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創価大学第38回・女子短大第24回入学…  「L・N・トルストイ記念トゥーラ国立教育大学」名誉教授称号授与式

2008.4.2 スピーチ(聖教新聞2008年下)

前後
1  きょうは、海外から、また国内から、多くの来賓の先生方が、祝福に駆けつけてくださいました。
 心より感謝申し上げます!
 創大生、短大生の皆さん、入学おめでとう!
 ご父母の皆様方も、おめでとうございます。
 親孝行している人、手をあげて!〈「ハイ!」と新入生から元気いっぱいの返事が〉
 ずいぶん、元気がいいね。
 親孝行しない人は、不幸です。自分も不幸だし、親も不幸です。
 一次元から言えば、皆さんが勉強し、出世し、お金を儲けて、両親に楽をさせてあげることも大事な親孝行です。
 しかし、それはそれとして、私は、皆さんに、どんなときも、ご両親を安心させ、元気づけ、喜ばせてあげられる人になってほしい。
 たとえ、お金がなくても、時間がなくても、ご両親に感謝を伝えたり、真心の言葉をかけてあげることは、いくらだってできるからです。
 すべては皆さんの「心」で決まる。「心」が大事なのです。
2  心光る指導者に
 あらゆる学問に挑戦し、知識を吸収していくことが必要なのはもちろんですが、社会の指導者になっていく皆さんは、親を思い、友を思い、他者を思う――その心を養っていってもらいたい。それが創価教育です。
 たとえ、お父さん、お母さんが、どうであっても、人間として自分が立派になっていくのです。
 皆さんを見れば、ご両親が胸を張って、心の奥の奥が輝いて、喜び勇んで生きていける。そのような、創大生、短大生になっていただきたい。
 そうでなければ、創大、短大で学ぶ意味はないのです。
 皆さん、よろしく頼みます!
3  一人ももれなく使命に生きよ
 新入生を歓迎して英語であいさつをさせていただきます。
 Your eyes are beautiful, shining brightly with wisdom.
 「英知に輝く皆さんの瞳は、まことに美しい」と言ったのです。
 わかりましたか。〈「ハイ」と元気な返事が〉
 Youth of passion, great victory is waiting for you.
 「情熱みなぎる皆さんの前途には、勝利が大きく待っている」との意味です。
 Each one of you, become a winner of happiness!
 Live with a great mission!
 さらに、「皆さんは、一人ももれなく、幸福の勝利者になれ! 偉大な使命に生きよ!」と。
 Each one of you, become a champion of happiness!
 そして、「一人ももれなく、幸福の長者になれ!」と申し上げました。
 真剣に語学にも打ち込んでください。まずは英語です。
 私も練習してきましたが、時間が足りなくて、聞き取りにくかったかもしれません。
 皆さんは、若いのだから、努力と執念で必ずマスターしてもらいたい。
4  学べ! 学べ!
 さらに、中国語でも少し話させていただきます。
 「青年是黄金時代(チンニエンシーホアンジンシーダイ)、要学習(ヤオシュエシー)、学習(シュエシー)、再学習(ザイシュエシー)」
 中国の諸先生方、発音はどうでしょうか。
 〈来賓の中国・嘉応学院の程学長から「上手です」との答えが〉
 そうですか! うれしいです。ありがとうございます。
 中国語の意味は「青年は黄金時代である。学べ、学べ、もっと学べ!」です。中国の周恩来総理の言葉です。
 「生命的路是進歩的(ションミンダルーシージンプーダ)」文豪・魯迅先生の有名な一節です。
 「生命の道は、進歩の道である」
 皆さん、この心で進みましょう!
5  良く生きることが教育者の要件
 ロシアの大文豪トルストイは叫びました。
 「努力は――幸福を手に入れる手段ではなく、努力そのものが幸福を与えてくれるのである」(小沼文彦編訳『ことばの日めくり』女子パウロ会)。
 皆さんは、努力の人になってください。努力は、うそをつかない。すぐに結果が出なくても決して焦らないで、前へ進んでいくのです。
 その一歩一歩のなかに本当の幸福がある。努力する心こそ青春の最高の財産です。
 また、トルストイは教育の姿勢についてこう述べています。
 「教育の要は、自ら良く生きること、即ち自身が動き自身を教育するというに帰する」(八杉貞利訳「訓育に関する諸考察」、『トルストイ全集』第20巻所収、岩波書店。現代表記に改めた)
 教員は、自らを教育すべきである――そのように大教育者でもあったトルストイは考えました。
 よく言われるように、教員が成長した分だけしか学生は成長しない。
 大学は教員の先生方で決まるのです。
 学生をわが子以上に大事にする――それが創価教育の伝統です。
 先生方、なにとぞ、よろしくお願いします。
 さらに、トルストイは言いました。
 「苦しみのなかに、汝の精神的成長にとっての意義を求めよ」(北御門二郎訳『文読む月日』ちくま文))
 苦労を避けてはいけない。安逸の道は、敗北の道であり、不幸の道です。
 勉強するのです。人のために動くのです。親孝行するのです。
 自ら求めて苦労する。苦しみの中に飛び込んでいく。そこにこそ、精神的な成長があり、真の幸福の意義を見出すことができる。
 青春の苦悩に打ち勝ってこそ、本当の成長があることを忘れないでください。
6  桜とともに立派に育て
 春だ! 桜だ!
 入学式だ!
 若き秀才、英才たちを桜花も微笑み、見つめている。
 何とうれしい入学式か。何と偉大な学生たちか。
 創大生、万歳! ご父母の皆様方、万歳!
 一年ごとに大樹の桜とともに、君も立派に育ちゆけや、勝ちゆけやと祈りたい。
 天下の秀才、英才、万歳! 創大生、万歳! ご父母の皆様方、万歳!
 ――私は、こう呼びかけて、皆様方を祝福申し上げたい。
7  英語でも、ロシア語でも、そしてデンマーク語でも、「4月」とう言葉の語源には、「開く」との意昧があるとうかがいました。厳しい冬を乗り越えて、さまざまな花の蕾が大きく開いていく。それが春です。
 同じように、いかなる試練も勝ち越えて、若き生命の英知と才能を思う存分に開いていくのが、躍動する青春のリズムであり、息吹です。
 今、創大の卒業生からは、日本を代表するような実業家をはじめ、各界のリーダーが誕生している。どうか皆さんも、見事な歴史を残していただきたい。
 そのためには、まずお父さんやお母さんから、「よくやったな」と言われるような学生時代を送ることそです。それが基礎になります。
 創大は、38期生の皆さん! 短大は、24期生の皆さん! 私が、創立した大学へ、よくぞ来てくださった。
 45カ国・地域から、集ってくださった留学生の皆さんも、ありがとう!
 尊き向学の通教生の方々も、健闘を祈ります。
 大学院生の英才の皆さんも、おめでとう!
 なかんずく、教職大学院には、栄光の1期生が勇み巣ってくださった。牧口先生も、さぞかし、喜んでおられると思います。ありがとう!
 ご父母の皆さまにも、心から感謝申し上げます。
 支援者の皆さま方も、誠にありがとうございます。
 先生方、本年度も、どうか、よろしくお願いします。
 創大も、大きく発展してきました。どうか、一人ももれなく偉い人に、福徳豊かな知性の人に、そして歴史に名を残す、立派な人材に育てていただきたい。
8  青春の誓い
 18歳の春、トルストイは誓いを立てました。その一つが「可能なかぎり力をつくしてつねに頭脳を活動するようしいよ」(中村融訳『トルストイ全集18 日記・書簡』河出書房新社)であります。
 頭を鍛えに鍛えよ、というのです。
 恩師・戸田先生も、このことを何度も何度も語っておられました。「勉強しろ、勉強しろ」と、よく言われた。
 このトルストイのモットーを、わが偉大なる、使命ある新入生に贈りたい。
 どうか、大いに学んで、力をつけ、最高の親孝行をしてもちいたい。偉い人になってもらいたい。
 私も、戸田先生が言われた通り、勉強しました。親孝行もしました。
 思えば、私の青春は、戦争の時代だった。4人の兄は兵隊に取られ、長兄はビルマ(現ミャンマー)で戦死。家は強制疎開で取り壊され、新しく建てた家も空襲で焼けました。
 私は肺病で、父はリウマチ。本当に大変な状況でした。
 戦後、私は19歳の時に戸田先生と出会いました。
 先生は、戦時中、師匠の牧口先生とともに、軍部政府と戦って牢に入られた。牧口先生は獄死。ごく戸田先生は、2年間の獄中闘争を貫かれた。
 この深き信念の戸田先生の息吹に触れて、私は先生の弟子となりました。師匠とともに立ち上がりました。闘争を開始しました。
 そして私は、将来、教育機関をつくりたいとの戸田先生のご構想を受けて、先生の弟子として「絶対に日本一の学校をつくろう!」、と決意したのです。
 どうか若き諸君も、立ち上がってほしい。
 大事なのは自分だ。人がどう言おうが、関係ない。頼むよ!
9  よい生き方とは
 大教育者でもあるトルストイは断言しました。
 「善の意欲をかき立てるのに最も威力のあるものは、よい生き方のお手本である」(小沼文彦編訳『ことばの日めくり』女子パウロ会)
 私も大好きな言葉だ。よい生き方――それは正しい信念に基づいて生きることです。
 しっかり勉強して、立派な人間に育っていくことだ。使命感をもって、社会のために尽くしていくことです。
 私は、若き日に、トルストイの本を何度も読んだ。本当に大好きな作家でした。お金がないなかでも、本だけは買って大事にしました。
 結婚した時も、妻が書棚を見て、「トルストイの本がたくさんありますね」と語っていたことを思い出します。
 ともあれ、偉大な人物を師匠と仰ぎ、模範とする人生には、正義がある。前進がある。成長がある。充実がある。
 師弟に生きる人は、使命がわかる。
 反対に「自分勝手」では、正義は生まれない。“何でも自由だ、自分だけが正義だ”――そんなのは嘘です。個人主義のエゴに過ぎない。
 ここにお迎えしたシャイデンコ総長も、ドゥトカ州知事も、トルストイ館長も、そしてソコロフ教授も、トルストイを模範として、その構想を、教育の道で、政治の道で、文化の道で、さらに医学の道で、断固として実現してこられました。
 私たちは、「人類史の大巨人」トルストイを創大にお迎えしたごとく、最大の尊敬を込めて、先生方を歓迎申し上げようではありませんか。
 思えば、私がお会いしてきた世界の第一級の指導者や識者の方々も、皆、トルストイを熟読されておりました。
 トインビー博士と文学論を語り合った時にも、真っ先に名前が挙がったのは、トルストイです。
 アメリカの大経済学者ガルブレイス博士も、また、中国の大文豪・巴金ぱ・きん先生も、最も感銘を受けたのはトルストイの作品であると述べていました。
 27年半の獄中闘争を勝ち切って、私に会いに来てくださった、南アフリカの人権の大英雄マンデラ前大統領は、牢獄でトルストイの傑作『戦争と平和』を愛読しておられたといいます。
 人類を励まし、全世界を結び合う、このトルストイの崇高な精神の遺産を、最も深く継承しておられる大殿堂こそ、貴大学なのであります。
 シャイデンコ総長の聡明な指揮のもと、貴大学は「第3の千年の教育大学」として、ユーラシア大陸にそびえ立っておられます。
 本日は、私の人生の師である戸田城聖先生が亡くなって、ちょうど50年となります。
 トルストイのごとく、“青年は獅子であれ!”と何度も力説されていた恩師も、この式典をどれほど喜んでおられるかと、今朝、妻と話しておりました。創価の師弟にとってこの上ない栄光の歴史を刻ませていただきました。誠に誠に、ありがとうございました。
10  頭を上げよ! 胸を張れ!
 トルストイ家の直系である館長は、明快に論じておられます。
 ――トルストイたちのような精神の高みに立ってこそ、善を破壊しようとする者たちが、いかに取るに足らない、低俗な輩であるかがわかります。それは、エベレストを背景にした時に初めて、丘の低さがわかるようなものです――と。
 その通りだ。私には、よくわかります。
 わが創大も、人類の最高峰の、平和と文化と教育の大山脈に厳然と連なっている。また、永遠にそうあらねばならない。
 きょうは、大中国の名門・嘉応学院の程学長一行、デンマークを代表する大教育者であるヘニングセン先生ご夫妻、香港の言論界の雄である紫荊ジーケン雑誌社の劉社長ご夫妻一行もご臨席くださいました。
 かくも素晴らしき、世界の良識の先生方が祝福してくださる入学式が、どこにあるでしょうか。先生方に厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。
 新入生の皆さんは、頭を上げて、胸を張り、世界第一の誇り高き青春の大道を、きょうからまた、明るく希望に燃えて前進していってください! 頼むよ!〈会場かハイ!〉と元気な返事が〉
 それが、偉大な人生の道です。私も、その通りに進んできました。そして堂々と勝ちました。
 諸君も、立ち上がってほしい。一生、私と一緒に戦っていただきたい。いい人生を送ってほしいのです。他人の言に左右されるのは、あまりにも愚かだ。私は、無数にやきもちを焼かれてきました。しかし平気です。
 君たちも、後ろを振り返る必要はない。前へ前へ、勇敢に、きょうから一生涯、進んでいこう!
11  語学は人類を「同胞」にする
 若き君たちは、世界の名著も次から次へ読破していってほしい。くだらない、安っぽいものは読まないことだ。
 トルストイも、虚偽の悪書を“精神の毒”として厳しく退け、徹底して良書を読むように促しました。
 悪書を読むとバカになる。心が崩れてしまう。心に毒が入ってしまう。
 いい本を大事にしなければならない。私も、若き日から集めてきた数多くの本を、創価大学や、友好を結んだ機関に寄贈してきました。
 さらに、トルストイが大切にしたのは「語学」です。
 “人類を同胞として結ぶ学問”――これが語学である。少なくとも3カ国語以上に挑戦することを、彼は青年に訴えた。
 「人生とは、限界に挑み、わが境涯を拡大することである」――これもトルストイの素晴らしい指針です。いい言葉だ。
 限界に挑んだときに、境涯を拡大できる。苦難に負けてはいけない。
 私の部屋には、トルストイの全集が置いてあります。
 私たちは尊敬する先生方とともに、トルストイが夢に見たごとく、「戦争と平和」の歴史を超えて、全世界の民衆と民衆が固く握手し、そして世界の青年たちが喜び勇んで肩を組む、「平和と教育」の勝利の劇を永遠に残しゆくことを、固く決意し合いたいと思うのであります。
 人間が人間らしく、平和に、幸福に歩んでいくには、正しい法則を根底にした教育しかありません。
12  諸君と語り合うことが私の喜び
 正義の獅子トルストイは、飢饉で苦悩する民衆の救済に奔走した時も、生命の尊厳を護る言論戦を展開した時も、邪悪な嫉妬の中傷と迫害の連続であった。
 偉大な人は皆、妬まれるものです。しかしトルストイは微動だにしなかった。皆さんも、縁に紛動されてはなりません。
 そして100年前の1908年、トルストイの80歳の誕生日を、純朴な民衆が、熱血の青年が、そして世界の知性が最大の感謝と賞讃を込めて祝賀したのであります。
 今、トルストイと同じ年齢となり、創価のキャンパスに集った若き英知の皆さんと語り合うことができる。このことが、私はうれしい。
 「徹して、正義を貫け。正義は常に勝利する」――トルストイが、わが胸に刻んでいた言葉です。
 私もまた、100年の歳月を経て、この獅子吼を厳然と証明してきたと、深く確信している一人であります。
 トルストイのごとく難を受け、トルストイのごとく戦い抜いて、私は勝利しました。完勝しました。
 私には、もはや、まったく後悔はありません。君たちも、そういう人生を歩んでください。
 私には、戸田先生、牧口先生という偉大な師匠がおられた。ゆえに私は人生を立派に歩むことができた。私の若き弟子である諸君も、まず、勝利の青春を堂々と生き抜いていただきたい。
 さらに、偉大な歴史を残しゆく「幸福」と「平和」の人生を、そして後悔なき「勝利」の青春を、断じて勝ち取っていただきたい。
13  最後にトルストイの言葉を紹介したい。
 「悪はただ善のみによって亡ぼされ得るものであるという事は、人類の歴史の中に夥しい例証を持っている」(深見尚行訳『トルストイ全集』第18巻、岩波書店。現代表記に改めた)
 深い意味のある言葉です。
 また、ロシア語の有名な格言には「ウチェーニェ・スヴェート」とあります。「学は光なり」という意味です、どうか、徹底的に学ぶ青春を送ってほしい。
 私が青春時代に愛読したトルストイの本は、わが創価大学の図書館に寄贈させていただきました。岩波書店の『トルストイ全集』全22巻、中央公論社の『大トルストイ全集』全22巻などです。
 創大の「池田文庫」には、約7万冊の蔵書があります。さらに、貴重なロシア語版の『トルストイ全集』全90巻も、創大の図書館に保管されております。
14  先輩に続け!
 各界で活躍している数多くの卒業生も、新入学の後輩を祝福するため、駆けつけてくれた。本当にうれしい。ありがとう!
 きょうもロシア語の名通訳を務めてくれているのは、斎藤ベンツえく子さんをはじめ、創大出身の女性たちである。日本を代表する通訳として、高く評価されている。
 これまで、最難関の司法試験の合格者は158人。公認会計士は164人。税理士は122人。
 博士号の取得者は160人を超える。そして教員採用試験の合格者は、じつにのべ5,200人を数える。
 創価大学の理事長は、1期生の田代君。アメリカ創価大学の学長は、1期生の羽吹君。
 創大、女子短大の出身者が、大きく道を開いています。後輩の諸君も頼みます。
 どうかお元気で。お父さん、お母さんを泣かせることのないように。
 いい成績をとれば、親は喜んでくれるものだ。今、成績が下の人は、これから、上がりやすい。
 そして、ご両親に対して、言葉遣いをやさしくしてあげてください。
 互いにツンとしていては、つまらない。親というものは、子どものちょっとした心遣いがうれしい。
 小さい喜び――それが最大の幸福のもとだ。大きい喜びは、かえって消えてしまうものです。
 “小さい喜びが最大の喜び”なのです。
 この4年間、2年間、一緒に切磋琢磨し、大きい歴史を残し、大きい歴史を創っていこう!
 以上をもって、私の御礼と祝福のスピーチといたします。長時間、ありがとう!
 ご列席の先生方、本当にきょうはありがとうございました。心から御礼を申し上げます!

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