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日蓮大聖人・池田大作

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創大・学園合同研修会  

2008.8.5 スピーチ(聖教新聞2008年上)

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1  創価大学と創価学園の合同研修会、大変にご苦労さま!
 きょうは日本全国、そして全世界の教育界・学術界に光を送りゆく、創価大学、創価学園の首脳が集われた。
 教育者は、全世界の父であり、母である。ゆえに教育は、人間を創り、平和を創り、文化を創る力である。
 今、創価教育に対して世界から大きな関心と賞讃が寄せられているのは、皆様がご存じの通りである。
 各地では、創価同窓の友の活躍も光っている。また、未来を担う若き後継者の育成に尽力する皆様にも、この場をお借りして、深く感謝申し上げたい。
 日本における少子化は一段と加速し、多くの私立大学で入学者数が定員割れに陥るなど、大学をめぐる状況は深刻である。
 私は今日の状況を予想して、さまざまな形で先手を打ってきた。
 多くの方々の尽力のおかげで、創大・学園は厳然と勝ち栄えている。教職員の皆様方の尊いご努力も、全部うかがっている。
 牧口先生、戸田先生は教育者であられた。創価学会は、「創価教育学会」として発足した。だから私は、教育者の皆様を最大に大切にしたい。
 創立者として、真剣に戦ってこられた方々のことは、よく存じ上げているつもりだ。
 一人一人が、どう努力し、頑張っているか。それを知るのが本当の指導者である。
 教育者の皆様方もまた、生徒や学生一人一人のことをよく知り、励ましを送る存在であっていただきたい。
 ともあれ、油断は大敵だ。「勝って兜の緒を締めよ」である。
 真剣なら勝てる。いい加減なら負けてしまう。どうか、「創価教育の城」を、よろしく頼みます。これからも、勝ち続けましょう!
2  庶民に尽くす指導者を!
 私は、これまで皆様を代表し、創大・学園の創立者として、全世界・五大陸の名門大学から名誉学術称号を拝受してきた。
 〈ロシア・モスクワ大学、イギリス・グラスゴー大学、イタリア・ボローニャ大学、中国・北京大学、フィリピン大学、インド・デリー大学、韓国・慶熈キョンヒ大学、アメリカ・デンバー大学、キューバ・ハバナ大学、ブラジル・サンパウロ大学、トルコ・アンカラ大学、ケニア・ナイロビ大学、オーストラリア・シドニー大学等の名門学府から名誉学術称号を受章している〉
 私の青年時代は苦闘の連続だった。事業に失敗した戸田先生を支えるために、私は夜学を断念せねばならなかった。
 本当に大変な毎日だった。華やかな青春など、なかった。
 その私に対して、先生は毎朝のように個人教授を行い、万般の学問を授けてくださった。「私が教えてやるからな」と言われ、世界に通用する実力をつけてくださった。
 ありがたい先生であった。世界一の師匠であった。この先生の薫陶があったからこそ、今の私がある。
 先生は語っておられた。
 「教育は、知識を教えるのみではない。長い人生を、生き生きと生き抜いていく力を育むことが大切である」
 知識だけでは駄目だ。人間としての力、豊かな人生を生きるための智慧をどう育んでいくか。
 ここに教育の眼目がある。
 また、先生は、こうも述べておられた。
 「日本の教育の普及は、明治以降、急速に進んだ。
 戦後、大学も増大した。しかし、それが人間の幸せに本当にはつながっていない。
 大学生の数は増えても、人格も、智慧も、見識も乏しい人間が増え、学歴自体が目的になってしまった」
 本当に鋭い先生であられた。
 学歴至上主義は、人間を狂わせてしまう。
 「いい大学を出たから、私は偉い」。そうやって庶民を見下すような人間を生み出すだけならば、何のための教育か、わからない。
 大学は、大学に行けなかった人たちのためにある──私は、この信念でやってきた。庶民に尽くす指導者を育てるのが、真実の大学なのである。
3  牧口・戸田先生の悲願を実現
 中国・華僑大学の呉承業ご・しょうぎょう学長は昨年、創価大学で語られた。
 「大学の理念は大学の魂です。理念を持たない大学は魂のない肉体のようなものです。
 強い理念を持った大学は、学生だけでなく、その理念を持った民族を育てることができます」
 私立大学の「魂」は何か──。
 それは「建学の精神」である。「創立の原点」である。
 「創価教育の父」である牧口先生、そして戸田先生は、命を賭けて軍国主義と戦われた。ともに牢獄にまで行かれた。
 私も、戸田先生に命がけでお仕えしてきた。そして、牧口先生、戸田先生の悲願であった創価教育の学舎を創立したのである。
 世界の平和に貢献し、民衆の幸福に尽くす指導者を育成する。これが創価学園、創価大学の理念である。
 華南師範大学の王国健おう・こくけん学長は、こう語ってくださった。
 「池田先生は、(牧口先生が創始された)創価教育を『人間を根本とする教育』へと精緻に昇華されました。
 その目的は、『人間主義』『文化主義』『平和主義』に貫かれ、世界とともに生きる『開かれた人格』の人材を育成することです」
 「国境を超えて、文化・教育・民衆の交流を拡大するという貴重な思想を広めておられます」
 深いご理解に、心から感謝申し上げたい。私のことでもあり、恐縮だが、創価教育への賞讃の声として紹介させていただいた。
 ともあれ、創価学園をつくり、創価大学をつくる。それが、どれほどの難事業であったか。どれほどの障害があったか。
 しかし、私は「師弟の道」に徹し抜いてきたがゆえに、すべてに打ち勝ってきた。あらゆる苦闘を越えて、世界に広がる創価教育の大城を築いてきた。
 この「師弟」の闘争こそが、創価教育の大勝利を成し遂げた力なのである。
 皆様は、教育者である。師弟の重要性を、だれよりも知るべき方々である。どうか、この「師弟」という一点を深く心に刻んでいただきたい。
4  根が強ければ木は倒れない
 私は、これまで世界の数多くの大学を訪れてきた。また、各国の大学の学長らと語り合ってきた。
 ロシア最高峰のモスクワ大学では、創立者ロモノーソフの理念を最大に大切にしている。
 ハーバード大学やデラウェア大学など、アメリカの多くの名門私立大学も、創立の理念や創立者の精神と行動が、大きな基盤となっている。
 「根」が深く、強ければ、木はどんな嵐にも倒れない。青々とした葉を茂らせ、豊かな果実を実らせていくことができる。
 創立の原点、そして、創立者の精神をどこまで大切にし、体現していけるかどうか。ここに、私立の教育機関の発展の要諦があるのである。
 皆様もまた、創価教育の原点を命に刻み、創立の精神を叫び続ける存在であっていただきたい。私と同じ心で学生のため、生徒のため、未来のために戦っていただきたい。
 その気概を失えば、創価の学舎で教員となり、職員となる意味はないといっても過言ではない。
 厳しいようであるが、後世のため明確に語り残しておきたい。
 〈現在、創価大学、創価学園の創立者である池田名誉会長の思想への評価は世界的に高まっており、その思想・哲学を研究するセンターや組織が、世界各地の大学・学術機関で誕生している。
 中国の北京大学、武漢大学、湖南師範大学、華中師範大学、東北師範大学、台湾の中国文化大学、インドのガンジー非暴力開発センターや国際詩人アカデミー、アルゼンチンのローマス・デ・サモーラ大学、デンマークのアスコー国民高等学校など多数に及ぶ〉
5  教職員が先頭に
 私はこれまで、創立者として、人間としての「一番、大事な道」を多くの人々に語ってきた。何より、自分自身が、その道を歩み抜いてきた。
 戸田先生は語っておられた。
 「教育は、どこか特別な場所にあるのではない。身近な振る舞いの中にある」
 口でどんなに偉そうなことを言っても、行動が伴わなければ教育者として失格である。学生や生徒も、教員の振る舞いを厳しく見ているものだ。
 例えば、自分がお世話になった恩人、自分にとって大切な人に対して、どのような姿勢をとっていくのか。
 大きな恩を受けておきながら、自分の力だけで偉くなったかのように思い、傲慢になる。偉ぶる。
 悪に対して、見て見ぬふりをする。ずる賢く立ち回り、本気で戦わない。それでは、本当の人間教育など、できるわけがない。
 また、アメリカの教育哲学者デューイ博士は述べている。
 「教育者は、他のどのような職業の人よりも、遠き未来を展望することを重視している」
 未来を創るのは教育だ。人間を育てることが、輝く未来を築くことになるのだ。
 創価大学、そして創価学園でも、新たな校舎などの建設計画が進んでいる。
 創価教育の発展は、いよいよ、これからである。皆がさらに心を合わせ、団結していけば、学園も、大学も、もっともっと伸びていける。
 どうか皆さんが先頭に立ち、新しい時代を切り開いていっていただきたい。
6  鍛えの夏、真っ盛りである。創価大学通信教育部の夏期スクーリングも、いよいよスタートする。
 尊い向学の伝統が、見事にでき上がった。関係者のご尽力に、深く深く感謝申し上げたい。
 創価教育を担い立つ皆さんには、伝えておきたいことが無数にある。
 私は、創価一貫教育の土台を築くため、牧口先生、戸田先生のおっしゃった通り、身を粉にして実践した。それが師匠を護る戦いであった。
 そして師の理想を、一つも欠くことなく、一点の汚点もなく、完壁に実現していった。だれもつくれなかった人間教育の園を、幾万の同志とともに築いてきたつもりである。
 未来にわたって、創価の命運、そして世界の命運を担うのは、教育者の皆さんである。
 一人一人が、この大きな潮流のなかにいるのだということを深く自覚し、誇りをもっていただきたい。
 真実の創価教育の歴史をわが心に刻み、後輩たちが安心して続いていける道をつくることだ。
 力ある後継の教育者を育てゆく、有意義な研修会としていきたい。
7  陰の力に徹する
 教育は人間性を開花させる。その根幹に「師弟」がある。
 戸田先生は、創価教育の父である牧口先生に、弟子として仕え抜かれた。牧口先生が戦いやすいように、あらゆる手だてを尽くして支えられた。
 戸田先生は振り返っておられる。
 「私は、牧口先生の膝下に拾われた人間である。牧口先生は、私を、校長をしておられた小学校に引き取って、訓導(=教師)の任命の手続きを行ってくれたのである」
 この牧口先生の恩に、戸田先生は一生涯、報いていかれた。師を讃えることによって弟子が光る、その模範であられた。
 また、師である牧口先生は、戸田先生に全幅の信頼を置かれた。
 牧口先生の大著『創価教育学体系』は、戸田先生が編集から発刊まで労を尽くされた、いわば“師弟の合作”である。戸田先生は述べておられる。
 「涙ぐましい師弟の結びつきのおかげで、創価教育学体系が出版されたのである。陰の力であった私のことは、誰一人ほめなかったが、私は一人、笑顔であった」
8  師弟の道に生き抜いた人は幸福
 当時、校長職にあった牧口先生を怨嫉し、退職に追い込もうとする勢力と、戸田先生は戦い抜かれた。
 戸田先生の教え子であった青年たちも、牧口先生を守る戦いに連なった。
 彼らの姿を見て、戸田先生は述懐されている。
 「教えた子どもたちが、これほど私を慕ってくれてうれしい。また、これほど立派に育ったかと思うと、教壇に立ったわが身の幸福をつくづくありがたいと思う。私の教えが、このように深く、若い心の中に入ったのだと思うと、しみじみと、偉大な教育の力を感じたのである」
 私は、この先生のお気持ちがよくわかる。
 いつの時代にも、師弟の道に生き抜いた人は幸福である。
 創価教育の指導者は「創立の精神」「建学の精神」と一体でなければならない。
 創価教育さえ盤石ならば、未来は明るい。民衆の指導者を陸続と育てながら、さらに世界へと平和の大道を広げていける。
 永遠に、教育の城だけは、断じて守り抜かねばならない。
 将来、創立の魂を汚す人間が出てきても、だれ一人、抗議しない。声をあげない──そうなれば、もはや、そこに創価教育はない。悪い勢力に乗っ取られたも同然であり、心ある人たちが皆、不幸になる。私が創価学園・大学をつくった意味は、無くなってしまう。
 牧口先生は叫ばれた。
 「悪人の敵になり得る勇者でなければ善人の友とはなり得ぬ。
 利害の打算に目が暗んで、善悪の識別の出来ないものに教育者の資格はない。
 その識別が出来て居ながら、其の実現力のないものは教育者の価値はない」
 格好ばかりの“同志”は必要ないのである。戦うべき時には、堂々と悪を弾劾するのだ。
 いざという時に戦えない、保身と増上慢の“才能ある畜生”になってはならない。
 皆、「いい人生」を送ってほしい。そして抽象論ではなく、具体的に「いい大学」「いい学園」の建設を、さらに一段と推し進めていこう! 私と一緒に!
9  師の学説に基づきベストセラー
 師が戦い、弟子がさらに戦う。師弟の共戦が「創価」の魂であり、伝統である。
 牧口先生は、教育者としての戸田先生を「実証者(=実験証明を果たす人)」と高く評価されている。
 「時習学館をはじめるに当っては、全くこの主義(=牧口先生の創価教育学)に基いて経営したため、異常の好評を博して今日の名声を挙げ、殊に実験の結果としての著書『推理式指導算術』が、年々非常なる売れ行きを以て、日本小学校の算術教授の改良に役立ちつつある如きは、本研究の唯一最大の価値の証明といってもよいと思う」(『牧口常三郎全集第8巻』第三文明社)
 戸田先生の『推理式指導算術』は当時、100万部を超える記録的なベストセラーとなった。
 この教材で学んだことに、今もって感謝の声を寄せる識者、指導者は多い。
 牧口先生が提唱された「創価教育学」に則って実践した戸田先生は、日本の教育史に輝く仕事を残したのである。牧口先生の喜びは、いかばかりであっただろうか。
 「創価教育の勝利は弟子で決まる」と、あらためて強調しておきたい。
10  戸田先生は「後世までも(牧口)先生の学説を残していただきたい。ただの一人でもよい、一人から万人に伝わるのを待つのみである」と言われている。
 だれか一人、「本物」が出ればよい──この先生の願いを、私は担い立った。報恩こそ人間の道である。
 どのような分野であれ、真剣になって訴える人間が一人、出れば変わる。道が開けるものだ。
11  「宝の世界」の護り手に!
 アメリカ・南イリノイ大学カーボンデール校「デューイ研究センター」のヒックマン所長は、こう言われている。
 「子どもたちが学ぶことに楽しめないのであれば、本当の意味で学んでいるとはいえない、とデューイ博士が指摘しているとおりの理想の姿が(創価)学園にある、と実感しました」
 温かい眼差しに感謝したい。
 創価教育の世界とは牧口先生、戸田先生、そして私の三代で築いた「宝の世界」である。
 戸田先生に「俺には大作がいる」と託された私が、命がけで創りあげた、「宝土」にも等しい存在である。
 ゆえに私は、皆さん一人一人に、この尊き世界の力強い護り手になっていただきたいのである。
12  創価教育の父である牧口先生、その直系の戸田先生が、最大に尊敬していた教育哲学者こそ、アメリカのジョン・デューイ博士(1859〜1952年)である。
 博士は、牧口先生より12歳年上。ほぼ同時代を生きられた。
 デューイ博士の教育のモットーは、「なすことによって学ぶ」である(山田英世著『J・デューイ』清水書院を参照)。
 教育現場における「実践」と「経験」を重視した牧口先生と相通ずるモットーである。
13  デューイ博士は『学校と社会』『民主主義と教育』『哲学の改造』『人間性と行為』『誰でもの信仰』など多くの著作を執筆。よりよく生きるための実践の哲学、人間主義の教育の哲学を確立した。
 米のミシガン大学、シカゴ大学、コロンビア大学などで教壇に立ち、広く民衆を啓発する論陣を展開していった。日本、中国でも講演し、トルコ、メキシコ、ソ連(当時)などを訪れ、深い影響を与えた。
 私も、かつてデューイ博士ゆかりのコロンビア大学から招聘を受け、講演した(96年6月13日)。またハーバード大学の2度目の講演でも、博士の宗教論を論じたことが懐かしい(93年9月24日)。
14  空転してないか
 デューイ博士は叫んだ。
 「教育はすなわち生長である。教育がなければ生長はない。教育が進歩しなければ社会もまた進歩し得ない」(永野芳夫訳・大浦猛編『デューイ:倫理・社会・教育北京大学哲学講義』飯塚書房)
 教育こそ、「成長」と「進歩」の最大の力といっていい。ゆえに教育が大事なのだ。
 そのために必要なのは、教員自身が成長することである。
 だれかを変えようと思うよりも、まず教員自身が変わることだ。リーダー自身が変わることだ。
 自分の成長が止まってはいないか。後退したり、空転してはいないか。常に自身に問いかけ、新たに出発していくのである。
 また、自分は学問があるからと、驕り高ぶって、学生や庶民を見くだすような学者ならば、本当の知性の人とは言えない。まして教育者の資格など、あるはずがない。
 たとえ、自分が犠牲になってでも、学生たちに尽くし抜き、学生たちの未来を敢然と切り開いていく。自分よりも後輩を立派に輝かせていく。それが創価教育である。
 その栄光と福徳は、すべて「育てた人」に返っていくのである。
15  学生に励ましを
 創大、学園の教職員の皆さんは、創立者と一致した心で、一人一人が創立者の自覚で、「学生第一」「生徒第一」の精神のもと、団結し協力して進んでもらいたい。そこに創価教育の永遠の発展がある。
 そして、学問の情熱を赤々と燃やしながら、学生たちには真心で接してほしい。
 例えば、おなかは空いていないか、何か悩みはないか、教員のほうから声をかけてあげるのだ。
 ときには、「きょうは満月でも見ながら、ラーメンでも食べようよ」と肩を叩きながら、励ましてあげてほしいのである。
 ちょっとしたことのように見えるけれど、こうした真心を学生は、生涯、忘れないものだ。教育の師弟ほど、麗しい関係はないのである。
16  牧口先生も、戸田先生も、民衆とともに生き抜かれた。
 この「民衆とともに」の実践が、人生と社会への認識を一段と深め、教育の面でも自分を高めていくことを、両先生は知っておられた。
 デューイ博士も真剣に生きゆく市井の人々との友情を、こよなく大事にされた。
 教育者は民衆と離れてはいけない。
17  関係性の中で
 わが創価教育は、デューイ博士の精神を継承されるアメリカの伝統ある教育研究団体「ジョン・デューイ協会」とも深い親交を結んでいる。
 このデューイ協会のガリソン会長が次のように語っておられる。
 「若き池田博士が、戸田会長との出会いの感動を『われ地より湧き出でんとするか』との言葉で表現されたことに、私は深い意義を覚えます。
 この言葉は、『仏とは生命である』との戸田会長の獄中での悟達と深く響き合います。さらに万物の命を讃えた民衆詩人ホイットマンの『草の葉』とも美しく響き合うのです」
 さらにガリソン会は語られた。
 「すべての生命には、かけがえのない可能性が秘められています。しかし、可能性を持つことと、それを現実に発揮することは別の問題です。
 草木が太陽の光を得て、生命の力を開発していくように、あらゆるものの可能性は、他者との関係性のなかでこそ、現実の力へと発揮されていくのです。
 そして、その最も重要な関係性こそ、師弟の交流です」
 人間のつながりには、家族とか、友達とか、さまざまある。そのなかで、生命の可能性を最大に開花させる、最も啓発的で、最も重要な関係こそ、師弟の交流であると言われているのである。
 〈さらにガリソン会長は、「戸田会長と池田博士の出会いと交流が、それを何よりも証明しています」と創価の師弟へ力強いエール(声援)を寄せている〉
18  師弟ほど崇高な人間の絆はない。それが、「師弟の道」を生き抜いてきた私の偽らざる実感だ。
 私は、青春のすべてを恩師の戸田先生に捧げた。大きな借金を抱え、憔悴し切った先生に、ただ一人、お仕えした。「先生は休んでいてください」と一切を担い、駆けずり回って、師匠をお護りしたのである。
 その命がけの闘争が、私の生命を開拓し、病弱であった体も強くしてくれた。ゆえにガリソン会長のお話が本当によく分かる。
19  教員室の扉が開かれている
 昨年、わが創価大学の創価教育研究所が、米・南イリノイ大学カーボンンデール校の「デューイ研究センター」と学術交流協定を結び、創大に「デューイ研究センター」が開設された。
 米のデューイ研究センターのヒックマン所長(デューイ協会前会長)は、東西の創価学園を訪問された感想をこう語っておられた。
 「一人一人の才能・能力・関心を的確にとらえ、それを伸ばすのは教師の責任です。
 創価学園では、教員室の扉が生徒たちに開かれています。生徒たちが、いつでも中に入って、話し合ったり、相談に乗ってもらったりできる素晴らしい雰囲気がありました」
 同じく学園を訪れたアメリカ・エマソン協会のワイダー会長は言われた。
 「創価学園には、教師の心からの励まし、生徒たちの教師への心からの感謝が満ちていました。
 こうした気風のなかでこそ、生徒の自立性が育まれるのです」
 世界の教育の知性の方々が、このように賞賛してくださっているのである。すべては教職員の皆様方のおかげであり、心から感謝申し上げたい。
 この夏のクラブの活躍なども見事だ。若き創価の学友が皆、健康で、無事故で、大成長の夏を送れるように、私は妻とともに毎朝毎晩、真剣に祈っている。
20  教育者は最も素晴らしい仕事
 デューイ博士は共著の中で論じた。
 「良心、道徳的な考えぶかさは、それが勇気からきりはなされるやいなや、われわれを臆病にしてしまう」(久野収訳「倫理学」、『世界大思想全集』所収、河出書房新社)勇気こそ、知性や良心を最大に力あらしめる柱である。真実の教育者は、真実の勇者でなければならない。
 デューイ博士は、こうも言った。
 「成長は片手間に仕上げられるようなものではない。それは絶え間なく未来に進んで行く過程なのである」(松野安男訳『民主主義と教育』岩波文庫)
 教育こそ、未来を創り、時代を創り、希望を創る力である。
 ゆえに、教育者こそ全世界で最も素晴らしい仕事である。
 そしてまた大学、短大、学園といった教育機関こそ、人間として最高に誇り高い、最重要の機関であると私は申し上げたい。
 ともどもに創価教育の「誓いの同志」として、心一つに進んでいこう! 長時間、ありがとう!

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