りである。
 昭和54年(1979年)、迫害の嵐のなか、私は、学会本部ではなく、神奈川文化会館で指揮を執った。
 この正義の天地から広々とした海を見つめながら、私は、反転攻勢を決意し、世界広布への新たな布石を一つまた一つと打っていったのである。
28  会うことが戦い
 恩師の戸田先生は叫ばれた。
 「関西の戦いには、爆発するような歓喜が渦巻いている」
 「関西は、大作につき切っていけぱよいのだ。最高の道なんだ」
 関西の皆さん、いらっしゃいますか?〈「ハイ!」と元気いっぱいに返事が〉
 今も中心は関西である。「常勝関西」は、私と関西の友が築いたのである。
 昭和31年(1956年)の「大阪の戦い」。
 戸田先生に「大阪」を任された私は、ただもう、隅々まで回り、人と会い、人と語り、「勇気の炎」を灯していった。一番の先端までも足を運んだ。
 夜中も、丑黄勤行を続け、友の勝利と無事安穏を祈り抜いた。
 皆で楽しくライスカレーを食べながら、最初から最後まで、愛する関西の同志と心一つに戦った。
 戦いとは、「人と会う」ことである。「人と語る」ことである。
 こうして、「“まさか”が実現」と世間をアッと驚かせた不減の金字塔が築かれたのである。
 関西と言えば、戸田先生がお好きだった“大楠公”を思い出す。ゆかりの地である四条畷や千早赤阪村を訪れたことも懐かしい。
 ともあれ、関西の勝利は、師弟不二の勝利である。
 関西が永遠に師弟の道を進むことを、私は願っている。
29  戸田先生はこうも言われた。
 「さまざまな難を乗り越えるのが、使命に生きる我々の信心でなければならない。信心さえ正しく強ければ、越えられない難など絶対にないのだ」
 どんな難が来ようとも、仏法を持った我々は、断じて勝っていける。越えられない試練など絶対にないのである。
 ゆえに恐れるな! 断じて恐れるな! 勇気をもって、堂々と進むのだ!
 この戸田先生の大確信に、我々は、勇んで続いてまいりたい!
30  君の勝利を祈る
 私は一生懸命に皆さんのことを祈っている。これが私の役目である。
 きょうは、長時間、本当にありがとう! お帰りになったら、皆さんに、よろしくお伝えください。本当にありがとう!
 一緒にお題目を唱えよう。〈ここで名誉会長を中心に唱題を行う〉
 本当にご苦労さまでした。いつまでも、いつまでも、お元気で! 海外の皆様、本当にありがとう! 合唱団も、ありがとう!

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